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情報工学専攻2年の郡司遥輝さんが、電子情報通信学会ネットワークシステム研究会若手研究奨励賞を受賞しました

UAVを使って宅配サービスを実現するための
最適な経路構築法の研究が高く評価される

 この度、情報工学専攻博士前期課程2年の郡司遥輝さん(制御ソフトウェア研究室/指導教員:上田清志教授)が、一般社団法人電子情報通信学会ネットワークシステム研究会の若手研究奨励賞を受賞しました。電子情報通信学会に投稿された35歳以下の若手研究者の論文のうち、研究専門委員会にて審査し2割弱の若手研究奨励賞の対象者が選ばれます。その後、奨励講演で発表した対象者の中から、概ね10%程度にこの賞が授与されます。郡司さんは『リンク階層化を用いたOLSRベースの複数無人移動機衝突回避経路構築法の評価』を発表し、見事若手研究奨励賞に輝きました。
 郡司さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

―若手研究奨励賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 大学院に進学してから、ネットワークシステム研究会で発表するのは3回目になります。今回は論文を投稿した時点で対象者に選ばれ、次回の発表で優れた内容であれば賞をいただけると知っていたので、奨励講演という形で発表した際には、内心期待はしていました。でも、受賞した時は、嬉しさよりもホッとした気持ちの方が強かったです。ご指導いただいた上田先生には、深く感謝しています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 物流業界では人手不足などが問題視されていますが、その解決手段としてUAV(ドローン)を使った移動機による無人宅配技術が有用であると考えられ、移動機の目視外飛行による宅配実施に向けた環境整備が進んでいます。更なる運行管理システムや衝突回避技術の高度化・知能化が求められている中、私たちは安全な経路を作って他の移動機と衝突しないようにOSLRというプロトコルを使ったナビゲーションシステムの開発に取り組んでいます。先行研究では、各家屋に設置されているスマートメーターなどを利用して、無線デバイス同士が通信することでマルチホップネットワークというものを形成し、経路情報をUAVに送る方法を考えました。Proactive 型の代表例であるOLSR をベースに、ある移動機が経路に使用するリンクをロックすることで経路の重複による衝突を回避する方式(リンクロック方式)です。一方で、複数台の移動機が同時航行する場合に、使用できるリンクが減少し、経路が構築できなくなるデメリットもあります。本研究では、階層化を導入し、空塞表に階層高度の情報を追加することで経路構築に失敗する頻度を改善しました。地上で言えば、道路の車線を複数設ける方法です。飛行高度を分けて複数の移動機を同時に航行できるようにし、どの移動機がどの経路を選択するかを決めるための仕様を構築しました。論文では、提案した方式の内容を説明しましたが、今回の奨励講演では提案内容に対して、①経路コンフリクト率 ②経路構築失敗率 ③移動機の飛行距離の3つの観点から評価した結果を発表しました。リンクロックで経路衝突が改善される効果について経路コンフリクト率を使って評価した結果、ノード密度が高い場合(無線デバイスが多く設置されている場合)は衝突が少なく、低い場合は衝突が多くなりました。経路構築の失敗率については、リンクロックした場合としなかった場合で評価した結果、ノード密度が低いほど失敗率は上がり、ノード密度が高いほど失敗率も低くなりました。更に階層化方式とリンクロック方式を組み合わせた場合には、経路構築の失敗率も下がり、リンクロックにより衝突も改善される効果が得られました。リンクロックすることで移動機の飛行距離がどれくらいになったかも評価しましたが、ロックしている場合は遠回りせざるを得なくなり、総飛行距離は約5%伸びる結果になりました。住宅集中地区では更に17%前後に伸びましたが、階層化方式を組み合わせることで走行距離も短縮化できました。これらの結果により、リンクロックに階層化方式を組み合わせることで、問題点の改善につながることを示しました。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 研究テーマや研究方法に新規性がある点が評価されたと思います。今回、進捗状況を発表しましたが、研究に対して様々な意見や今後の研究方法についてのアドバイスをいただき、将来性も含めて期待されているように感じました。ネットワークの考え方など、新たな視点を学ぶことができ、大変ためになりました。

―今後の目標をお聞かせください。

 本研究から派生した新たな研究課題に取り組んでいて、3月に沖縄で開かれるネットワークシステム研究会で発表する予定です。卒業後は学校推薦で富士通への就職が決まりました。将来の夢はシステムエンジニアとしてICT技術を使ったスマートシティの開発に携わることです。これまでの研究を基盤に、交通量を最適化して渋滞のないまちづくりに貢献したいです。

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―ありがとうございました。今後益々活躍されることを祈念しています。

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