完成度の高い新型ダミー開発技術が高く評価され
世界大会への出場を勝ち取る

 3⽉11⽇(月)、国土交通省主催による「2019年学⽣安全技術デザインコンペティション⽇本⼤会決勝(公益社団法⼈⾃動⾞技術会運営)」が行われ、機械工学科バイオメカニクス研究室(右から黒瀬寿和さん、下田剛さん〈平成30年度機械工学専攻博士前期課程修了〉、筒井克海さん、阿部浩也さん〈機械工学専攻博士前期課程1年〉、望月涼太さん〈機械工学科4年〉、教員アドバイザ:西本哲也教授)が最優秀賞を受賞しました。これにより、6月10日から13日までオランダのアイントホーフェンで開催される国際大会に日本代表として出場することも決定しました。本大会は、各国政府の道路交通政策担当者・自動車メーカー、大学などが集う自動車の安全技術に関する『ESV国際会議』のプログラムとして、2005年より開催されているイベントで、大学生・大学院生のチームが自動車安全を向上させる斬新なアイディアを競うものです。今年は応募した6チームの中から書類選考を通過した2チームと、昨年最優秀賞を獲得し書類審査を免除された2チームが参加。バイオメカニクス研究室は昨年も最優秀賞に輝いており、アドバンテージを活かして臨みました。提案したのは、「自動車乗員の腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発」。前年提案した腰椎・腹部傷害評価ダミーを改良し、実際の自動車衝突実験に使用できる精度を目指しました。各チームとも優れたアイディアを提案し接戦となりましたが、事故分析に裏付けされた課題抽出のアプローチ、プレゼンテーションの分かり易さと質疑応答の正確さ、またデモモデルの完成度の高さが評価され、バイオメカニクス研究室が見事最優秀賞に選ばれたのです。
 チームの皆さんの喜びの声とともに、発表した内容について詳しく紹介します。

自動車乗員の腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発 

 自動車の衝突安全性能を評価するために行われる衝突試験では、ダミーの人形を用いて乗員の被害状況を計測しています。より高精度な安全評価を行うために、ダミーに求められる重要な要素として次の3つが挙げられます。
①生体忠実度:ダミーの構造を人に近づける ⓶再現性:ダミーがヒトの傷害を忠実に再現できる ③反復性:繰り返し試験しても壊れない
 本研究室では、大学病院と共同で交通事故の実態調査を行っており、傷害と衝突の関係を調べた結果、シートベルト着用乗員の場合、第一腰椎と腹部に傷害が多くみられることが分かりました。そこで、前年のダミーを改良し、実際の衝突試験での腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発に挑戦しました。
 それぞれ担当を脊椎、腹部、計測機器に分けて 8月頃からダミーの製作に取り掛かりました。静的な荷重ではなく、より事故に近い動的な強い荷重がかかる計測方法を用いるために、動的試験でも壊れないダミーへの改良が必要でした。これまで脊椎骨の中心部にはゴムブロックを使っていましたが、強度の高い金属を使用。また、自転車用ゴムチューブで再現していた小腸は局所的に内圧が高くなる部分が発生するのを防ぐため、バイク用チューブを使うことで腹部全体の内圧を計測できるようにしました。さらに、荷重計を腰椎の上側だけでなく下側にも設置し、合計6箇所の荷重計測により腰椎に加わる力をより細かく分析しました。何度も実験し、失敗を繰り返しながら改良を重ね、半年かけてようやく精巧なダミーが完成。シートベルトが腹部をどのように圧迫しているか、下からの突き上げにより腰椎にどれだけの荷重がかかっているかなどを計測し、独自に開発したプログラムを使ってデータ解析を行いました。それにより、腰椎・腹部の傷害評価が可能であることを示しました。
 決勝大会のプレゼンテーションは筒井さんと黒瀬さんが担当し、デモンストレーションではそれぞれが担当したパーツについて説明を行いました。実態調査に基づく事故の分析から腹部や腰椎で起きている傷害メカニズムを明らかにするとともに、人体図をプリントしたTシャツを使って事故状況を分かり易く解説。実際に開発したダミーを使って計測したデータをグラフ化してパソコンで表示しました。提案内容だけでなく、想定外の質問にも明確に回答するなど、プレゼンテーションと質疑応答の対応力も光りました。アイディアの斬新さや発展性、実用性、スケールモデルを用いた技術的な裏付けや十分な検証等、総合的に評価されての受賞となりました。

日本代表としての誇りを胸に、世界大会での優勝を目指す

筒井さん(全体統括・腹部担当):全体を取りまとめる立場で、自分の担当以外も全て把握し、他のメンバーに指示したり、実験が上手くいかなかった時、どうするかを考えたりするのが大変でした。受賞できて大変嬉しく思うと同時に、いろいろな方に支えていただいたことに感謝しています。特に先輩方には多方面から指導していただきました。決勝大会の質疑応答も先輩のバックアップがなければ上手く対応できなかったと思います。世界大会は自分たちの力だけで乗り切らなくてはなりませんが、優勝を目標に頑張ります。

 

阿部さん(計測機器担当):パソコンで計測結果を表示するプログラムの作成を担当しました。全く知識のない状況から始めたので苦労しましたが、先輩に聞きながら何とか完成させることができました。今まで取り組んできたことが認められた喜びとともに、世界大会へのプレッシャーをひしひしと感じています。英語も少しずつ勉強しながら、6月に向けて準備を進めていきます。

 

 

望月さん(脊椎担当:写真左):当時はまだ3年生でしたから授業もあって大変でしたが、ESVチームに参加して勉強になることがたくさんありました。これまでは解答がある例題を解くだけの学習でしたが、自ら問題を見つけて解決していく難しさを経験し、考える力が身についたと思います。大会で切磋琢磨した4つの大学の代表として恥じないよう頑張りたいです。
※前回メンバーだった大槻脩さん(機械工学専攻博士前期課程2年:写真右)は、オランダで開催される国際大会に日本代表として参加します。

 これまで日本代表は、学生安全技術デザインコンペティション国際大会での優勝はありませんが、今回は日本初の優勝に大きな期待が寄せられています。世界を舞台に、バイオメカニクス研究室チームが大いに活躍してくれることを願っています。

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