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第25回JIA東北建築学生賞で建築学科4年の伊藤響介さんが優秀賞、同4年の米山俊也さんが奨励賞を受賞しました

学内選考で選ばれた建築設計課題作品が審査会で高い評価を受ける

伊藤 響介さん

米山 俊也さん

 

10月29日(金)に、第25回JIA東北建築学生賞審査会がオンラインで開催され、建築学科建築計画研究室(指導教員:浦部智義教授)の伊藤響介さん(建築学科4年・写真左)の作品『鼓舞するハレとケ―伝統芸能の継承による町の活性化―』が優秀賞、同じく米山俊也さん(同4年・写真右)の作品『蓮池をめぐる木の空間―郊外型コミュニティガーデン―』が奨励賞(東北専門新聞連盟賞)を受賞しました。Zoomによるオンラインでの開催となった本年度は、応募作品の中から選ばれた43作品が公開ヒアリングに進み、コンセプトの導き方、社会性・歴史性、空間性・造形力、表現力などを軸に審査され、審査員の投票によって各賞が決定。惜しくも最優秀賞は逃したものの、受賞につながったことは大きな成果です。本作品は、建築学科前期カリキュラムの建築計画設計課題から学内選考により選出されたものです。二人の喜びの声とともに、作品への思いを語っていただきました。

 

建築学科4年 伊藤響介さん(建築計画研究室)
優秀賞『鼓舞するハレとケ ―伝統芸能の継承による町の活性化―』


計画地は私の出身地である山形県西置賜郡小国町。ぶなを中心とした広葉樹が広がるこの地域には、古くから『古田歌舞伎』という伝統芸能が根付いています。しかし、少子高齢化が進み、小学校が廃校になるなど、伝統芸能の継承も危うい状況になっています。そこで、実際にまちの中心にある廃校舎を増築・改築し、伝統芸能【ハレ】と日常のコミュニティ【ケ】を要素に自然の恵みを掛け合わせた地域活性化のプラットフォームを計画しました。まちの中心にありながら、山に囲まれ川が近くを流れるロケーションに恵まれたこの場所は、シンボリック的な施設をつくるのに最適だと考えました。伝統芸能を継承するための屋外舞台を中心に動線を計画。校舎の壁を取り払い視線の抜けをつくり、スロープで誘導性のある動きを出す設計にしました。日常的に地域の人々が集まれる場として、レストランや直売所をまち近くに設置。舞台は少し離れた川のほとりにあり、そこから川や山に視線が抜けていくように設計しています。もともと私自身、小学生の頃に子ども歌舞伎を経験しましたが、小学校が廃校になるとともに根絶したことを残念に思っていました。それを復活させることは、まちの人たちが子どもの成長を見守りながら集まれる場を形成することにつながり、地域全体の活力の場になると考えたのです。審査会では、なぜ廃校舎を改修する必要があったのかという質問もありましたが、思い出として100年後もまちに遺せるようにと考えたからです。これについては、エスキスの時から浦部先生や渡部先生にご指導いただいたおかげで難なく対応できました。評価された点は、実際に手を動かして模型を作成したところではないかと思います。建築を引き立てるために模型写真を載せることで、インパクトのある提案になりました。説明をするのが苦手なので、学内選考後も学生賞に提出するに当たって浦部先生に何度もエスキスやプレゼンボード制作に関してもアドバイスをしていただき、作品についてどのように説明するか言葉も紡いでいただきました。何か月も頑張ってきたので、優秀賞に選ばれてとても嬉しかったです。今後は大学院に進学し、将来、設計事務所に就職できるように作品づくりに取り組んでいきたいと思っています。作品は自分の分身のようなもの。そんな自分の分身をまちに残せるような建築士になりたいです。

 

建築学科4年米山俊也さん(建築計画研究室)
奨励賞『蓮池をめぐる木の空間 ―郊外型コミュニティガーデン―』

本作品の課題は、建築に関わる者として、身近な地域と向き合い、その資源を活かしながら、豊かな暮らしを実現する“建築”を考えることでした。私が現在住んでいる工学部キャンパスの南側は古くからの住宅もあり、近年、少しずつ宅地開発され続けている住宅地ですが、その中に放置されている蓮池があるのです。周辺には集会所や消防団の小屋、神社など、地域活動の拠点だった場所もあります。市役所の方に蓮池の深さなどを聞いたところ、副産物的にいろいろな情報を得ることができました。そこはもともと区画整理で公園になる予定だったそうです。今は活動の痕跡すらありません。そこで、公園化するだけでなく、蓮池を中心としたコミュニティ形成の場にすることを計画しました。2年前、台風19号による水害の被害に遭いましたが、その時、一人で行動しなければならなかった経験から、日常的に地域の人と交流できるコミュニティの場があれば、非常時にも役立つのではと考えていました。蓮池を囲むように動線を計画し、蓮池の風景に馴染むように流動的な形状で屋根を表現しました。機能としては、集会所、消防団の小屋、レストラン、直売所、さらに蓮池を再編するにあたって管理棟も計画。地域住民で蓮池の管理など行うことで、日常的に適度な関わりを持続できると考えました。また、レンコンを収穫してレストランの食材として利用したり直売所での販売も行います。過度に干渉しすぎない関係性を構築できる場として、蓮池と建築が一体となった、人々の庭“コミュニティガーデン”を目指しました。学内の審査では、木造HPシェル構造を波のように繋げて水面に似た造形にした点を評価されました。外部の評価を受けるまでは、自分としては納得いくものができたと思っていました。学生賞に出すプレゼンボードの制作時には、内容の整理も含めて浦部先生にも丁寧にアドバイスをいただいた結果、誰もが一目見ただけで何をつくったのかが伝わるような、わかりやすさは良かった点だと思っています。逆に掘り下げるような深みのある内容が足りなかったことが反省として残りました。今後はわかりやすい見た目の造形をつくることを大切にしながら、もっと深みのある内容を盛り込んだ建築をつくりたいと考えています。卒業後は、興味のあった住宅に携われるハウスメーカーのリフォーム会社に就職します。将来の夢は、一番好きな建築家が建てた家に住むこと。その建築家に自分がなれるように頑張っていきたいです。

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