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機械工学専攻2年の斑目凜花さんが日本機械学会第34回バイオフロンティア講演会において、『若手優秀講演表彰』を受賞しました

人工股関節の設計開発と置換術に関わるバイオメカニクスの研究が高く評価される

 12月16日(土)・17日(日)に一般社団法人日本機械学会第34回バイオフロンティア講演会において、機械工学専攻博士前期課程2年の斑目凜花さん(バイオメカニクス研究室:プラムディタ ジョナス准教授)が、『若手優秀講演表彰』を受賞しました。この賞はバイオエンジニアリング関する研究を対象とし、若手研究者および大学院生を中心とした講演の中で、特に優れた講演を行った30歳未満の若手会員に贈られるものです。斑目さんが発表した『歩行特性に及ぼす人工股関節全置換術のステム設置位置の影響に関する実験的研究』は茨城県立中央病院整形外科との共同研究による成果で、臨床医療に貢献する研究です。
さらに、班目さんは『日本機械学会若手優秀講演フェロー賞』も受賞しています。
 班目さんに受賞の喜びとともに、研究内容について詳しくお話を聞きました。

―若手優秀講演表彰受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 学会での口頭発表は2回目でしたが、緊張して頭が真っ白になる場面もありましたから、受賞できたことに大変驚いています。未だに信じられないというのが率直な感想です。

―研究内容について詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では、コンピュータシミュレーションを用いて歩行時に股関節に作用する力を推定したり、振り子実験を用いて置換直後の歩き方の変化を予測するなど、最適な人工股関節の形状と設置法について研究しています。変形性股関節症は股関節の軟骨がすり減って骨頭が変形してしまう病気です。特に高齢者に多く、関節が変形してしまうと痛みが生じ歩きにくくなります。そこで悪くなった関節を金属やセラミック、超高分子ポリエチレンなどでできた人工股関節に入れ替える人工股関節全置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)という治療法が用いられています。しかし、術後の患者の中には歩きやすさが低下することがあるようです。茨城県立中央病院整形外科の調査結果により、前方に傾きのある頸部前方オフセット(AO: Anterior Offset)が歩きやすさに影響を与える可能性が指摘されていますが、その理由は明らかになっていません。本研究では、それを解明することを目的に頸部前方オフセット(AO)と歩行特性との関係を検証しました。
 まず、成人男性の右大腿骨の形状データをもとに人工股関節を埋め込んだ大腿骨をパソコン上で設計し、3Dプリンターを使って実際に大腿骨のモデルを作製しました。人間の歩行(遊脚期)を振り子運動と仮定し、モデルを使って遊脚期を模擬した振り子実験を行いました。術前と術後のAO(頸部の傾き)の有るものと無いものの3体の人工股関節のモデルで周期・振れ角・振れ幅の3つのパラメータを計測し、歩幅や歩行速度を比較し、歩きやすさを分析しました。
 結果、大腿骨頸部の形状変化によって重心位置が変化し周期や振れ角に影響を及ぼしている可能性があることがわかりました。AOの有るモデルは周期が小さく、振れ角が大きくなり術前のものに近い結果となったので、それが歩きやすさを感じる要因につながっているものと思われます。
 発表の際には実験のみでしたが、理論値計算、有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションでも同じような結果が得られ、本研究成果の妥当性を確認することができました。

―研究の面白さ、魅力を教えてください。

 実験に使うモデルを自分で設計するので、ものづくりに携われるところはこの研究の面白さでもあります。でも、3Dプリンターでモデルを作成する時間が掛かることや設計ミスがあると一から作り直しになるので大変でした。また、実験は手作業で行うため、後輩にも手伝ってもらいましたが、緊張の連続でした。データも細かく取って解析したので、いろいろ苦労はありましたが、その分、成功すると大きな達成感を味わうことができました。実際に医療現場に貢献できる研究なので、やりがいもあります。

 

―どんな点が評価されたと思われますか。

 研究テーマがユニークということもあり、いろいろ質問やアドバイスもいただいたので皆さんに興味を持っていただけたように感じました。今までにない新規性と独創性の面で評価されたのではないかと思います。

―なぜ機械工学分野に進んだのですか。

 機械工学科を選んだ理由は臨床工学技士課程があったからです。もともと医療機器に興味があり、研究室もバイオメカニクス研究室を選びました。機械分野と言っても機械を作るだけでなく、自分でプログラミングしたりシミュレーションしたりするので、多様なスキルが身につきます。就職先も幅広く、自動車やロボット関連企業はもちろん、IT関連企業に行くこともできます。例えば製薬会社の製造機械の保守管理という仕事もあったり、業種も様々です。私は医療機器を取り扱うベンチャー企業に就職が決まり、その中でリクルーターの仕事を選びました。

―将来の夢や目標はありますか。

 年収1000万円を目標にキャリアを積み、10年後、今の自分から見て誇れる人になりたいですね。

―これから機械工学を学ぼうと考えている後輩にメッセージをお願いします。

 まず伝えたいのは、女性でも活躍できる場があるということです。特にここはバイオや医療系の研究室が多く、想像している機械工学とは違う分野からアプローチできる点が魅力だと思います。固定概念に捉われず、実際に自分の目で見たり触れることが大事。女性が少ない分野だからこそ、これまでになかった新しい女性の視点でものづくりを発展させていけたら良いと思います。

―ありがとうございます。今後、益々活躍されることを祈念しています。