光触媒の効率向上につながる研究が高く評価される
2025年11月28日(金)・29日(土)に日本大学工学部50周年記念館(ハットNE)とオンラインで行われた第44回固体・表面光化学討論会で、生命応用化学専攻博士前期課程2年の冨塚由貴さん(光エネルギー変換研究室/加藤隆二教授)が学生優秀講演賞を受賞しました。『電気化学的手法によるアナターゼ型酸化チタンの発光メカニズム解析』は、光触媒として使われている酸化チタンの効率を向上させるための研究です。光エネルギー変換研究室では、光エネルギー変換材料や人工光合成材料で起こっている光化学反応機構を解明し、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池、そして光触媒などの性能向上につなげるための研究を行っています。
冨塚さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。
―この度は学生優秀講演賞受賞、おめでとうございます。感想をお聞かせください。
ありがとうございます。ポスター発表の経験はありましたが、外部の学会での口頭発表は今回が初めてでした。討論会の最後に発表があったのですが、サイトで結果を確認したら自分の名前が一番上にあったんです。「まさか」という感じで、大変驚きました。表彰状を手にしたときは、やはり何事も形として評価していただけるのは嬉しいことだなと実感が湧きました。
―研究内容について、詳しく説明いただけますか。
私は「酸化チタン」という材料の発光現象を研究しています。酸化チタンは、身近なところでたくさん使われている素材です。例えば日焼け止めクリーム。紫外線を吸収して肌を守ってくれます。他にもガードレールの白い塗料などにも使われています。ウイルスや汚れを分解する働きもあるので光触媒としても使われています。現在、様々な場所で塗料などとして実用化されています。少し変わったものでは観葉植物の「光触媒コーティング」などもあります。反応物理化学として考えると、実は「汚れを分解する力」と「光る性質(発光)」は、光を吸収して変換して使う、という意味では根本的な原理が同じです。しかしこれまで、酸化チタンが「なぜ、どうやって光っているのか」という詳細なメカニズムは、まだ完全には解明されていません。この解明が新しい機能発現、効率向上に役に立つと思っています。
そこで私は、紫外線を当ててどのように発光するのか観測し、そのメカニズムを調べています。今回の研究では、酸化チタンに電子を蓄積させる実験を行いました。水の電気分解と似た原理を利用して酸化チタンの中に電子を貯めて、その量による発光挙動の変化を調べました。私たちが扱っているサンプルは市販の粉末試料で、普通の装置では測定できないほど弱い光です。そのため、研究室の先輩たちが築いてきた自作の装置をベースに、さらに自分の改良を加えた測定装置を使いました。予想としては、電子を貯めるほど光りやすくなると考えていたのですが、実際にはある一定量を超えると逆に光りにくくなるという予想に反した結果になりました。「なぜそうなるのか?」、その理由を現在詳しく解析しているところです。
―化学系の研究室なのに、実験装置を自作することもあるのですね。
化学には新しい材料をつくる研究もありますが、我々の研究室では材料の物性を明らかにするための研究を主としています。そのため、「サブナノ秒過渡吸収計測装置」や「時間分解マイクロ波光電導度計測装置」など、自作した測定装置が多々あります。今回も加藤先生とディスカッションし、測定の条件などを考えて分光装置を組み合わせたり、紫外線を当てる角度を微調整したり、自分にしかできない精密な測定環境を構築しました。他にはないオリジナルの装置を使って研究ができるというのは、この研究室の魅力でもあります。

―どのような点が評価されたと思われますか。
この研究の独創性が、評価していただけたポイントなのかなと思っています。実験の手法もオリジナリティがあるので、面白い研究だと思っていただけたのではと推測しています。全国からこの研究分野の専門的な研究者が集まっている討論会でしたから、鋭い質問も多く、自分の研究の足りない部分を指摘していただきました。議論を通して今後の研究課題や方向性が見えてきて、とても貴重な機会になりました。
―化学の道に進まれた理由をお聞かせください。
高校時代に化学の楽しさを知り、その分野の仕事に就きたいと思ったことがきっかけで、生命応用化学科に入りました。さらに化学を深く学びたいと思うとともに、学会参加や研究発表を通して自分の力を高めたいと考え、大学院に進学。光触媒に関しては、もともと興味を持っていた分野で、加藤先生の授業が面白かったこともあり、この研究室を選びました。研究は奥深く、物理化学や電気化学など幅広い知識が必要になるので、論文を読んだり、勉強することが多く大変ではありますが、その分、やりがいも感じます。
―将来の目標をお聞かせください。
就職先は、自分の専門である化学分野、特に計測・分析技術の知識を活かせる企業で、製薬の品質管理を行う分析系の職種に就くことができました。将来は、日本人として自国の発展に貢献できる人材になりたいと考えています。会社では周囲から信頼される存在を目指し、チームを引っ張るリーダーシップを発揮できるよう努力したいと思っています。そのためにも、これまでの研究で培った考える力と粘り強さを仕事に活かしていきたいと考えています。

