メガフロートの可能性と課題解決を導き出した
卒業設計作品が高く評価される
『JIA東北学生卒業設計コンクール2019(公益社団法人日本建築家協会東北支部主催)』の公開審査会が3月29日(金)にせんだいメディアテークで行われ、建築学科4年(浦部研究室)の兵頭秀子さん(写真右)の作品『地図にない建築―内海を漂う方舟―』が優秀賞に輝きました。公開審査会では、応募9作品によるプレゼンテーションが行われ、審査委員長を務める東北支部長の鈴木弘二氏(写真左)をはじめ、JIA東北の各地域会長ら7人の審査員による投票の結果、最優秀賞1点・優秀賞2点が選出されました。東北支部の代表として、6月に行われる『JIA全国学生卒業設計コンクール2019』にも出展されることになり、本学部から6年連続全国大会への出展という快挙を成し遂げました。
兵頭さんの受賞の喜びの声とともに、作品について紹介します。
『地図にない建築―内海を漂う方舟―』
兵頭秀子さん(建築学科4年)
戦後、牡蠣の養殖など瀬戸内海の生業に支えられて、再興を遂げた広島県竹原市。しかし現在、工業化に押され高齢化により第一次産業は廃れ、AIや自動運転などの発達により、これまでとは異なる暮らし方が求められています。無機質な政策とインフラに侵食されつつある瀬戸内海。この作品は、そんな瀬戸内海に面した竹原の100年後を見据えながら、メガフロート(巨大人工浮島)の上に公共建築を建てることにより、複数の自治体が一つの公共建築を所有する街の在り方を提案したものです。設計手法としては、福島第一原発廃炉作業や空港などで使われているメガフロートを利用し、その外側に竹原の周りの島々のコンテクストを取り込んで建築を構成しています。メガフロートを3分割にし、環状に通した道も3分割にすることで、観光客の動線だけでなく、牡蠣の養殖に関わる漁師の人たちの動線が交わったり離されたりします。牡蠣の養殖時期と観光時期によって変容する新しい動線の組み合わせにより、建築の表裏がなく、空間の自在性を考えたところも設計手法の特徴と言えます。
また、防災観光計画、災害復興計画、空き家対策という3つの都市計画も提案しています。防災観光計画では、塩や酒造で栄えた歴史的な街並みを持つ竹原のランドスケープと海への動線を併せて考えることで、人々が海に向かう自然な意識付けを行います。それにより、災害時には高台だけでなく、海に逃げるよう導くのが狙いです。公共建築である牡蠣ごみ処理場の煙突が視覚的なアイコンとなり非難を手助けします。牡蠣加工場の炊事機能を利用して、災害時には炊き出し所として転用できるようにした災害復興計画、空き家の廃材を利用して、島の町屋建築に再利用する空き家対策。さらにメガフロートは、養殖ごみの海洋流出を防ぐために共有公共のごみ処理場とする暮らしの器、また災害時には陸上交通の代替として物資や電力等の運搬に利用する存続の器、そして100年後には島の生業を体現したアーカイブ島として観光客を呼び込む観光の器としての機能を持たせています。このように、瀬戸内が抱える様々な課題を解決しながら、百年先まで計画された壮大なスケールの提案となっています。
兵頭さんの喜びの声
たくさんの作品に出会えた4年間は
かけがえのない時間であり、誇りに思います
これまで5年連続で先輩方が全国大会への出展を果たしていたので、とてもプレッシャーを感じていました。選ばれて大変嬉しく思うと同時に安堵しています。ご指導いただいた浦部智義先生や模型の制作を手伝ってくれた後輩たちに感謝しています。学内の審査と違い、他大学の学生と競い合うコンクールでしたので大変刺激を受けました。また、審査員の方々から厳しい質問やご意見をいただき、いろいろ勉強になりました。このコンクールに出展できたことや、たくさんの作品に出会えた大学4年間はかけがえのない時間であり、誇りに思います。卒業後は、様々な建物の内装設計を手掛ける会社に就職するので、ホテルやオフィスなど大規模な施設の内装設計を手掛けられるように頑張ります。夢は、地元(愛媛県)に貢献すること。培った経験を活かして地元に還元していきたいです。
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