最新情報

土木工学専攻博士前期課程2年 相内豪太さんが土木学会全国大会第77回年次学術講演会優秀講演者として表彰されました

次世代の石炭火力発電からの産業副産物の
有効利用に関する研究が高く評価される

 9月15日(木)・16日(金)に行われた令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会において、土木工学専攻博士前期課程2年 相内豪太さん(構造・道路工学研究室/岩城一郎教授・前島拓専任講師)が『石炭ガス化スラグ微粉末を混和材として用いたコンクリートの諸物性に関する検討』で、優秀講演者として表彰されました。本表彰は、将来の土木界を担っていく若手の研究者および技術者の論文内容や講演技術の向上を目的としており、土木学会全国大会で実際に講演を行った40歳以下の研究者、技術者を対象に、論文内容に加え講演が簡潔明瞭で優れたものに与えられます。
 相内さんの喜びの声と発表した研究内容について詳しく紹介します。

―優秀講演者表彰おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 対面での発表は初めての経験でしたが、日頃から指導教員の先生方の前で発表練習をしていたので、本番で緊張することはありませんでした。受賞の実感はあまりないのですが、ご指導いただいた岩城先生や前島先生に誉めていただけたのが、大変嬉しかったです。発表して初めて感じたことでもありますが、石炭ガス化スラグを微粉末として使用する研究はほとんどないため、この研究には新規性があり、多くの方に関心を持っていただいたことが評価につながったのだと思います。

―講演した研究について詳しく説明いただけますか。

 石炭を利用した火力発電は、COを排出するという環境面での課題があります。しかし、東日本大震災以降、福島県の浜通りでは原子力発電所が稼働していないため、相馬やいわき勿来にある火力発電所に頼らざるを得ない状況です。そうした中で、近年、注目を集めているのがIGCC(石炭ガス化複合発電)方式です。石炭をガス化する装置を使って石炭を燃焼することでタービンを回し、蒸気の熱で発電するコンバインドサイクル発電(GTCC)を組み合わせたもので、発電効率が高く、COの排出も軽減できます。製鉄所の高炉より副生される高炉スラグをセメント材料と置き換える副産物利用については研究が進められていますが、IGCCから出た石炭ガス化スラグを利用することは検討されていませんでした。そこで本研究では、石炭ガス化スラグ微粉末を混和材として用いた場合の耐久性について調べ、利用の可能性について検討しました。

 従来のコンクリートにセメントの一部として石炭ガス化スラグを置き換え、一般的な強度の測定に加え、福島県のような寒冷地域での凍結防止剤による劣化に対する耐久性について評価しました。学部4年の時にコンクリートを作製し、まずは生コンクリートの状態で普通コンクリートとの違いを検証。実際に製造した供試体を使った1年にわたる耐久性試験では、凍結防止剤散布下を想定して、塩分環境下での凍結融解抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応(ASR)に対する抵抗性について調べました。結果、石炭ガス化スラグ微粉末をコンクリートに用いることで、塩分浸透抵抗性が明らかに向上することやASRも抑制する可能性があることが分かりました。凍結融解抵抗性についても普通コンクリートと同等の結果が得られ、長期強度増進効果を得られる材料であることを明らかにしました。約1年半かけて研究した成果をまとめて、今年の3月に論文を提出。その内容を今回の学会で発表しました。

―大学院に進学したのはなぜですか。

 土木は大いに社会貢献できる分野であり、それをダイレクトに実感できるところが魅力ですが、特にこの研究室での研究成果は、すぐに社会実装されている点に興味を引かれました。研究が面白くて、もっと勉強したいと思い大学院に進学しました。現在は石炭ガス化スラグ微粉末の優位性を示すために、石炭ガス化スラグを細骨材として用いたコンクリートとの比較検討を行っています。微粉末のスラグを使った実物大のコンクリートでの実機試験も進めているので、今後はその検討も行う予定です。

 大学院では学会などでの発表の機会が増えたので、プレゼンテーション能力が向上しました。論文を書くことで自分の考えをまとめる力も鍛えられたと思います。また、コンクリートは一人でつくれるものではないので、みんなで協働して実験を進める中で、リーダーとして指導する力やコミュニケーション力も身につき、大学院で大いに成長できたと感じています。

―今後の目標をお聞かせください。

 目標は、副産物をもっと身近に簡単に利用できる方法を考えて普及させていくことです。フライアッシュや石炭ガス化スラグといった福島県で副生される副産物の有効利用に関する研究に取り組み、副産物の標準的な利用方法の手引きを作成し、福島県モデルとして全国的にも展開できたらと考えています。

―ありがとうございます。今後益々活躍されることを期待しています。

令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会優秀講演者表彰はこちら

構造・道路工学研究室HPはこちら