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機械工学専攻2年の五葉風雅さんが日本機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞しました

交通事故の被害を最小限に抑えるための研究が
高く評価される

 この度、機械工学専攻博士前期課程2年の五葉風雅さん(バイオメカニクス研究室/指導教員:西本哲也教授)が、一般社団法人日本機械学会東北支部第58期総会・講演会(2023年3月17日)で発表した『交通事故乗員の内臓損傷を対象とした力学特性の取得』が、若手優秀講演フェロー賞を受賞しました。この賞は、若者に自信と誇りを与え、本会が若手の専門家育成を支援し、もって科学技術創造立国のための人材育成に貢献することを目的としています。2021年9月から2023年3月までに本会支部・部門講演会における発表に対して推薦された受賞者のなかから、内容が有益で新規性があり、また発表の場での態度に優れ、若手研究者として将来の発展が大いに期待されるものに贈られました。

 五葉さんの喜びの声と研究について詳しくお話を聞きました。

-若手優秀講演フェロー賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 素直に嬉しいです。学会で賞をいただくのは2回目ですが、送られてきた盾を見て、賞の重みを実感しました。受賞できたのは自分だけの力ではなく、研究環境を整えてくださった西本先生や連携している病院関係者の方々のおかげだと思っており、深く感謝しております。自分が伝えたかった優れた研究内容、社会的優位性が、発表を聞いてくださった方々にもしっかり伝えることができていたとしたら、大変良かったと思います。

-研究について詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では、より安全な自動車づくりを支援するために、交通事故による被害を最小限にとどめるための研究を行っています。自動車の交通事故によって小腸などの内臓器が損傷する場合、表面上ではわかりづらいため初期判断が困難で、時間が経ってから多量の出血によりショック状態に陥いり死に至るケースが多くあります。実は内臓損傷による死亡リスクは頭部に比べて約2倍近くになっているのです。損傷のメカニズムを知るためにダミー人形を用いて実験が行われていますが、実際の内蔵器の損傷は複雑であり、傷害の再現が難しいことが課題となっています。

 そこで私たちの研究室では、部位別での力学特性を取得するために、病院内で実際の臓器を用いて引張荷重を与え、どれくらいの力で伸びたり破壊したりするのか検証を行っています。本研究では、特に損傷の確率の高い脾臓に着目しました。傷害発生メカニズム特定のための脾臓に対する材料特性のさらなる評価のために、ヒト脾臓を用いて実臓部・被膜部・被膜付き実臓に分類して引張試験を行いました。その結果、実臓部、被膜部で力学特性が異なり、被膜部の強度が高い結果となり、応力最大時のひずみでは実臓部が高い結果となりました。実際の交通事故で乗員が脾損傷を受ける最も多い要因は、シートベルトが左上腹部を圧迫することによって発生するというものであるため、負荷の形態、方向によって損傷種類が異なり、脾臓に対して様々な力学特性取得のためのアプローチが必要です。本実験での引張荷重に対する被膜部と実臓部の力学特性を考慮することが、あらゆる脾損傷に対応できると考えられます。また、年齢の増加によって最大応力および応力最大時のひずみが低下する傾向も得られました。

-どんなところが評価されたと思われますか。

 実際の傷害という複雑な現象を数値化し、力学特性を定量的に示した点が評価されたと思います。シミュレーションモデルに人体臓器の特性データを反映させることで、人体に忠実な人体FEモデルが構築できると考えます。こうした社会的な貢献度も認められたのではないでしょうか。

-どんなところに研究の魅力を感じますか。

 機械工学科に進んだのはクルマが好きだったことがきっかけで、1年生の頃から西本先生と話す機会があり、この研究には以前から興味を持っていました。自動車衝突安全の基準が高くなっているのは、社会的に問題視されているからで、この研究に尽力することで社会に貢献していると実感できやりがいを感じます。人と関わることも多く、目標を達成するために何をすべきという仮説を立て、それに対するアプローチの方法を実践する場があり、将来にも活かせる手法やスキルを勉強できる環境があります。実際の事故に遭った自動車や乗務員について調査することもあります。安全性を高めるという点においては、人に危害を加える自動車をコントロールすることと同様に、危害を受けてしまう人をコントロールすることも重要だと思います。

-今後の目標をお聞かせください。

 今後は、臓器ごとにもっと細かく分析していくと同時に、臓器によっても計測の方法を考える必要があると思っています。的確にデータを取るために、普段から食肉を使ってテストを行い、計測技術の向上にも努めています。最終的には本研究を論文化することが目標です。

-ありがとうございました。今後益々、活躍されることを期待しています。

 

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