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令和7年度化学系学協会東北大会において生命応用化学専攻博士前期課程1年の高木佳明さんが優秀ポスター賞を受賞しました

再生可能資源を活かして有用な材料開発へ
環境負荷を抑える製造プロセスの研究が高く評価される

9月6日(土)から7日(日)に行われた、令和7年度化学系学協会東北大会(山形大会)において、生命応用化学専攻博士前期課程1年の高木佳明さん(糖質生命化学研究室/小林厚志教授)が優秀ポスター賞を受賞しました。高木さんが発表した『Realizing Highly Efficient Polysaccharide Acetylation with Zinc Halide as
Solubilizer and Catalyst』は、「高分子化学/繊維化学」部門での受賞となります。再生可能な資源から繊維や高分子として使える材料を作るための新しい作製方法を提案したものです。糖質生命化学研究室では、糖質の特性を活用した化学的な研究を行うことで、産業の発展に貢献できる基盤技術の開発を進めています。

 高木さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

―優秀ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 2回目のポスター発表でしたが、修士1年で取れると思っていなかったので本当にびっくりしました。とても嬉しかったですし、これから様々な学会で発表していくうえで自信になりました。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では、セルロース(植物繊維)やでんぷんといった、身の回りにある再生可能な資源を有用な材料へと変換させるための研究を行っています。これらを新しい繊維や高分子材料として活用するには、一度材料を溶かし、化学反応(修飾)を施す必要があります。しかし、セルロースやでんぷんは、「溶けにくい」「反応しにくい」という性質を持っています。そのため、強力で過激な試薬を使う必要があり、環境負荷や安全性が大きな課題となっています。さらに、「溶かすための試薬」と「反応を助ける試薬」を別々に用意しなければならず、手間やコストがかかる点もデメリットでした。そこで考えたのが、「一つの試薬に二つの役割を持たせる」という手法です。溶解を助ける役割と、化学反応を促進する触媒としての役割を、一つの試薬で兼ねることができれば、工程を簡素化でき、コストや環境負荷の低減につながる可能性があります。本研究では、別々だった工程を一つに結びつけて、本来溶けないはずのセルロースを綺麗に溶かし、そのまま次の反応の触媒としても機能させるプロセスの構築を目指しました。

 着目したのが、ハロゲン化亜鉛です。多糖類に対して高い溶解能と触媒能を併せ持つハロゲン化亜鉛水溶液を利用すれば、従来の有機溶媒や環境負荷の高い試薬を用いずにアセチル化反応を実現できると考えました。これまでにも、溶けやすくする方法と反応を促進する方法はありましたが、これを組み合わせて一つの試薬で行う研究報告はなく、初めての試みです。ただし、水があるとアセチル化反応が進みにくいため、水を除去する必要がありました。本研究では、水を加熱せずに取り除ける凍結乾燥を用いて、その後、無水酢酸を加えることで、多糖を効率よくアセチル化する新しい方法を見出しました。

―どんなところが評価されたと思われますか。

 個々の技術自体は、これまでにも報告例がありましたが、それらを組み合わせることで新しい価値を生み出し、実証した点が今回の研究の新規性であり、評価された点だと思います。また、小林先生にご指導いただき、質問されることを想定して、あらかじめポスターに落とし込んでいましたから、回答に詰まるようなこともありませんでした。内容の理解度とプレゼンテーションの分かりやすさもポイントになっているのかなと思います。

―なぜ、生命応用化学を学ぼうと思われたのですか。

 高校の時から生物が好きだったので、生命応用化学科を選びました。学んでいくうちに化学系も面白いなと思うようになり、それで研究室を選ぶ時、植物由来の再生可能資源である糖質を使って新しい物質をつくるという、生物系と化学系の両面からアプローチできる研究に興味が湧き、この研究室を選びました。3年間は座学が中心で教科書から学ぶことが多かったのですが、研究は得られた専門知識を実践していくので、より深く身についていくのを肌で感じました。もともと実験が好きだったこともありますが、研究しているのが楽しくて、将来は研究職に就きたいという思いが強くなりました。より高度な専門知識を学び、研究職への道を拓くために大学院進学を決意しました。

 研究は楽しいだけではなく、失敗することもあります。でも、その失敗から学んだことを生かして成功に繋げていくのが、研究の醍醐味ですし、成功したときの達成感が何より魅力だと思います。

―今後の目標をお聞かせください。

 本研究に関しては、現行プロセスの更なる実験的深掘りとデータ拡充を行い、繊維や高分子材料作成などの用途に応用できるか検討したいと思っています。また、今後、口頭発表も含め、様々な学会での発表が増えてくるので、実験データの準備など資料をまとめておく作業も進めていきます。

―ありがとうございました。今後、益々活躍されることを期待しています。

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