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土木工学専攻2年の髙橋遼太朗さんが、第36回日本道路会議で奨励賞を受賞しました

「環境に優しく、強い」道路舗装の未来を拓く、バイオマスプラスチックを利用したアスファルトの研究が高く評価される

36回日本道路会議(公益社団法人日本道路協会主催)において、土木工学専攻博士前期課程2年の髙橋遼太朗さん(道路工学研究室/前島拓准教授)が奨励賞を受賞しました。この会議は2年に一度開催される貴重な機会で、奨励賞は35歳以下の若手研究者を対象とし発表者の1割のみが受賞できる狭き門です。髙橋さんが発表した『非食用米由来バイオマスプラスチックを利用した高耐久アスファルト混合物の開発』は産官学連携による研究成果であり、将来性と発展性が期待できる研究として高く評価されました。

 髙橋さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―この度の奨励賞受賞、おめでとうございます!まずは率直な感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。正直なところ、賞をいただけるとは全く思っていませんでした。この会議は2年に一度しか開催されない非常に権威のあるもので、受賞できるのは発表者全体の約1割程度と聞いていましたし、指導教員の前島先生からも「賞を狙うのではなく、自分の成長のために全力で発表してきなさい」と送り出されていたんです。会場は東京の麹町、国会議事堂にも近い都市センターホテルで、独特の緊張感の中で口頭発表を終えたのですが、質疑応答では厳しい質問もいただき、自分の中では「30点」くらいの出来だと思っていました。でも、受賞者一覧が掲示板で発表され、自分の名前があったのを見て、本当に驚きました。

―今回の研究内容について、詳しく説明いただけますか。

 簡単に言うと、食用に適さない古くなったお米などを原料としたバイオマスプラスチック「ライスレジン®」を、道路のアスファルト混合物に添加剤として混ぜる研究です。お米に着目した背景には、福島県の復興支援があります。東日本大震災後、福島県内では風評被害によって、作っても食べてもらえないお米や、耕作放棄地となってしまった田んぼが課題となっていました。それらを「食べるため」ではなく「工業製品の材料」として活用することで、農業の経済循環を支えようという目的がありました。さらに、植物は成長過程でCO2を吸収・固定化するため、道路舗装のカーボンニュートラル実現にも大きく貢献できます。日本のCO2排出量の約18%が道路交通関連と言われる中で、これは非常に大きな意味を持ちます。また、研究・開発が活発化する中、アスファルトの耐久性が向上することも明らかになってきています。

 本研究では、非食用米由来バイオマスプラスチックの分量を変えてアスファルトに混合した供試体をつくり、どの程度の割合で混ぜれば道路としての性能が向上するのか、最適な添加量について検証しました。非食用米プラスチックにはポリエチレン(PE)に非食用米50%含有した50-PEとポリプロピレン(PP)に非食用米70%含有した70-PPがあり、予備実験の結果、適用性の高い50-PEを使って本試験を行いました。

 アスファルトは、温度が下がると固まってしまい「締め固め」が難しくなるという特性があります。プラスチックを入れすぎると施工性が悪くなってしまう一方で、CO2の吸収や耐久性を高めるためには一定量を入れたい。この絶妙なバランスを、実際の施工現場を想定した室内実験で何度も検証しました。結果、ポリエチレン系のプラスチックを10%から15%程度添加することで、水や油(ガソリン等)に対する抵抗性が増し、ひび割れやわだちができにくい、耐久性の高い舗装ができることが分かりました。一度道路をつくったら、これまでよりも長く使い続けられる。これもまた、メンテナンス頻度を減らすという点での低炭素化につながります。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 道路の低炭素化により環境負荷を軽減するバイオマスプラスチックの研究であると同時に、実装する際の施工に適用するかどうかも含めて検証している点で、独自性や将来性があると評価されたかなと思います。パワーポイントの資料を工夫していた点も少しだけ加点があったかもしれません。本研究は大林道路株式会社様、株式会社ライスレジン様、国立研究開発法人土木研究所様との産官学連携で行っています。実験用の供試体を作ってくださった大林道路様、バイオマスプラスチックを開発しているライスレジン様、そして、私の代わりに何度も出張へ行き現場で汗を流してくれた後輩や研究室の仲間の協力がなければ、このデータは集まりませんでした。私はこの研究において「代表して発表した」に過ぎず、質疑応答でうまく答えられず悔しい思いもしました。この賞はチーム全員で勝ち取ったものだと感謝しています。

―なぜ土木の世界に進もうと思ったのですか。

 中学生の頃から地理や地図を見るのが好きでした。最初は「測量の仕事がしたい」と思ってこの分野に入りましたが、大学での講義や岩城先生、前島先生との出会いを通じて、東北の厳しい環境下で使われるコンクリートやアスファルトといった構造物の維持管理に興味が移っていきました。今、道路業界でも低炭素化や環境にやさしい舗装というものが大きなプロジェクトとして動いています。その一端に携われることに大変やりがいを感じています。また、大学院での2年間で、専門知識だけでなく、かつて自分に足りなかったコミュニケーション能力やプレゼン能力も鍛えられて、ご指導いただいた前島先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

―今後の目標についてお聞かせください。

 研究に関しては、すでに試験施工は完了しており、その成果を土木学会論文集へ投稿し、2026年3月に掲載されることが決まっています。なぜ耐久性が向上するのかという物理的・化学的な詳細メカニズムの解明や、現場での耐久性評価を追加検証した結果をまとめ、私の修士論文の集大成として投稿したものです。今後は、実際の道路で実装までされることが、この研究の最終目標になります。

 大学院修了後は、国土交通省東北地方整備局に入省します。私自身の目標は、当たり前の日常を支える道路インフラを確実に維持管理し、次世代につなげていくこと。東北は災害が多い地域です。災害が発生しても機能し続ける「強いインフラ」を整備することで、地域の安全を守るプロフェッショナルになりたいと考えています。

―ありがとうございます。今後の益々活躍されることを期待しています。

 

1月28日(水)に、本研究の成果である非食用米プラスチックを用いたアスファルト混合物の試験施工を実施しました。

この様子は各報道メディアにも取り上げられています。

福島民報

https://www.minyu-net.com/news/detail/2026012907312945535

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC285SU0Y6A120C2000000/

日刊工業新聞

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00772245

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