最新情報

建築学科卒業生 本間しおりさんが日本インテリア学会「第31回卒業設計作品展」で優秀作品賞を受賞しました

卒業設計をブラッシュアップ、地域と学校をテーマにした空間提案が高く評価される

 日本インテリア学会「第31回卒業作品展」において、2023年度建築学科卒業の本間しおりさん(建築計画研究室/指導教員:浦部智義教授)の作品『ここ路 ー 際で交わる大小の足跡 -』が優秀作品賞を受賞しました。この作品は、多様化する社会における地域と学校との新しい関係性や学校が抱える課題に着目し、建築の計画・設計での問題解決を目指したものです。学部4年の卒業設計として取り組み、学内の卒業設計展では最高賞である桜建賞にも選ばれていました。さらに「卒業設計作品展卒業設計優秀作品学外展示会」でもJIA福島地域会賞を受賞するなど、学内外で高く評価を受けた作品です。今回は大学36校をはじめとした全国47の教育機関の代表が参加する中、見事優秀作品賞を受賞しました。
 現在は大和ハウス工業株式会社に勤務する本間さんから、受賞の喜びの声とともに、作品について詳しくお話を伺いました。

―優秀作品賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 はい、もう本当に心から「嬉しい」の一言です。この卒業設計を始めるにあたって、一番目指していたのが日本インテリア学会の作品展に出展して賞を取るということだったんです。これまでに見てきた先輩方の作品の中で、インテリア学会で受賞された作品にとても惹かれていて、そういう作品を創りたい、私もここに出展したいと思って始めました。常に口に出していたので、そんな私の思いを耳にした浦部先生からさらにアドバイスをいただけたこともあって、目標に手が届いたのだと思います。卒業設計時はもちろん、今回の出展にあたってもエスキスでご指導くださった浦部先生には大変感謝しています。また、何カ月もの間、卒業設計の模型製作を手助けしてくれた後輩たち、助言してくれた研究室の仲間、本当に皆さんのお力添え無しにこの受賞はありませんでした。この作品に関わってくださった皆さんに心からの感謝をお伝えしたいです。

―作品について、詳しく説明いただけますか。

 近年、教育現場では不登校児童の増加、地域内でのつながりの希薄化が課題となっています。この設計では、学校内や地域内での人同士のつながり、そして学校と地域の新しい関係の構築を目指しました。 モデルの郡山市立行健小学校(こうけんしょうがっこう)は私の母校でもあります。ここでも不登校児童や学童を利用している児童の増加、児童数の減少で生じた余裕教室、地域との関係の希薄化など、さまざまな課題を抱えています。

 設計のポイントとして、校舎の1/3を新築し通学路である歩道橋とつなげ、その先にフリースクールや図書室、学習室を設け、正門を通らずとも校舎に入れる導線としました。1階は誰でも利用できるガラス張りのカフェと学習塾が入り、校庭で遊ぶ子どもたちをカフェから見ることができ、子どもたちも誰かに見守られている安心感を得られる仕掛けとしました。

 現在、国道に面し学校と地域を分断する高いフェンスが設置されていますが、あえて外すことで学校を中心とした生活や地域への解放などの達成を試みました。学校に大勢の人々が集い、自分の居場所を見つける場所になってほしい。この設計ではそんな願いを込めました。私自身が小学生だった頃を思い返して、こうだったらいいな、こんな小学校なら違う自分に成長できるんじゃないかなと考えながら進めたものです。

―今回の出展にあたって変えた部分はあるのですか。

 基本的なテーマ、作品の軸は全く変えていません。変えたのは表現方法、と言えば良いでしょうか。卒業設計時には作成が叶わなかった5枚のボードを新たに作成し、この設計を取り入れる前と後、その違いが明確に伝わるようにまとめました。このボードで設計のプロセスを完結させられたと思います。卒業設計時にも思考のベースにあったものを、今回はイラストを使うことによって表現することができました。一番提案したかった、「際(キワ)」に立った時に分断させるように見えているものが逆に緩衝材のようになり、キワに既存のものを生かすことで人を入れ込んでいくような感覚をもたらすことが伝わりやすくなったのではないかと思っています。これも浦部先生からのアドバイスの一つです。大きくブラッシュアップできました。

―どのような点が評価されたのでしょうか。

 主催が日本インテリア学会ということで、作品の「インテリアという概念を内外両空間で提案した点」に注目して頂けたのかもしれません。主催者側からの詳しい講評はいただけていないのですが、浦部先生からは「近代以降の施設建築がまとって来た「らしさ」をどう拭い去るかを大きなテーマとし、教室や学校を開くor閉じるといった議論や経緯も踏まえて、更にもう一歩踏み込んだ空間を提案している。線状の空間のインテリアがまちに表出する景観を含め、内外の空間デザイン操作の秀逸さが感じられる」と評価していただきました。
 また、浦部先生のアドバイスをもとに手書きのイラストや図面を多く取り入れたことによって、人の動きや細かいスケールを追究しつつ設計したことも汲み取っていただけたのではないでしょうか。

―現在の仕事と将来への展望をお聞かせください。

 現在は集合住宅の設計部門に配属され、確認申請の作業や敷地調査をはじめとした「建築をつくるため」の事務作業が中心です。図面の手直しなどもありますが、自分で設計するにはまだまだ勉強が必要だと感じています。構造や設備のこと、細かい配線のことの大切さがわかってきました。資格取得に向けた勉強も続けているので、法令関係の知識も身についてきたと思います。こういった基礎をしっかり身につけて、次のステップに進んでいきたいです。
 それぞれの人に合った空間づくりを目指し、人に寄り添った小さなスケールの設計から、大きな建築の設計もできるように頑張りたいなと思っています。将来、人に愛され、使われ続ける魅力的な建築をつくることが目標です。

―後輩へのメッセージをお願いします。

 自分のやりたいことでも目指すものでも良いので、とにかく一つ軸を決めてみてください。そこに向かって、声に出して、周りからたくさんアドバイスをもらって進んでいくと、きっと良い結果に繋がると思います。残りの大学生活を悔いのないように、有意義な時間を過ごして下さい。

―ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしています。

2024年度日本インテリア学会 第31回 卒業作品展はこちらから

本間さんの作品はこちらから