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地域住民と協働で取り組む『ロハスの池プロジェクト』がスタートしました

地域そして行政と連携し、学生とともに
古川池の持続可能な防災親水公園化を目指して

 この度、工学部のロハス工学センタープロジェクトに『古川池の持続可能な防災親水公園化プロジェクト(通称:ロハスの池プロジェクト)が新たに設置されました。23年ほど前、中村玄正名誉教授、佐藤洋一元専任講師により始まったのが大学構内を流れ古川池に流入する徳定川の清掃活動でした。その後、髙橋迪夫名誉教授、長林久夫名誉教授、藤田豊元教授らも参加し、近年は土木工学科の水環境、地盤等について学ぶ複数の研究室の学生・教員・卒業生を中心に、毎年春と秋の年2回行ってきました。2014年からは、キャンパス周辺の4町内会で結成された徳定川(古川池)愛護会を中心とする住民との協働で実施されるようになり、地域の恒例行事となりました。同会は、古川池環境整備実行委員会を中心に、古川池の治水対策や環境整備について、県や国土交通省、環境省、復興省などの国に対して陳情・要望を行い、環境整備実行に向けて活動を行っている団体です。
 5月21日(金)には、郡山市役所に赴き、徳定川(古川池)愛護会2021年度活動計画について、品川萬里市長への報告を行いました。まず、会長の高橋晋也氏がご挨拶し、同会のメンバーを紹介しました。続いて、活動の方向性・目標、郡山市との連携、今年度の愛護会活動について説明を行いました。活動計画の中には、愛護会とロハスの池プロジェクトが連携して、「防災・減災」、「生態系保全」、「生活空間」の向上を目指すことが示されており、工学部の教員と学生も活動内容について発表しました。プロジェクトメンバーである土木工学科の中野和典教授(写真左)が、これまで行ってきた徳定川清掃活動と、昨年度より新たにスタートした古川池を研究フィールドとして利用する取り組みについて紹介しました。続いて、プロジェクトリーダーである土木工学科の手塚公裕准教授(写真右)が、令和3年度古川池をケーススタディとした研究予定について説明しました。手塚准教授は治水・利水・環境保全など様々なポテンシャルを有している古川池が十分に活用されていない現状を指摘。本プロジェクトでは、古川池の多面的機能を最大限に引き出し、その機能を持続させる方法について地域の方々や行政とともに検討し、実際に適用して効果を検証します。さらに、手塚准教授は古川池をロハスの池のケーススタディとして広く発信することで、全国で活用されず埋もれている池の水環境再生を進める狙いがあることを示唆しました。今後は、土木工学科の水質浄化、治水、景観・歴史、橋梁、整備・維持管理など、それぞれ専門分野の研究者6名をメンバーに加え、古川池愛護会の方々を学外協力者としてプロジェクトを推進していきます。手塚准教授は具体的な活動予定にも触れました。第1期は「古川池を知る」を課題に、水量、水質、底質、植生、親水性の調査を行い、治水・利水・環境保全のための研究に取り組みます。第2期は「理想の姿を考える」を課題に、よりよい整備方法、維持管理方法を検討、第3期では、実際に整備・維持管理の効果を検討していきます。
 ここで、土木工学科4年水環境システム研究室の安本果七子さん(写真左)が、古川池での卒業研究計画について説明しました。水環境システム研究室では、昨年度から研究を進めており、今年度は ①植生浮島による水質浄化実験、②水質調査 ③古川池の水を利用した藻類培養実験 ④池干し実験 ⑤放射性セシウムの分布調査を行います。同じく環境生態工学研究室の高内聖文さん(写真右)が植生浮島の水質浄化実験について、その効果、特徴・メリットおよび実験方法などを詳しく説明しました。
古川池愛護会の活動計画の報告を受けた品川市長は、「古川池は郡山市が抱える大きな課題であり、国の河川行政に対し一石を投じる意義深く価値の高いプロジェクト」だと強調。郡山市としても活動を支援していくと述べられました。会長の高橋氏(前列左)も、工学部の教員・学生と研究活動を継続し、古川池の水環境再生に取り組んでいきたいと決意を新たにしていました。郡山市長を前に発表し、貴重な経験ができたと話す安本さん。「古川池が親水公園になっていくプロセスに携われることに興味を持ちました。地域の方々や行政と関われるのも、このプロジェクトならではの魅力。問題は山積みですが、やりがいがあります」と思いを熱くしていました。今年から始める植生浮島の実験に携わる高内さんは、「実際の現場で経験してみたくて、卒業研究のテーマに選びました。ゼロからのスタートなので、自分にとっても貴重な経験になると思います」と目を輝かせていました。

生態系保全に向けた古川池清掃活動で学生たちが大活躍

5月22日(土)には、早速、古川池愛護会と工学部の教員・学生による古川池の清掃活動「春の陣」が行われました。水環境システム研究室は古川池第4池を、環境生態工学研究室は第3池を担当。胴長を履いた学生たちが果敢に川に潜入し、大型のゴミを拾い上げていきました。一昨年の秋には台風19号による水害、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で、しばらく清掃活動が中止となっていたこともあり、大量のゴミが収集されました。

初めて胴長で池の中に入った学生は、「楽しかったです。でも、ヘドロで足が嵌るくらい池の中は汚かった。改めてきれいにしたいと思いました」、「時間が足りなかったです。もっと清掃したかったけど、いい経験になりました」、「住民の方と交流できてよかったです。これからの共同研究も住民の皆さんと協力し、楽しみながら取り組んでいきたい」と、今後の活動にも意欲を見せていました。

実際に環境修復につながる研究成果に期待も高まる

水環境システム研究室では、昨年から本格的に古川池の調査研究を行い、今年3月には地域の方々に向けた研究成果報告会を実施した際、品川市長にも出席いただきました。今後の対策をどうしていくか、住民の皆さまとともに検討するためのものでしたが、それをきっかけに手塚准教授がリーダーとなってプロジェクトを発足。古川池の環境保全を望む愛護会に参加いただき、地域連携プロジェクトとしてロハス工学センタープロジェクトに認定されました。手塚准教授は、「古川池の環境整備をテーマに、工学的に様々な技術を取り入れて研究を展開していくとともに、平時には、小さな子供から高齢者までが気軽に親しめ、非常時には、大雨の際は遊水地として、また地震・火災の際は避難所として活かせる場所にしたいと考えています。古川池での実証実験を地域の方々と協力していただきながら進めていきます。学生にとっても社会とつながり、直接地域のために貢献できることは、教育の面でも意義があると言えます」と話しています。中野教授は、これまで活動を振り返りながら「私たちの清掃活動によって、徳定川の上流はゴミが少なくなった一方で、手付かずだった古川池はゴミが堆積したままでした。古川池の清掃活動が始まったことで地域の関心も高まる中、さらに研究のフィールドとしての活用がスタートして、より一層関係が深まりました。地域を巻き込むことで、研究成果がそのまま環境修復につながれば、長年の活動が大きな実を結ぶことになるでしょう」と話しています。教員・学生・住民が一丸となって、ロハスの池プロジェクトを推進し、古川池が親水公園として蘇ることを期待しています。