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第86回応用物理学会秋季学術講演会(全国大会)において、電気電子工学専攻2年の濱崎妙子さんがPoster Awardを受賞しました

安全な情報通信を可能にするための
光量子メモリの開発研究が高く評価される

86回応用物理学会秋季学術講演会(公益社団法人応用物理学会主催)において、電気電子工学専攻博士前期課程2年の濱崎妙子さん(光通信デバイス研究室/俵毅彦教授)がPoster Awardを受賞しました。応用物理学会は約2万人の会員数を誇る日本有数の学会で、春と秋に学術講演会を開催しています。9月7日から10日に行われた秋季学術講演会には約6,500人が参加。983件のポスター発表の中からPoster Awardに選ばれたのは18件のみでした。濱崎さんが発表した『時間分解スペクトルホールバーニング法による167Er超微細構造のエネルギー緩和時間測定』は光量子メモリに関する研究で、将来性を高く評価されました。

 今春から、夢だった音響メーカーに就職する濱崎さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

―Poster Award受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 大きな全国大会での発表は今回が2回目です。講演会後、少し期待したりしましたが、まさか本当に選ばれるとは思っていなかったので、11月に受賞者が発表になった時はとても驚きました。以前、別の学会で発表した際には学生奨励賞をいただきましたが、「もしかしたら、まぐれだったのかも」という不安がどこかにありました。その研究をさらに発展させた内容でポスター発表を行い、この大きな学会で認められたことで、「自分のやってきたことは間違っていなかった」と自信を持つことができました。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 近年、広域量子情報通信ネットワークの実現に向けた研究が盛んに行われています。広域量子情報通信ネットワークとは、状態の重ね合わせや量子もつれといった量子特有のスピン状態を利用することで、秘匿性の高い通信を可能にしたものです。しかし、情報を運ぶ光子は約200kmで弱くなってしまうため、長距離通信には途中で信号を保存・再送する「量子中継器」が不可欠になります。

 その中核となるのが、光の量子状態を一時的に保存できる光量子メモリです。光量子メモリの材料は固体材料で、長いコヒーレンス(メモリ)時間や通信波長帯(~1.5 μm)でアクセスが可能であることが求められます。そこで着目したのが、固体であり希土類の中で唯一通信波長帯での光アクセス可能な167Er(エルビウム同位体)です。本研究では、167Er3+:Y2SiO5(167Er:YSO)結晶の電子状態の特性(ダイナミクス)を解明することを目的に実験を行いました。

 測定方法として、特定のエネルギー準位の寿命や緩和過程をホールの時間変化から解析する分光法「時間分解スペクトルホールバーニング(TR-SHB)法」を用いました。その結果、結晶中の電子状態の緩和時間を高精度に測定することができました。これまでの単一点測定から複数箇所・広範囲測定へ拡張し、比較検討も可能になったことが、この研究の大きなポイントです。

―どんなところが評価されたと思われますか。

 新たな光量子メモリの材料を使い、それを非常に精密に評価したことが、優れた研究として認められたのかなと思います。この学会は専門性の高い研究者が多く、発表の時には鋭い質問も多々ありましたが、質問を想定してiPadに補足資料を作っておいたので、スムーズに答えることができました。そうしたプレゼンテーションの面でも評価いただけたのかもしれません。質問に応えるのに無我夢中でしたが、口頭発表とは違い逆質問もできるので、有益なディスカッションの場になり、私自身も大変勉強になりました。

 今後は、時間的・空間的にどう変動するか詳細なポピュレーションダイナミクスの評価や、より精密に測定するためにフォトンエコー法を用いたコヒーレンス時間の測定を行い、その結果を修士論文にまとめたいと思います。

―大学院修了後は音響メーカーに就職されるそうですね。

 はい。実は、私は大の音楽好きで、小学1年生からピアノを、中学から大学まで吹奏楽部でパーカッションを続けてきました。将来は「音楽の力で人々を支えたい」という漠然とした夢があり、私が携わるとしたら電子楽器の開発かなと思い、音響系の就職先はYAMAHA一本に絞って考えていたんです。修士1年次の夏のインターン面接には落ちてしまったんですが、秋に現地で行われた会社説明会に参加した際、業務用のデジタルミキサーの展示ブースで機器の中を見たら、高密度な電子基板でできていて、私が今まで学んできた電気電子工学そのものだということに気づきました。それで冬のインターンではミキサー部門に絞って受けたら採用になり、2週間の実地研修に参加することができました。その後は自分のやるべき道が定まったことで、時間は少しかかりましたが、希望の就職を叶えることができました。

―学部・大学院を通じ6年間工学部で学んできて、いかがでしたか。

 やはり、光通信デバイス研究室での3年間が充実していたと感じています。音も光も波なので、この先、研究してきたことも活かせると思います。実はYAMAHAに就職したいと思っていたので、大学院は音楽系の研究室にすべきか悩んだこともありましたが、倍率も非常に高い難関企業に採用いただけたのは、他の人とは違う電気電子工学の知識を活かして音響分野に貢献できるという点が決め手になっていると思います。もともと大学院に進学しようと思ったきっかけが、俵先生のアドバイスからだったので、俵先生に出会えたことが一番良かったと思っています。ご指導のおかげで、学会で賞をいただいたり、夢だった音楽に関わる企業への就職を掴みとることができました。俵先生には心より感謝しております。

―今後の目標をお聞かせください。

 将来の目標は、世界中の人々を音楽で救うことです。震災を経験して、私自身、音楽に救われました。世界中のライブや音楽現場を支えるミキサー開発に携わり、様々な困難に直面する人たちに、心に響く素晴らしい音楽を届けていきたいと思います。

―ありがとうございました。今後、益々活躍されることを期待しています。

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