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情報工学専攻博士前期課程2年の菅谷真さんが、国際会議『GCCE 2022』で優秀学生論文賞優秀賞を受賞しました

AIを用いた物体検出手法をドローンに応用する研究が
国際会議の場で高く評価される

 10月18日から21日に大阪で開かれた国際会議『2022 IEEE 11th Global Conference on Consumer Electronics (GCCE 2022)』 において、情報工学専攻博士前期課程2年の菅谷真さん(次世代マルチメディアシステム研究室/指導教員:松村哲哉教授)が、『IEEE GCCE 2022 Excellent Student Paper Awards:Outstanding Prize(優秀学生論文賞優秀賞)を受賞しました。このイベントはIEEE Consumer Technology Societyが主催する年次国際会議で、米国ラスベガスで開催される CESと連携する国際家電会議 ( ICCE ) の姉妹会議です。採択率68%(accept502件)の査読付き学会であり、口頭発表231件中の上位12件(一般6件、学生6件)が入賞(受賞率約5%)という中で、菅谷さんは見事、学生部門の優秀賞に輝きました。

 菅谷さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―Student Paper Awards受賞おめでとうございます。
 感想をお聞かせください。

 初めての学会発表で、しかも国際会議で英語での口頭発表でしたので大変緊張しました。発表時間15分、質疑応答5分すべて英語でスピーチしなければならないため、想定質問を考えて何度も繰り返して練習しました。うまく答えられない質問もありましたが、発表は練習通りにできたと思います。先輩方と進めていた研究を受け継いだ形での発表でしたので、自分一人の成果ではなく、みんなで受賞したものと思っています。また、松村先生には英語の要綱やスライドづくり、スピーチに関して丁寧にご指導をいただき、大変感謝しています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 論文題目は『Implementation of Deep Learning-Based Hierarchical Object Detection System for High-Resolution Images』で、AIを用いた物体検出手法をドローンに応用する研究です。近年、ドローンの自律制御を目的としたAI技術が盛んに研究されていますが、ドローンを用いた荷物の搬送や橋梁などの公共設備の点検には、未だ人手の介入が必要不可欠です。ドローンは高所からの空撮画像を使用するため、高解像度画像を用いた物体検出が必要となりますが、同時にリアルタイムに画像処理を行う必要もあり、高解像度画像を低解像度にリサイズして検出を行っています。それによって、構成画素数の少ない小型物体の検出が難しくなることが課題として挙げられています。ドローンから荷物が落下する危険性を軽減するためには、人や車のいない道路を選択して飛行する必要があり、人のような小さな物体を検出することが重要になるからです。高解像度画像を分割して、リサイズせずに複数回に分けて検出し精度をあげる手法もありますが、画像の分割数に応じて物体の断片化による精度低下や高解像度画像を用いたことによる検出処理の低下が課題となっています。

 そこで、従来の2つの手法の利点を最大限に活用した高解像度画像向けの階層型物体検出アルゴリズムを提案しました。大型・中型の物体検出アルゴリズムで高精度・高速処理が可能なYOLOv5ネットワークを基にして、3階層で構成しました。1階層目はFull-HDの画像に対して、リサイズ画像を用いて大型・中型の物体を検出、2階層目は原画像から領域ごとに抽出し、リサイズせずに再構成画像を生成して小型物体のみを検出します。3階層目でそれらを結合することで全ての物体検出を可能にしました。
 今回は、JrtsonNanoボードに実際にアルゴリズムを搭載して正常に動作しているか、ドローンで撮影した画像が収集されているVisDroneを用いて小型物体の抽出状況を調べました。結果、従来方式と比較して、検出個数が約2倍増加、検出精度が約3%向上、約3フレーム/秒のリアルタイム動作が可能であることを確認しました。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 要綱の時点でわかりやすくまとめていましたし、スライドに関しては自信を持っていました。英語での発表でしたが、十分に練習も積んでいたので、わかりやすく研究概要を説明できた点が評価されたと思います。質問の際は、正しい結果が出たのかという点に関心が寄せられていました。また、人や車、自転車などを区別できるようにしていますが、もっと検出の種別を増やせるのかといった質問もありました。他の用途への適用も視野に入れての質問だったと思われます。研究室の中だけでは得られない新たな知見や課題を見つけることもでき、今後の研究への励みになりました。

―今後の目標をお聞かせください。

 研究に関しては私自身も先輩からこの研究を引き継いだので、今後はこの研究を発展できるように後輩に引き継いでいきたいと思います。卒業後は、これまで培ったAI技術を使って物体認識を行った研究成果を活かせる会社に就職が決まりました。生産工場の自動化に伴う製品検査のカメラシステム開発に携わる予定です。

 今後益々、世の中がIT化されていく状況の中、情報工学が重要な役割を担っていくと考えてこの学科を選びました。情報工学の技術が社会にどう活かされているかがわかるとともに、将来役立つ技術を身につけることができました。更に、この研究室で養った社会人としての基礎力は、長い人生において役立つスキルであり、自分にとって大きな成長につながったと感じています。
将来の夢は、人に尊敬される人になること。人に頼られる、価値のある人間になれるよう精進していきたいです。

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを祈念しています。

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