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建築学科令和4年度卒業設計展を開催しました

4年間の成果を結集した46作品の中から栄えある桜建賞が選ばれる

 建築学科では、2月6日(月)・7日(火)・8日(水)の3日間に渡り令和4年度卒業設計展を開催しました。70号館1階講義室を会場に46作品が展示され、大勢の学生や教職員が訪れていました。最終日となる8日には、出展作品の中から学内審査で選出された13名の学生がプレゼンテーションに臨み、設計コンセプトや4年間の集大成にかけた思いを審査員達の前で発表しました。

学生たちが柔軟な感性で建築の可能性を探る、4年間の研究成果

高島町駅2000m再開発
―都市における新しいごみ処理施設の提案― 
白銀 瑤子

商いの幕が上がる時
時代と景観に馴染む商店街
関 祐介

まちを紡ぐ
糠谷 勇輔

一次産業の造形 ―牧畜と農がシンクロする舎―
𠮷田 雄大

最後の舞台
―伝統文化の再解釈―
榎本 祐希

別荘文化
―持続可能への建築的試みー
川野 竜

人の森:シェアステーション
シェアリングエコノミーから考える新しい公の空間
鈴木 七緒

下町生活、再生日記
―「歩」がつなぐまちー
能多 玖梨花

生業を醸す
―海と海抜460m―
阿部 佳穂

小さなターミナル
―まちが軌道に乗るー
山内 楓唄

みずいろの空間
―表裏が一体となった街区づくり―
安藤 夢華

巡る情景
 ―散居と共に生き、人々に寄り添う集落拠点の創出― 
石川 陵介

桜建賞 まちを育む遺構群 ―時を経たコンバージョン―

黒田 大翔さん(建築計画研究室:指導教員/浦部智義教授)

 この作品は全国的に点在する「遺構」に着目し、中でも産業遺産として扱われることのなかった「文化の遺跡」を改修し、地域の新たな資源としての役割と機能を再び付与するものです。循環するプログラムを持った4つの建築設計によって、かつて地域を彩ってきた土地の記憶を後世につなぐ、持続可能な地域づくりを提案しています。


 複数の建物の関連性や地域に対するアプローチの方法など、ストロングポイントを活かした地域づくりが高く評価されました。講評では、「⽊材乾燥の施設のルーバーとしても⽊材の置き⽅や、デザインがすごくよかった」「敢えて観光地として賑わう場所への提案は意外に感じたが、先⾒性が優れているのだと思い直した。リサーチした内容をしっかり建築化できている点も魅⼒的だ」と評されました。受賞した黒田さんに喜びの声と作品への思いを聞きました。

建築の奥深さを知った4年間。集大成の作品で地元の魅力を再構築

 地元山形県の銀山温泉を題材に、温泉周辺地域に点在する「遺構」に役割を持たせることで温泉と地域の新たな関係を構築したいと考えました。地域の文化や風土を生かすために、リサーチに比重を置き、実際に現地に足を運んで地域の方々に直接話を聞きました。自分が感じたもの、銀山の地域を構成しているものを歩きながらスケッチし、エレメントを抽出。地域の空気感、雰囲気を壊さないようにデザインに落とし込みました。

 杉やヒノキの生産地である土地の特性を生かして廃小屋へ伐採木材の地熱乾燥と流通拠点としての機能を持たせ、良質な建材による地域のブランド化を図り、廃旅館を新たな産業によって増える移住・観光の人流の滞在型施設へと改修。また集落と観光地の間に位置する空き家には伝統工芸や家具の製作、修理を行う地域工房の役割を持たせます。そしてそれらの起点であり観光と地域の産業をつなぐことを目的とするバス停を整備します。観光地である温泉を含め、点在する遺構群が互いに繋がり新たな命が吹き込まれるサステナブルな建築再生プランとしました。

 表現やデザインにこだわりつつ、地域との関連性や建築が果たすプログラム性にも重きを置いた作品です。総合力で、パッケージとして揃えたい、と、この卒業設計にかける思いは特別でした。結果として桜建賞を頂くことができ大変光栄です。クオリティを重視したため模型製作にはかなり時間がかかり、ひとりでは成しえませんでした。ご指導いただいた浦部先生はじめ力になってくれた大学院生の先輩や友人、後輩の皆さんのおかげで受賞できたものであり、深く感謝しています。



 4年間の学びで様々な事象と関わる建築の奥深さを知り、建築に対する考え方が大きく変わりました。単に格好いいものへ憧れていた自分でしたが、今はデザインとその周囲のことを結びつけることの難しさと答えが無い中でも自分なりに追求していく楽しさを感じています。社会に出てからも人とのつながりを大事にし、使う人が幸せになれるような建築物をつくることをめざします。