最新情報

本学部にて『研究シーズマッチング交流会~地域×研究×ビジネスの共創~』が開催されました

地域課題対策や次世代産業創出につながる産官学連携を目指して

10月22日(水)、日本大学とみずほ銀行主催の『研究シーズマッチング交流会~地域×研究×ビジネスの共創~』が、工学部キャンパスにて開催されました。このイベントは産官学連携を推進することを目的にしたもので、工学部の若手研究者6名が「新材料」「デジタル技術(AI・ロボティクス)」「環境・資源・SDGs」「感性・認知心理」のキーワードを軸に、社会や地域の課題解決に向けたシーズを紹介する講演会と交流を深めるための名刺交換会を行いました。また、健康で持続可能な生活と社会を実現するために本学部が提唱している「ロハス工学」に関連する施設見学会も実施。開催にあたっては公益財団法人郡山地域テクノポリス推進機構及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構のご支援もあり、当日は地域課題の対策や次世代産業の創出に取り組んでいる多数の企業の方々にご参加いただきました。ビジネスのヒントや連携推進の一助となる研究者との新たな結節点につながる、大変有益な場になったようです。

「ロハス工学」を実践する最先端の研究施設を見学


 第一部のロハス工学施設見学会では、はじめに、工学研究所長兼ロハス工学センター長の岩城一郎教授が「ロハス工学のこれまでとこれから」について説明しました。

 2008年の「ロハスの家」研究プロジェクト開始から、「書籍『ロハス工学』」出版・改訂、そして2024年にプレオープンしたロハスの森「ホール」の特徴、これまでの歩みを紹介するとともに、今後は「工学の枠を超え、どこまでロハスを実践できるか」を課題に、日本大学の総合大学としてのスケールメリットを活かし、工学のみならず農林、医療、企業など他分野との融合で新たな学問体系の発展を目指していきたいと述べました。

 続いて、「ロハス工学」を実践する施設を見学していただきました。

 ロハスの森「ホール」では、建築学科の髙木義典研究員と園田駿希研究員が施設の特徴を紹介しました。本施設は県産材を用いた縦ログ構法で建設されており、レンガによる蓄熱、地下水を利用した空調設備、屋上緑化による水浄化システムなど、研究成果をさらに発展させた技術が導入されており、実証実験の場として活用されています。参加者からは使用されている具体的な材料や技術についての質問があり、関心の高さが窺えました。



 次に、土木工学科の中野和典教授が研究を進めている「ロハスのトイレ」を紹介。トイレ洗浄水を再生し廃棄物を減容して衛生的かつ安全に回収する持続可能なトイレ洗浄水循環システムで、災害などで電気や水道が止まる非常時にも使用できるトイレです。実際に3層のフィルターを通して汚水が洗浄され、不織布で廃棄物を巻き取る様子のデモンストレーションも行われ、その画期的なシステムに企業の方からも驚嘆の声が上がっていました。

6学科の若手研究者が研究シーズを紹介

 第2部では、本学部の若手研究者から各専門分野の多様な研究シーズについて講演が行われました。発表に先立ち、主催者である日本大学産官学連携知財センター長の兼板佳孝副学長よりご挨拶がありました。兼板センター長は産官学連携を通じた地域課題解決とネットワークを強化し、本会が企業との連携を深める機会になることを願っていると述べました。続いて登壇された、みずほ銀行東日本エリア長の阿部雅一氏は、地域課題の解決や次世代産業の創出に向け、大学の専門知識・研究成果・技術シーズがビジネスヒントになり、イノベーションの加速につながることに大いに期待を寄せていると述べました。



 講演会では6学科から若手研究者1名が登壇し、各専門分野の先進的なシーズについて紹介しました。

『多様なデータ融合によるモビリティ支援』
土木工学科 准教授 川崎 洋輔

“防災・減災”、“交通管制/ITS”、“維持管理”等の分野における多様なセンシングデータを融合した交通解析技術を紹介。

『人の認知心理モデルを応用した環境デザイン手法に関する研究』
建築学科 准教授 辻村 壮平

視覚・聴覚といった人の認知や感性をデータ化し、よりよい環境を構築するためのデザイン手法や実装された事例などを紹介。

『機械加工とLOHAS・SDGsの融合、そしてデジタルものづくりと感性』
機械工学科 准教授 嶋田 慶太

これまでの研究成果と竹を使った新たな複合材料の製造方法や環境配慮型材料の開発、レーザー照射加工技術等を紹介。

『地域の未利用資源の活用~福島県内の未利用資源から蓄電材料へ~』
電子工学科 専任講師 江口 卓弥

廃太陽光パネルガラスやバイオマスを用いたリチウム電池への応用や福島県内資源を活用した蓄電材料の開発について紹介。

『新規機能性材料の創製』
生命応用化学科 専任講師 市川 司

新規ケイ素含有機能性材料を用いた有機半導体や燃料電池、6Gの基板材料といった様々な材料開発について紹介。

『共生型ロボットとAIが拓く未来の暮らし』
情報工学科 助教 米澤 直晃

福島県の支援事業でもある、生成AI技術により発展させたエモーショナルなコミュニケーションロボットの開発について紹介。


 講演会閉会にあたり、根本修克工学部長がご挨拶されました。企業の皆様と本学部研究者との実りある情報交換から新たな連携が生まれ、混迷する現代社会や地域の課題解決につながるような次世代産業の創出へと発展することを切に願うと述べました。

 場所を移して行われた名刺交換会では、講演した若手研究者のほか、先端的な研究に従事する各学科の教授陣、郡山地域テクノポリス推進機構、福島イノベーション・コースト構想推進機構の方々も参加しました。参加した教員等は個別に研究の詳細について説明したり質問や相談などに応えました。有意義な情報交換の場となり、会場は活気に溢れていました。




 参加された企業の方は、「これまではなかなか触れ合う機会がなかったのですが、今日は直接先生方からいろいろお話を聞き、具体的にどんな研究を行っているのかを知ることができました」、「現在、共同研究を進めている先生以外の先生方とも何か連携できたらと思っています」、「改めて工学部の研究と自社の製品がどうマッチングできるかを考える機会になりました」と話しており、大変有意義な交流会になったようです。

 「自然と調和したロハスの森『ホール』を見学して感銘を受けました」という声も聞かれました。「これからの時代、人と自然が共生するために、環境に配慮した技術が求められている中で、まさにロハス工学は時代に適した取り組み」だと語り、工学部が推進する研究への期待も高まっているようでした。

 最後に、産官学連携知財センター副センタ―長の加藤浩教授がご挨拶され、「郡山地域は産学連携・研究が盛んな地域であり、発展するロハス工学と産官学連携の将来性が楽しみです」と述べ、引き続き金融機関へのサポートを願うとともに、参加者への感謝の言葉をもって、本会を締めくくりました。


 これまでにない、新たな共同研究、新規事業や技術創出、地域課題解決等につながる実りのある交流会になったことと存じます。この場をお借りしまして、ご参加いただきました企業の皆様ならびに本会開催にご支援いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。