コンクリート材料の新たな可能性を見いだす研究に挑戦した学生たちが高く評価される
この度、建築学科の鉄筋コンクリート(RC)構造・材料研究室(指導教員:サンジェイ パリーク教授)の河合 奎亮さん(建築学専攻博士前期課程2年)、小林 舞子さん(建築学科4年)、佐藤 賢明さん(建築学科4年)の3名が、一般社団法人日本建築材料協会優秀学生賞を受賞しました。この賞は、建築材料を主として勉学する大学院生、大学生および専門学生等に対し、建築材料の調査研究、新たな開発および発展に寄与した学生を高く評価し、優秀な人材の育成の応援を目的に創設されたものです。本年度は、修士論文19件、卒業論文25件、卒業制作(作品)2件が選ばれました。3人の喜びの声と後輩の皆さんへのメッセージをお届けします。
【大学院・大学部門 修士論文】
河合 奎亮さん(建築学専攻博士前期課程2年)
『脱炭素社会に向けた二酸化炭素固定化コンクリートの開発を目指した実験的研究』
地球温暖化の原因とされるCO2を資源としてとらえ、分離回収して有効活用する技術が注目を集めています。私は学部4年の時から、普通コンクリートにCO2を固定化する方法やその評価方法を確立することを目的に研究を進めてきました。本研究では、高圧注入試験装置を用いて硬化コンクリート試験体に高濃度のCO2を圧力で注入した際の炭酸化の深さや質量について調べました。通常、コンクリートが固まっているときに炭酸化する研究が多い中で、この研究では固まった後にどうやって効率よく最大限に吸収させることができるかを焦点にしています。企業との共同研究であり、精度の高い実験データを求められるため苦慮しながらも、実用化に近い研究に関われたことは貴重な経験でした。建築学科卒業時にもこの賞をいただきましたが、3年間の集大成として有終の美を飾ることができて良かったです。
大学院で建築に関する、特に建築材料の専門知識が身についたので、それを今後に活かしていきたいと思っています。将来は、野球場などのランドマークとなる建築物に携わりたいと思い、大林組に就職しました。私は大学院に進学し在学中に二級建築士の資格を取得しましたが、2年間学ぶことでより成長できたと思っています。学生のうちにしっかり勉強して知識や技術を修得することが大事です。さらに大学院に行くことで、就職の選択肢も広がり採用にも有利に働くので、専門性を要する職を希望する人や何になろうか迷っている人には大学院進学をお勧めします。
【大学院・大学部門 卒業論文】
小林 舞子さん(建築学科4年)
『超弾性合金の耐腐食性に関する研究』
負荷をかけると壊れやすい鉄筋に対して、超弾性合金は負荷を取り除くことで元の形状に戻る性質を持っています。そこで耐久性が求められるRC構造物の鉄筋の代わりに超弾性合金を利用できないかと考えて、この研究に取り組みました。まずは耐久性の面から耐腐食性について研究しました。普通の鉄と数種類の超弾性合金を設定した濃度の海水に一定期間浸して、どのくらい錆びるか検証した結果、超弾性合金は普通の鉄よりも耐腐食性があることがわかりました。長期的な実験で苦労もありましたが、可能性を秘めた未知の研究に携われることは魅力的でした。推測した通りの結果が得られる時と全く予想と違う結果になる時があり、なぜこうなったのかを考察するのが楽しかったです。成果も出て、論文も評価されたので、大変嬉しく思います。充実した実験設備を使い、企業と連携して社会実装につながる研究ができたことが受賞に結び付いた要因だと思います。
もともと住宅に興味があり、建築材料について研究したいと思い工学部に進学。設計の授業では外部講師の先生方から様々な考え方を学ぶことができ、多くの仲間からも新たな発見や刺激を受け、充実した4年間でした。将来は、就職したトヨタウッドユーホームで、自分の家を建てることが夢です。コロナ禍は住宅の快適さや豊かさに目を向けるきっかけになりました。これからはより充実した住まいをつくるためにいろいろなアイデアが求められると思います。少しでも建築をやってみたい気持ちがあれば、自分には無理だと思わず、皆さんも是非挑戦してみてほしいと思います。
佐藤 賢明さん(建築学科4年)
『コンクリート電池の性能向上を目指した作製方法、添加剤及び充放電条件に関する基礎的研究』
本研究室では、コンクリート電池の開発に取り組んでいます。将来的にはビルなどの大規模な構造物に蓄電器の機能を持たせるために、コンクリートに電気を蓄え放電を行う電池性能の向上を目指しています。本研究では、電気を通しやすい添加物の種類や適正な添加量について検討しました。基礎研究は地味なイメージがありますが、誰もやったことのない新しい挑戦にやりがいを感じました。実験方法も先生とミーティングしながら自分で考えて組み立てていくのが面白くて、思った結果が得られた時は達成感もありました。予測のつかない研究だから、やればやるほど新たな発見がありワクワクします。実用化までには課題がたくさんありますが、性能を向上させるという点では成果を出すことができました。優秀学生賞を受賞できたのは、将来性も含めた研究の独創性が評価されたのではないかと思います。大変だった分、最後に栄えある賞をいただき、とても嬉しいです。
高校から建築を学びましたが、大学では複雑な構造計算やより深い専門知識を身につけることができました。特に建築材料に興味を持った中で、構造物と電池を組み合わせがユニークで面白そうだと思ったこの研究に取り組めたのは自分にとっても大変有意義でした。
卒業後は大成建設に就職し施工管理の仕事に就きます。夢は水族館をつくること。人々を楽しませることができる建築を手掛けたいと思っています。私たちの時代はコロナ禍で青春を謳歌することができませんでしたが、後輩たちには勉強だけでなく遊びも充実させて、悔いのない大学生活にしてほしいと思います。
★一般社団法人 日本建築材料協会 優秀学生賞はこちらから
★RC構造・材料研究室HPはhttp://mtu-bbl.jp/