最新情報

情報工学専攻 卯木優大さんが『技育展2 0 2 4』で企業賞を受賞しました

物理的な鍵とデジタル技術を組み合わせた革新的な作品が高く評価される

 エンジニアを目指す学生のための、国内最大規模ピッチコンテスト「技育展」(主催:株式会社サポーターズ)において、情報工学専攻博士前期課程2年の卯木優大さん(情報ネットワーキング研究室/見越大樹准教授)が企業賞を受賞しました。アウトプットの促進を目的としたこのコンテストは、IT技術を用いた作品であれば、アプリケーションでもロボットでも何でも応募可能で、非常にハイレベルなプロダクトが集まることで知られています。受賞作品「自転車用ハイブリッド・スマートロック」は予選1回戦、2回戦を経て、36チームによる決勝大会へと進み、見事企業賞に輝きました。2020年度から3年連続で出場し、最優秀賞も2度受賞してきた卯木さん。大学院修了を目前に、学生生活最後の出場となった今回の受賞の喜びの声とともに、作品について詳しくお話を聞きしました。

―企業賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 学生生活最後ですし、ここでチャレンジしないと後悔するな、ということもあって出場を決めました。短期集中で仕上げていったので、感無量と言いたいところなのですが、いまだに実感が湧ききっていないような、今になってようやく湧いてきたような感じです。

―作品について、詳しく説明いただけますか。

 一言でいうと、自転車用のスマートロック(電子ロック)です。これは物理的な鍵とデジタル技術を組み合わせたハイブリッドデバイスで、盗難防止だけでなく、画像通知システムによって盗難時の追跡機能も備えています。自分自身がサイクリストということもあり、手をかけた高価な愛車を盗難のリスクから守りたい、ということから生まれました。これまでは二重ロックや重いチェーンロックといった物理的に鍵の強度を上げる方向だった盗難対策を、デジタルを組み合わせて三段構えで守ろうというコンセプトで製作しています。

  • 普段は内蔵ワイヤーロックと振動センサで盗難予防
  • 盗難後もGPSにより追跡
  • 破壊されてもカメラで証拠を確保し、モバイル回線で直接所有者へ


 乗車時に邪魔にならないよう、ドリンクホルダーに設置できる最大限の小型高密度で設計したプロトタイプを作成。SIMカードを内蔵し、Wi-Fi環境がなくても写真を送信できる機能や、物理的な切断を検知するセンサなどを備え、指紋認証によるロック解除機能によって使用者の利便性を高めています。

 将来的には同人ハードのような形での製品化を検討しています。多くのサイクリストが安心してライディングを楽しめるように、全機能の完璧な連携とバッテリーの長寿命化といった改良を重ねる予定です。

―どのような点が評価されたのでしょうか。

 企業賞ということで、実用化が近いという点は高く評価されたようです。そういった講評も頂きましたし、会場でもたくさんのフィードバックをいただきました。盗まれないことだけに重点を置くのではなく、盗まれてしまったときにどうするか、まで考えられていることが防犯・盗難対策としての本質を突いているというご意見もありました。

―この経験は今後にも繋がりますね。

 実はアイデア自体は学部4年のころから温めていたものです。情報工学応用演習という授業の中でIoTの組み込みシステムを学ぶ機会がありまして、その時にこの作品の原型になるものを作っていました。これを眠らせてしまうのは惜しいなという気持ちもありましたので、過去作の供養といいますか、ブラッシュアップして完成させました。

 アイデアから実際に作ってみて、できたものにたくさんの人からフィードバックをもらって改良していく、というものづくりの基本的な流れを一通り経験できたということになります。授業で習ったことからそれを活用する、評価を受けるという点で実社会でのものづくりのサイクルに近づいていくので、改めて今後に活きるものは大きいと感じています。

―将来への展望をお聞かせください。

 修了後は富士通(株)へ就職します。電子工学を学んでいた高校生のころにITの面白さに触れ、興味の赴くまま多くを学んできました。ITパスポートを取得し、その後基本情報技術者、応用情報技術者と段階的に取得。大学院に進んでからも、より高度な学びを深めつつ、個人事業主としてWebアプリケーション開発に携わってきました。自由に挑戦できる環境を与えてくれた見越先生に大変感謝しています。こうした経験を基に、業界全体の変革を進める企業で、大きな挑戦の一翼を担いたいと考えて就活にも取り組みました。エンジニアとしての技術力を磨きつつ、開発プロセスやプロジェクト運営への理解を深め、エンジニアが最大限の力を発揮できる環境づくりに貢献していきたいです。技術とビジネスの両面から開発をリードできる存在になり、IT業界全体がより良いプロダクトを生み出せる環境を作ることが目標です。

―後輩へのメッセージをお願いします。

 コンテストやハッカソンにチャレンジすることで、学びが形になっていく経験ができます。研究や論文もとても大切ですが、自分の作品に周りからフィードバックをもらって改良していく中で得るものは大きいと感じてきました。研究だけでなく、実践的な経験を積みながら、自分の興味やスキルを伸ばすことができた学生生活は、何よりも貴重な時間だったと感じています。受け身にならず、自ら動いてみてください。きっとチャンスをつかめると思います。

―ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしています。

「技育展2024」大会サイトはこちらから

卯木さんのプレゼンテーションの動画はこちらから