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建築学科の浦部智義教授と同研究室が、葛尾村で2年ぶり3回目の「能と狂言」の舞台・客席の計画と設置を行いました

村制100周年記念イベントで、屋内での舞台計画と設置、小道具制作にも貢献

葛尾中学校体育館に設置した舞台での能「羽衣」の様子(中央が日大工学部で制作した小道具「松の立木台」)
撮影:早川真介(日本大学工学部客員研究員)

 この度、建築学科の浦部智義教授と同研究室が、村制100周年記念イベントとして2023年6月11日に葛尾中学校で行われた「能と狂言」の舞台・客席の計画と舞台設置を行いました。2019年と2021年は、江戸時代に能を楽しんだ場所で村の名所でもある葛尾大尽屋敷跡公園で秋に行い、その際にも浦部教授と同研究室は、舞台・客席の計画と設置を行っていますが、今年は、場所と時期を変えて実施されました。今回は、村制100周年記念としての開催で、より一層多い来賓や6月という梅雨時の実施、また新型コロナウイルス感染拡大の影響も落ち着きを見せはじめたことから、前2回とは異なり屋内での実施となりました。

図面と模型で能楽師の先生や村役場の方へ
説明する浦部教授

 本番の数ヶ月前から会場となる葛尾中学校で、能楽師の先生や村役場の関係者があつまり、研究室で制作した模型や図面を元に、現場で意見交換を行い、舞台・客席の計画を原寸大でも確認しながら詰めていきました。

 浦部教授の研究室では、ジャンルは異なりますが、長年に亘り数多くの地域の「地歌舞伎」について、その成り立ちや現在の運営・管理、また、上演時の場所・空間性などについて幅広く調査研究を継続しており、今回の体育館での舞台・客席の計画と設置には、それらの研究が活かされたといいます。

研究室で長年調査している地歌舞伎の会場の一例

今回の葛尾村中学校体育館での狂言の時の会場の様子

 元々、野外で行われていた地歌舞伎は、現在も野外で行われている地域も数多くありますが、公民館や体育館など屋内で上演される地域もあり、それぞれに工夫しながら場づくりを行っています。地域ごとに公演時の場づくりも多様で、それらも詳細に分析していたので、今回の「能・狂言」では、演出性や合理性などに鑑み、それらの良い部分を、舞台・客席空間の計画に活かそうと考えたそうです。

舞台の設置をしている研究室学生達の様子

舞台設置の記念撮影(後列右が同研究室の高木義典研究員)
撮影:早川真介(日本大学工学部客員研究員)

 この活動は、『大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業(福島イノベーション・コースト構想促進事業)』の一環でもあります。その活動を支えている、同研究室の高木義典研究員は、「工学部が取り組んでいる『産学官民の連携による「ロハスコミュニティ」の構築と実装』の大きなメニューの1つである「交流の場づくり」の実績としても、広く認識してもらったことに意味があると思います。舞台を一緒につくってくれた学生達はもとより、役場や関係者の方々も含めて、真の復興を目指す被災地での人材育成に役立っているとすれば、なお良いですね」と話します。

 また、2年前には、高木研究員と学生達で本番に使用する小道具である「葛桶(かづらおけ)」を制作し、能楽師の方々から好評を得ました。今回は、能の演目「羽衣」の中で、天女が衣を松の木に掛けるための道具で、「松の立木台」と呼ばれる、演技にも大きく関わるより重要な小道具の制作を依頼されました。この小道具を竹で制作しようということになり、竹という加工が難しい材料を扱うことになることから、竹の加工経験をお持ちの機械工学科の杉浦隆次教授とその研究室に、全面的に協力をお願いすることになりました。

竹加工を実演する杉浦教授とサポートする杉浦研の学生

小道具の最終的な組み立てを行っている浦部研の学生

 竹の加工の実践をした杉浦教授は、「実際に大勢の観客の前で、プロの方が使用される道具なので、依頼された時は戸惑いもありましたが、材料の加工は機械工学科の醍醐味でもあり、その役割を示せる良い機会だと思って取り組みました」と語り、完成し能楽師の方に喜んでもらった際には、杉浦研究室・浦部研究室の学生ともども充実感を味わえたと言います。

 浦部教授は、「葛尾村では2年ぶり3回目の能・狂言の開催となりました。村の関係者はもちろん多くの方々の尽力無くしては実現できないですし、簡単なことではないと毎回感じますが、こういったことが特別な催事ではなく、出来れば地域の行事として定着し恒例化すれば、文化により厚みが出て良いなと思います」とコメントしています。

記念イベントの新聞掲載は↓

「能と狂言…幽玄の舞 葛尾村100周年記念、舞台幕に村民ら手形」(福島民友新聞)

「能・狂言で住民の交流維持 葛尾村が村制100年記念式典」(朝日新聞)

2021年11月の記事は↓

「建築学科 浦部智義教授の研究室が葛尾村での能舞台の計画・設置と運営に貢献」(工学部HP)