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『ロハスのドローンプロジェクト【橋梁点検チーム】』が3D橋梁構造アーカイブに基づく双方向点検システムデモンストレーションを開催しました

スマートフォンなど既存の機器を使って簡便にできる橋梁点検システム
福島県内の橋梁点検事業者に向けた開発研究の成果を公開

 令和4年11月28日(月)、ロハス工学センタープロジェクトの一つである『ロハスのドローンプロジェクト【橋梁点検チーム】』が、福島県内の企業や行政に向けた研究紹介&デモンストレーションを実施しました。平成26年6月より、15m以上の国内全ての道路橋は5年に1度の頻度で専門点検技術者による近接目視点検が義務づけられていますが、福島県内の道路橋は県管理でも約4,500橋、市町村橋梁にいたっては約12,000橋を有しており、この点検の合理化や省力化のため新技術の開発と導入が求められています。本プロジェクトでは、ドローンを活用した橋梁の双方向遠隔点検が可能な3Dアーカイブシステムに関する研究開発事業(産学連携ロボット研究開発支援事業費補助金)を推進し、ドローンを活用した鋼材腐食やコンクリートの表面変状の自動検出といった技術の確立と橋梁技術者が現場に赴かずとも遠隔で点検指示ができ、かつ点検箇所を三次元画像に自動保管できるシステムを開発しています。

 当日は、自治体や建設会社の関係者80人余りが参加。日本大学工学部50周年記念館(ハットNE)3階 AV講義室を会場に、プロジェクトの全体概要説明、双方向遠隔橋梁点検システムの概要説明、遠隔点検システムのデモ(阿久津橋と日大間で通信)を実施。さらに、キャンパス内にあるロハスの橋を使って、実際のドローンによる双方向点検の状況確認の様子を見学していただきました。

 まず、プロジェクトリーダーの子田康弘教授(土木工学科)が開催プログラムの説明を兼ねてご挨拶しました。続いて、研究リーダーの中村和樹准教授(情報工学科)がプロジェクト全体の研究概要等について説明しました。第1期は近接目視点検の観点から、AI画像を駆使して橋梁の劣化状況を「視る」ことに重点に置いて、産学官で研究開発を進めていきました。第2期に入った現在は「測る」ことを目的に、安全かつ効率的に精緻な画像と点群データとを取得し、最先端のAI技術を応用しながら、橋梁点検専門技術者の診断に有用な情報を提供できるシステムの構築を目指します。中村准教授はプロジェクトの独自性について、福島県内の橋梁点検事業者に向けた開発研究である点を強調しました。3D橋梁構造アーカイブに基づく双方向点検システムの研究、高度センシング技術による橋梁変状を検出する研究、提案システムの妥当性およびシステムの実証と評価を行う3つのワーキンググループの研究概要についても説明しました。それぞれ専門業者と共同で進めている点も本プロジェクトの特徴です。さらに、情報工学科の溝口知広准教授が実際に遠隔点検を行った動画を用いて、ドローン映像の双方向通信による遠隔点検システムについて説明。点検の効率化と省人化、高品質な点検、点検結果の3D登録と検索によって経年変化を把握できるなどのメリットを示しました。

 そして、いよいよ点検デモ対象の阿久津橋と模擬事務所である日本大学工学部ハットNEの会場をつないで遠隔点検のデモンストレーションを実施。橋梁側のドローンパイロットに対し、事務所側の専門点検技術者は音声や画面を使って点検場所を指示します。パイロットはドローンを当該場所に飛行させ、より詳細を確認したい箇所はアップにして画像を撮影。点検技術者はリアルタイムで送られた映像から劣化状況を確認することができます。

 さらに、3D橋梁構造アーカイブシステムによってレーザスキャナ等で取得した三次元立体図面へ劣化・損傷画像などの点検結果を記録する仕組みになっています。

 デモンストレーション終了後の質疑応答では、システムに関する具体的な質問が多々ありました。劣化状況の判定等についての質問に子田教授は、機械学習で劣化状況を仕分けした上で、細かい判定に関しては人的作業が必要だとし、本システムではひび割れのパターンを視ることを重要視していると言及。中村准教授も、プロジェクトの目的は技術者を支援することだと強調しました。また、実際にシステムを使ってどのように作業すればよいのかという質問に対しては、ドローンによる橋梁点検マニュアルやドローン飛行マニュアルを用意し、ドローンパイロットや点検技術者が作業行程を把握できるようにしていくと説明しました。また、会場の建設コンサルタントの方からは「ドローンによって劣化しやすい場所、劣化している場所を把握し、そこに点検技術者の目を集中できることは、人的にも経済的にもインフラの維持管理に大変有効的なサポートになる」との意見もあり、本システムに対する期待の高さがうかがえました。

 その後、ロハスの橋を使ったデモンストレーションをスクリーンを通して見ていただき、携帯電話で簡単にやりとりできることを示しました。実際にドローンを操作して点検している様子も間近で見学していただきました。

 参加者は「点検する側として、非常に面白い内容だ」と話し、中でも3Dでアーカイブ化する点に興味を持たれているようでした。その点について中村准教授は、「ミリメータのオーダーで計測できるレーザスキャナは、写真から3次元化するよりも計測精度が高く、橋梁を完全な形でデジタル化できる。アーカイブで時間的な変化を確認することで橋梁の維持管理も可能になる」と示唆しています。デモンストレーションの反響を受けて子田教授は、「初めて建設業者の方に見ていただきましたが、安価な携帯電話網で誰でも気軽に使えるこのシステムを県内の企業に提供していきたいと考えて開発を進めています。“学”が中心となって開発に取り組んでいることに価値がある。福島モデルとして構築し、さらには事業化して福島県内への普及を目指していきたい」と意欲を高めていました。作業の効率化・省力化につながるこのシステムへの関心も益々高まっています。

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