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建築学科 3年の山口昂輝さんが第29回JIA東北建築学生賞において優秀賞を受賞しました

建築思想を表現し、都市の未来を問い直す設計が
高く評価される

 10月30日(木)、宮城県仙台市のせんだいメディアテークにて第29回JIA東北建築学生賞の公開審査会(公益社団法人日本建築家協会東北支部主催)が行われ、建築学科 3年の山口昂輝さん(建築設計研究室/髙橋岳志専任講師)の作品『都市に蠢く』が優秀賞を受賞しました。本審査会には12校(10大学1大学校1高専)13学科 から34作品の応募があり、それぞれの作品への公開ヒアリングの後、「コンセプトの導き方」「社会性・歴史性」「空間性・造形力」「表現力・対話力」などを軸に審査され、審査員の投票によって各賞が決定されました。山口さんの作品は3年次前学期の建築設計演習の授業課題で制作し、学内審査によって選出されたものです。本審査会では、将来の可能性にも期待が寄せられていました。

 山口さんの喜びの声とともに、作品についてお話を聞きました。

―優秀賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 最終的に僅差で2位になったので、悔しさはありますが、4年生と同じ土俵で評価していただけたことは素直に嬉しく思います。自分の思想をぶつけることはできた一方で、それを建築として表現し切る力がまだ足りないとも感じました。この「余白」を、これからの成長につなげたいです。

―応募作品『都市に蠢く』は、どんな主旨で計画したのですか。

 建築設計演習の授業課題は、「芸術家を一人選び、その人物を記念する施設」と「図書館」という二つの機能を併せ持つ建築を提案する、という内容でした。記念施設と図書館、この二つの機能をどう関係づけるかが問われました。私が選んだ芸術家は、建築家のザハ・ハディドです。ザハ・ハディドは、2015年の東京オリンピック新国立競技場の国際コンペで最初に選ばれた建築家です。ただ、その案はコストや工期、周辺環境との不調和などを理由に撤回されました。この「周囲の景観にそぐわないから拒まれた」という経緯から、いわゆるコンテクストの問題が根強く存在していたことに、強い関心を持ちました。私は東京出身で20年以上住んでいます。現代の東京には多くの魅力的な建築がある一方で、都市全体を俯瞰すると、高度経済成長期以降、変化はあるものの、均質な高層ビルが立ち並び、質的な多様性を欠いているように感じます。ザハ・ハディドの建築は非常に未来的で、日本にはあまりない表現をしています。こういった前衛的な建築が一つでも都市の中に生まれることで、それ自体が新しいコンテクストの基準となり、新たな都市像が広がっていくのではないかと考え、この建築計画に至りました。

―具体的な設計主旨を教えてください。

 計画地は東京・赤坂の芝生のある公園です。現地にも3回ほど行き、実際に公園がどう使われているのか、建築ができることによって空間がどのような影響を及ぼすのかを考えながら敷地調査を行い、計画しました。
 都市の憩いの場を残しつつ、その一部を深さ10メートルの断層のように切り取り、“サンクンコート”というパブリックスペースとしています。その両端の地中に、ザハ・ハディドを記念するミュージアムとライブラリーを配置し、決して地上には立ち上がりませんが、サンクンコートに面する都市の切断面から、蠢く建築が張り出しています。ここでは、かつて都市に拒絶された彼女の思想が地中という地上の表層に収まらない場所で蠢き、人々がその空間を歩くことで、思想の流れや知の循環を体験できます。そして、それが人々の思考へと昇華され、やがて都市全体へと波紋のように広がっていくことを意図しています。地中から都市の未来を動かす——そんな新たな都市空間を提案しました。

―この作品の特徴を教えてください。

 未来志向の建築というと、どうしても「上へ、上へ」と積み上げるイメージがあります。そこであえて、時間の積層を感じさせる「地下」に建築を沈めることで、思想そのものを際立たせたいと考えました。建物は地上には一切出ず、切断面から横方向にうごめくように存在しています。記念館には、ザハ・ハディドだけでなく、未来を志向する建築家たちの作品模型や資料を展示する空間を設けています。また、製図や模型制作ができるワークショップルームも併設しました。図書館は一般的な建築系図書を中心とした構成ですが、空間体験としては記念館と共通する思想を持たせています。「感じる」「学ぶ」「表現する」という知の循環を、この二つの建築で生み出すことが狙いです。

―審査会では、どのような点が評価されましたか。

 ザハ・ハディッドの建築思想を「前衛性」として再解釈し、未来への契機として提示した点が評価されたと思います。「あなたが考える都市の未来とは何か」「前衛性とは何か」と問われました。私は、前衛とは固定された形ではなく、「変化し続けること」そのものに価値があると考えています。5年後には最先端だったものも過去になる。だからこそ、都市が変化し続けていることを人々が感じ取れる、その動き自体が重要だと答えました。また、学内審査でもそうでしたが、「なぜ地下なのか」ということを聞かれました。地下にした理由は、対極的な空間に建築を置くことで未来志向の思想を際立たせる狙いがあると説明しました。提案を通して、都市に対する自分の考えをぶつけることはできた反面、模型の作り方や思想を建築として表現するといった技術的な部分が足りないことなど、いろいろ課題も見えてきました。今後の建築設計に活かしていきたいと思います。

―なぜ建築を学ぼうと思ったのですか。

 高校生のときは文系でしたが、将来の仕事を考えたとき、自分の好きなことを仕事にしたいと思ったんです。小さい頃から東京の高い建物の名前と高さを暗記するなど、建築を見るのが好きでした。その潜在的にあった“建築好き”を将来の仕事にするために、文系でも受けられる建築学科を探したところ、ここなら総合型選抜で受験できると知り、進学を決めました。やはり、好きなことを学べるのはいいな、と思います。こうして東京から離れることで、東京を俯瞰できる、いい機会にもなりました。

―今後の目標をお聞かせください。

 建築設計研究室に配属になりましたが、前学期の授業課題だったこの作品も、髙橋先生にご指導いただき、思想をしっかり設計に沁み込ませていくプロセスを学びました。人がまちを歩いていて、未来に向けて進化し続けていくような、うごめいているようなものを感じられるような都市を設計したい、卒業設計に向けてもそういうテーマで取り組みたいと考えています。将来は都市をデザインするような仕事に就きたいので、海外で建築を学んだり、海外の設計事務所で働くことも視野に入れています。 ヨーロッパやアメリカに観光で行ったことがありますが、海外も見つつ、東京を俯瞰し、比較する意味でもいい経験になりました。
 学生のキャリアの中で、‎都市を取り巻く人や自然、環境にスポットした多角的な設計にも取り組み、都市全体の未来を考えていきたいと思っていますし、コンペにも挑戦したいですね。
 今後は、国内外の都市や建築に触れながら、人が歩くだけで都市の変化や可能性を感じ取れるような建築・都市空間を提案できる設計者を目指していきたいです。

―ありがとうございます。今後の活躍を期待しています。

 

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