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土木工学専攻1年の橋本徳義さんが第14回廃棄物資源循環学会東北支部・第10回日本水環境学会東北支部合同研究発表会において優秀発表賞を受賞しました

自然の水質浄化機能を人工的に強化した人工湿地の研究が高く評価される

橋本徳義さん(福島県/船引高等学校出身)

 2月18日に仙台で開催された第14回廃棄物資源循環学会東北支部・第10回日本水環境学会東北支部合同研究発表会において、土木工学専攻博士前期課程1年(当時学部4年生)の橋本徳義さん(環境生態工学研究室/指導教員:中野和典教授)が優秀発表賞を受賞しました。橋本さんはオンラインで参加し、『汚水の流入深さとC/N比が干満流と水平流を組み合わせた人工湿地の水質浄化性能に及ぼす影響』の演題で口頭発表しました。本会では29件の口頭発表と7件のポスター発表があり、橋本さんの発表は学部生・高校生部門の優秀発表賞(5件が受賞)に選ばれました。本研究は、国立研究開発法人農業・食品産業技術研究機構と共同で進めているもので、郡山市の湖南浄化センターで行っている社会実装実験に関わる研究です。
 橋本さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―優秀発表賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 私は受け答えが得意な方ではなく、他の人の発表を聞いていると堂々と質問に答えていたので、まさか自分が賞をいただけるとは思ってもみませんでした。表彰の際のスピーチでも述べたのですが、ご指導くださった中野先生をはじめ、切磋琢磨してきた研究室の仲間のおかげで受賞できたものであり、深く感謝しています。賞をいただいたのは初めてのことで、最初は実感がなかったのですが、徐々に誇りに思えるようになり、3月に参加した土木学会では自信を持って発表することができました。4月には晴れて大学院に進学することができたので、この受賞を糧にして、今後の研究活動に励んでいきたいと思っています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 川や湖などでは、汚濁物質である有機物を水中に棲む微生物が取り込んでくれることで、水がきれいになります。私たちの研究室では、この自然の水質浄化機能を人工的に作った人工湿地を使って、郡山市の湖南浄化センターで汚水処理システムの社会実装実験を行っています。前任者が行った干満流(TF)と水平流(HF)を組み合わせた人工湿地の下水処理実験では、流入の深さが浅い場合、有機物がろ過下部のHFに届く前に除去され、HFでの窒素の除去に利用されない結果となりました。汚濁物質が少量だと微生物が活性化しないことが要因です。脱窒が起きるろ床下部のHF に汚水を直接供給すれば、有機物不足による脱窒の抑制を解決できると考えました。そこで、本研究では、汚水の流入の深さとTF 上部を条件1、TF 下部を条件2、HF 下部を条件3に設定して、C/N 比(有機物の窒素含量に対する炭素含量比)が脱窒性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実験を行いました。

 酢酸ナトリウム、ミートペプトン、塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウムを使って、汚濁物質が多い順にC/N 比8、C/N 比4、C/N 比2の3タイプのモデル汚水を作製。採水を週1~3 回行い、有機物量を示す CODcr(化学的酸素要求量)やT-N(全窒素)、アンモニア態窒素(NH₄ ⁺ N)、亜硝酸態窒素 (NO ₂⁻ N)、硝酸態窒素(NO ₃⁻ N)を測定して、水質浄化性能を評価しました。その結果、C/N 比8の場合には流入深さに関係なく有機物がろ床下部のHFまで届き、脱窒における有機物不足は起こりませんでしたが、汚濁物質の少ないC/N 比2の場合、流入深さが TF 上部である条件 1 では、有機物不足により HF での脱窒が最も抑制される結果となりました。このことから、湖南浄化センターにおいては、流入場所を条件2のように干満流の下部に設置した方が効果的であることがわかりました。

―どんなところが評価されたと思われますか。

 これまでの成果、その要因を推察した仮説、そして実験による結果と、道筋をしっかり組み立てて説明できたところが良かったと思います。中野先生には、こうした方がわかりやすいのではといろいろアドバイスをいただきました。
また、質疑応答で全窒素よりアンモニアが多くなったことについて指摘がありましたが、硝化せずにアンモニアが残ってしまったためと明確に説明することもできました。たどたどしいところもありましたが、パワーポイントも含めわかりやすく説明できた点が評価されたと思います。

―なぜ、土木の道を選んだのですか。

 父が土木関連の仕事をしており、アルバイトで現場の仕事に携わった経験もあったので、自分にとって一番身近だったことが理由です。大学進学と同時に、大学院に行こうと決めていました。大学院は将来のための投資と考えています。この研究室を選んだのは、中野先生の「生物と環境の共生概論」の授業に興味を持ったことや理系っぽい化学的な実験ができて面白そうだったからです。汚濁が除去されたかどうか見た目ではわからなくても、数値によって信憑性のある結果を示せることに研究の魅力を感じています。

―今後の目標や将来の夢をお聞かせください。

 研究室全体での目標でもありますが、湖南浄化センターの下水をよりきれいに浄化することが大きな目標です。湖南浄化センターで実装しているため、パイプ位置を変える場合、土を掘削しなければならずコストが掛かってしまいます。すでに取り組んでいますが、掘削せずに低コストで済む方法を実験しています。また、有機物がなくても硝化することができるアナモックスを活用した実験も進めています。
 研究が好きなので、将来は研究者になることが夢です。研究所、あるいは博士後期課程に進んで大学教員になり、研究を続けられたらと考えています。

―ありがとうございます。今後益々活躍されることを期待しています。

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