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相内佑斗さん(生命応用化学専攻 D3)が日本学術振興会特別研究員(DC2)に採用されました


 この度、生命応用化学専攻博士後期課程3年の相内佑斗さん(環境化学工学研究室/児玉大輔教授指導)が、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)による令和7年度特別研究員(DC2)に採用されました。

 JSPS特別研究員制度は、優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的な研究に専念する機会を提供し、将来の学術研究を担う研究者の養成と確保を目的とした制度です。例年、全国から多数の応募があり、採用率は約20%前後とされており、極めて競争率の高い制度として知られています。

研究課題:「低粘性でCO2溶解性の高い深共融溶媒を決める因子の解明」

 相内さんの研究では、深共融溶媒(Deep Eutectic Solvents, DES)を対象に、CO2の分離・回収に適した溶媒の探索と、そのCO2吸収メカニズムの解明を目指しています。独自に構築した密度相関式を活用し、深共融溶媒のCO2溶解度および粘度に影響を与える因子を熱力学的観点から解明する、独創的なアプローチを採っています。

 従来の研究は、大気圧から2 MPa程度の限られた条件下での評価にとどまっていましたが、本研究では最大14 MPaまでの広範な圧力範囲にわたって、CO2溶解度、密度および粘度の精密な測定を実施します。得られたデータをもとに、

  • 内部圧:液体中の分子間の結びつきの強さを示す指標
  • 溶解度パラメータ:物質同士の溶けやすさを表す数値
  • 部分モル体積:溶質1モルが溶解した際の体積変化

といった物性との関係を体系的に解析し、深共融溶媒特有の水素結合などの分子間相互作用が物性に与える影響を、熱力学的に評価します。

 さらに本研究は、CO2溶解度の推算式の構築にもつながり、実験データが限られているプロセスシミュレーション分野への貢献が期待されます。将来的には、CO2以外の気体の分離や回収への応用も視野に入っており、持続可能な分離プロセス設計に資する基盤的研究として、学術的にも社会的にも大きな波及効果が見込まれます。

 このたびの採用は、相内さんの研究に対する日頃の努力と高い構想力が高く評価された結果であり、本学部としても大変誇らしい成果です。今後のさらなる研究の発展と活躍が期待されます。

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