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【電気電子工学科】廃太陽光パネルガラスをリチウムイオン電池の電極材料に転換― 増加する廃パネル問題の解決に期待 ―


本大学工学部電気電子工学科の江口卓弥専任講師、千葉玲一上席研究員、福岡工業大学大学院の田島大輔教授、秋田大学大学院の安部勇輔助教、熊谷誠治教授らの研究グループは廃太陽光パネル(WSP)由来ガラス粉末をグラファイトと複合化し、熱処理によって焼結させることで、リチウムイオン電池(LIB)負極活物質として活用する技術を開発しました。WSPは約700℃で軟化するソーダ石灰ガラスであり、熱処理によりWSP粒をグラファイト粒子に結合させた複合構造を形成することで、比容量を319 mAh/gの活物質を開発しました。

 本成果は、今後大量廃棄が懸念される太陽光パネルガラスを高付加価値な電池材料へとアップサイクルできる可能性を示すものであり、持続可能な材料利用開発戦略として期待されます。

謝辞
 本研究の一部は、日本大学SDGsプロジェクト(課題番号24SDG02)、およびJSPS科研費(課題番号23K13319および25H00726)の助成を受けて実施されました。

発表論文

論文タイトル Fabrication of heat-treated waste solar panel glass/graphite composites as
negative electrode active materials for lithium-ion batteries
著者 Takuya Eguchi, Reiichi Chiba, Tashima Daisuke, Yusuke Abe & Seiji Kumagai
雑誌名 Journal of Materials Science
出版社Springer Nature
5年間のジャーナルインパクトファクター:4.3
一般材料分野雑誌の上位24%
(Elsevier社が提供するScopusのCiteScore基づく)
DOI https://doi.org/10.1007/s10853-026-12320-y

本件詳細
 太陽光発電は世界的に導入が進んでいますが、太陽光パネルの寿命は20~30年とされ、2025年までに約6,000~7,800万トンが廃棄されると予測されています。太陽光パネルは主にセル、フィルム、前面ガラス、バックシートで構成されており、シリコンや銀、銅などの金属(全体重量の11%未満)はリサイクルが進んでいます。しかし、パネル重量の約69~75%を占めるフロントガラスは経済的価値が低く、既存の板ガラスやガラス繊維市場でも受け入れが進んでいないのが現状です。そのため、廃太陽光パネルガラスの新たな用途開発は喫緊の課題であり、建築・土木材などへの応用研究が進められています。

 当該研究グループでは廃太陽光パネルガラスの蓄電材料への応用を試みています。本研究成果では、WSP由来ガラスをグラファイトと複合化し、LIBの負極活物質として活用する新たな手法を提案しました。活物質の作製過程に熱処理工程を導入することで、軟化点の低いWSPが焼結し、グラファイトと一体化した複合構造を形成することを確認しました。この焼結構造により、蓄電容量を向上させました。一方で、過度な高温処理はSiO2の形態変化やグラファイト結晶構造の劣化を引き起こし、比容量の低下につながることも明らかになりました。1200℃で熱処理した複合材料は、319mAh/gの比容量を示し、SiO2系活物質としては比較的高い性能を達成しました。ただし、従来の負極活物質であるグラファイトの容量には及ばず、実用化に向けてはさらなる容量向上が課題です。