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建築学科サンジェイ・パリーク教授が、安積疎水の修復に向けて「自己治癒コンクリート」を活用した実証試験を進めています

バクテリアを用いたコンクリート自己治癒技術で地域に貢献

 建築学科 鉄筋コンクリート(RC)構造・材料研究室のサンジェイ・パリーク教授は、長年に亘りオランダのデルフト工科大学ヘンドリック・M・ヨンカース准教授が率いる研究チームと共同で、バクテリアを用いたコンクリートのひび割れ自己治癒技術の研究に取り組んできました。本年4月には、老朽化が進む安積疎水の水路の補修と長寿命化を目指して、この技術を水路の一部に導入した実証実験が始まりました。

 モニタリングを続けるパリーク教授に実証試験について詳しくお話を伺いました。

改めて「自己治癒コンクリート」の仕組みについて教えてください

 補修用のセメントモルタルの中にアルカリ耐性の強いバクテリアと餌となる乳酸カルシウムを混ぜ込みます。その時点では休眠しているバクテリアが、ひび割れによって酸素と水が入り込むことで活性化し、乳酸カルシウムを分解します。その結果、生成された炭酸カルシウムによってひび割れが修復される仕組みになっています。修復後、酸素と水が入らなくなると、バクテリアは再び休眠します。200年以上の寿命とも言われるバクテリアによって、半永久的にひび割れの自己治癒が続いていくというわけです。





パリーク教授はいつ頃からこの研究に着手されているのですか

 2012年に本学の海外派遣研究員制度によりオランダのデルフト工科大学で客員教授を務めた際に、この自己治癒手法を考案したヨンカース准教授(写真右)と共に約1年半研究したのが始まりです。彼との繋がりは今も続いていて、私の研究室の学生に助言や研究指導をしてくれています。忙しい中でも時間を作って郡山を訪れ、安積疎水補修の現場見学にも同行してくれました。

安積疎水での実証試験はどのように進められたのですか

 デルフト工科大学で自己治癒コンクリートの安全性を保障してもらい、水路を管理する安積疎水土地改良区(理事長:國分周司氏)から実証試験の了承を頂きました。試験は須賀川市にある水路の2か所でスタートしています。現場施工については、郡山市の株式会社尚楠がボランティアとして全面的に協力してくれました。工学部土木工学科の卒業生である遠藤正泰社長には大変感謝しています。

安積疎水土地改良区事務所にて
(左からパリーク教授、ヨンカース准教授、國分理事長、バート・ファンデル氏(バジリスク社CEO)、遠藤社長)

 施工については、まず約6メートルにわたってひび割れた水路の底面と側面を削って、藻やカビの付着した箇所と摩耗で表面が劣化している部分を清掃した後、接着性を改善させる特殊な溶液(ポリマー)で下地処理をしました。その上に、我々が練混ぜたバクテリア配合セメントモルタルを厚さ20~30ミリ程度塗布し、自己治癒できる層をつくりました。ひび割れなどの通常の劣化は表面から起こるため、この手法で効果を発揮します。現地での定期的なモニタリングと並行して、現地で作製した同じ材料の試験体で強度やひび割れ自己治療性能を評価する試験を継続しています。

施工場所

ひび割れ

清掃

プライマー塗布

打込み

養生後

実証試験は今後どのように展開されていくのですか

 安積疎水は老朽化が進み、水路の一部ではひび割れからの漏水で取水量の減少や、地盤が緩くなることが懸念されています。今回の実証試験によって自己治癒コンクリート技術の有効性が評価されたら、土地改良区の方々と協議の上でさらに施工対象箇所を広げていき、社会実装への足掛かりにしたいと考えています。実証試験で有効性が確認され、この技術が一般化していけば、この安積疎水をはじめ各種構造物に使われているコンクリートの長寿命化・メンテナンスフリー化、維持管理コストの削減に貢献できるものとなるでしょう。

 また別の視点となりますが、この安積疎水開削に尽力したファン・ドールン氏はオランダの技術者です。オランダとの共同研究によってオランダ技術者が完成に導いた安積疎水という偉業の保存に貢献することで、35 周年を迎える姉妹都市、ブルメン市(オランダ王国)と郡山市(日本)のさらなる友好関係を築く機会となることを期待しています。

ありがとうございました。更なる研究活動の推進を祈念しています

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