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2021年度土木工学専攻修了の神戸智志さんが土木学会全国大会第77回年次学術講演会優秀講演者として表彰されました

気候変動によるダムの利水運用への影響を明らかにした
研究が高く評価される

 9月15日(木)・16日(金)に行われた令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会において、2021年度土木工学専攻博士前期課程修了 神戸智志さん(水文・河川工学研究室/朝岡良浩准教授)が『SSPシナリオを用いた豪雪地帯のダム流入量の推定と利水運用に及ぼす影響』で、優秀講演者として表彰されました。本表彰は、将来の土木界を担っていく若手の研究者および技術者の論文内容や講演技術の向上を目的としており、土木学会全国大会で実際に講演を行った40 歳以下の研究者、技術者を対象に、論文内容に加え講演が簡潔明瞭で優れたものに与えられます。
 神戸さんの喜びの声と発表した研究内容について詳しく紹介します。

―優秀講演者表彰おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 これまでコロナ禍だったため、オンラインでの学会発表の経験はありましたが、実際に登壇して発表を行ったのは初めてのことで、まさか受賞できるとは思ってもみませんでした。本研究は私が大学院修了までに行っていた研究成果をまとめたもので、指導教員の朝岡先生に研究過程から本発表に至るまで、総合的にご指導いただいたおかげで受賞できたと思っています。朝岡先生には深く感謝しています。

―講演した研究について詳しく説明いただけますか。

 生活用水、農業用水、工業用水など、人が生きていく上で必要な水を利水と言い、ダムの目的の1つに利水運用があります。飲み水や生活するための水が無くなってしまうことも一つの災害と捉えると、気候変動によって、その大切な水がどのように減ったり増えたりするのかを知ることは重要です。もともと降雪は、年によって多雪だったり小雪だったりすることもあり、気候変動の影響を顕著に受けます。

修士研究の発表

また、近年温暖化の影響により雪が融けやすくなっている状況などからも、気候変動が利水ダムに及ぼす影響について検討する必要があると言えます。そこで本研究では、豪雪地帯にある阿賀野川の大川ダムを対象に、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で提案された最新の気候変動シナリオを用いてダムの流入量がどう変化するかを試算し、定量的に評価しました。

 通常は冬から春へと段々と暖かくなるにつれ、徐々に雪解け水がダムに流入しますが、急に暖かくなれば一気に雪解け水が融けて、ダムの流量も増えます。満水になった場合は放流しなければならず、有用な水を捨てることになってしまいます。また、大川ダムの場合、4月から5月の雪解け水を主に灌漑用水に利用しているため、気候変動によって2月3月に雪解け水がダムに流入した場合、灌漑用水が足りなくなる可能性があります。このように、従来の利水のやり方が今後通用しなくなることが考えられます。今回は定量的な評価に留まりましたが、今後は結果を踏まえて農業を始める時期を早めるなど、どのような対策が必要かまで提案していきたいと考えています。

阿賀野川水系の調査

研究対象の大川ダム

―大学院に進学したのはなぜですか。

土木工学専攻2年次に第64回日本大学工学部学術研究報告会最優秀発表賞を受賞

 国公立の大学では、大学院進学が当たり前になっている状況から、自分も同じ土俵に上がるためには、同じように努力するしかないと考え大学院進学を決意しました。学部4年の時に台風19号を経験したことも大きな要因です。台風19号の水害をシミュレーションで再現して、その現象を解明できると知った時、研究の素晴らしさを実感し、将来、そういうことを仕事にしたいと思いました。大学院では文章能力やパソコンの知識、コミュニケーション能力といった社会人として生き抜くための実践的で総合的なスキルを身につけることができるだけでなく、視野も広がり、やりたい仕事にも就くことができました。大学院で人生の基盤を築いたと言っても過言ではありません。現在、コンサルティング業務に携わっており、ハザードマップの基礎データとなる浸水想定区域図の作成などを行っています。今後の目標は、今回発表した研究を論文化することです。まだ社会人1年目なので、早く一人前の技術者になり、会社の役に立てるようになりたいと思っています。

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 後輩の皆さんには、勉強はこんなに役に立つものなんだということを伝えたいです。出された課題はきちんとやる、単位を落とさないようにするなど、まずは与えられた課題をクリアしていくことが大事です。勉強すれば道は必ず拓ける。やりたいことを見つけて、それを仕事にできるように頑張ってください。

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