分子の多様性から見る銀河進化-超巨大ブラックホールが抑制する新たな星の誕生
元日本大学工学部客員研究員の斉藤俊貴氏(研究・論文執筆時は総合教育 高野秀路教授の物理学研究室に所属。現在、国立天文台)と名古屋大学の中島拓氏を中心とする国際研究チームは、チリのアタカマ砂漠にあるアルマ望遠鏡によって、くじら座方向にある活動的な銀河NGC 1068 (M77)を観測しました。
その結果、多数の分子の電波を検出し、この銀河での分布を明らかにしました。この結果は、銀河での分子の生成や消滅反応を理解する上での、重要な分子輝線カタログとなりました。
また、各分子がどのような物理状態を反映しているかを、機械学習を利用して解析した結果、中心にある超巨大ブラックホールから双極に噴き出すジェットによると思われる分子ガスの噴き出しを発見しました。ガスの一部は銀河の円盤に衝突しており、そこでガスが加熱され、破壊されていることがわかりました。星が誕生するときの原料は分子ガスであるため、このような場所では新たな星の誕生が抑制されている可能性があります。これは銀河の進化に大きな影響を与えます。
このように、天文学、物理学、化学の広い範囲にわたる学際的な成果が上がりました。また、この研究を可能としたアルマ望遠鏡には、高精度パラボラアンテナ、低雑音受信機、高速データ通信、望遠鏡の駆動やデータ処理のためのソフトウェアなど、最先端の工学が使われています。
詳細は、下記のホームページをご覧ください。
■今回の研究成果について
https://alma-telescope.jp/news/ngc1068-202309
■アルマ望遠鏡について
https://alma-telescope.jp/about