「ロハス工学」に通じる豊かなイメージと
美しい表現力が高く評価される
第8回E&G Design 学生デザイン大賞(主催:東海エクステリアフェア実行委員会)において、小野菜津実さん(2019年3月建築学科卒業、参加当時4年)の作品「星峠-棚と小屋がつくる未来-」が、公共・都市空間のエクステリア部門で優秀賞を受賞しました。
「人と環境のつながり-幸せ感あるエクステリア-」と題して、住まい方や利用の仕方、身体面・心理面、省エネ・環境性等の要素を取り入れた空間デザインを提案するもので、募集された3部門(住空間のエクステリア部門、商業空間のエクステリア部門、公共・都市空間のエクステリア部門)の中で、最も参加作品数の多い公共・都市空間のエクステリア部門で最上位となる優秀賞を受賞しました。
卒業設計で取り組んだ作品をアレンジして出展したもので、工学部の研究・教育のコンセプトである「ロハス工学」にも通じる内容で興味深く、お話をうかがいました。
―この度は受賞おめでとうございます。
卒業設計で色々と考えた構想やその表現が、また違った場所・審査によって改めて評価されたことは大変嬉しく思います。
環境や人の暮らしに対して、地に足をつけながらも従来の枠にとらわれない、といった試行錯誤を周囲に相談しながら繰り返しスタディーしたことが、昨日のことのように思い出されます。特に、卒業設計時に、親身になってご指導頂いた指導教員の浦部智義先生はじめ、色々とアドバイスをもらった研究室の友人やお手伝い頂いた後輩にも感謝の気持ちで一杯です。
―作品の内容や特徴について、具体的にお聞かせください。
私の出身地である新潟県の山間地域にある、ありふれた、けれども美しく誇れる風景でもある「棚田」。そのランドスケープも含めた地形を段階的に維持する計画、手法を考案しました。そこに至る背景としては、現地を調査する段階で「棚田」を取り巻く実情を見聞して、地域を訪れる観光客が感動する風景を維持するのは容易ではなく、今の生業と一体となった美しい環境を保つには、適度にかつ多様な仕掛けをする必要があると考えたからです。
建築やランドスケープとしては、農業従事者のための小屋の構法・佇まい・機能を軸に現在から未来にかけて必要となる施設を地形に馴染ませながらフレキシブルに計画し、中でも、農業のあり方の変化を視野に入れて、稲作に代わる生業として水産養殖と水栽培を組み合わせた循環型有機農業「アクアポニックス」を、小屋的な建築やレベル差のある地形と一体化させて提案しました。
―小野さんの中で、この作品はどんな位置づけになるのでしょうか。
私の大学での学修を振り返って見ますと、大学入学時から様々な課題において、手書きやスケッチにこだわりを持って取り組んでいたように思います。そのこだわりを引き出して頂いた先生方のお陰で、少しずつ自信を深め成長できたと思います。その集大成として、この作品のパネルで、その表現を出し切ってみようと意識したところはありました。
一方で、この作品(卒業設計)までの私の作品は、表現に頼るあまりコンテンツが十分に練りこまれていなかった面もあったと思いますが、この作品では、棚田・ランドスケープ・小屋的建築(構法)や生業(農業)・交流人口・用途転用など、その地域において現在から将来にわたり重要と考えるキーワードを整理し関連づけて盛り込めたように思います。
そのあたりの建築も含めたコンテンツと表現が重なり、世界観が上手く表現できたと思いますし、結果的に、工学部の研究・教育の柱である「ロハス工学」にも近い作品となり、自分の中にもそのような意識が醸成されているのかな、と感慨深いものもありました。
―今後について抱負をお聞かせください
この4月から、コクヨ株式会社で空間デザインを担当する部署に所属し仕事をしています。この職場にしても今回の受賞にしても、工学部建築学科で過ごした4年間があり、たどり着けたと思っています。社会人と大学生では、求められることも違ってくると思いますが、工学部で培った知識と経験を活かし、また工学部での出会いも含めご縁のある周りの方々に今後も育ててもらいながら、社会でも頑張っていこうと思います。
―ありがとうございました。今後益々ご活躍されますことを祈念しています。
▼第8回E&G Design 学生デザイン大賞はこちら
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