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建築学科の浦部智義教授と建築計画研究室が、復興に資する2つの建築デザインがそれぞれ賞を受賞しました。

地域の日常にも寄与する2つの復興建築デザインが、それぞれ高く評価される(復興設計賞と福島県建築文化賞)

 復興設計賞を受賞した葛尾村復興交流館あぜりあ

 この度、浦部智義教授とその研究室(建築計画研究室)が計画・設計に携わった葛尾村復興交流館あぜりあが2023年12月に『第5回復興設計賞』、スマート・ウェルネス・タウン・ペップ・モトマチが2024年1月『第39回福島県建築文化賞復興賞』をそれぞれ受賞しました。共に、実作の建築を対象に現地審査を経て表彰するもので栄えある受賞となりました。

福島県建築文化賞復興賞を受賞したスマート・ウェルネス・タウン・ペップ・モトマチの菊池医院棟

10年以上の研究室の復興への取り組みは、「地域の日常に役立ってこそ」が原動力

仮設住宅としての計画・設計や移設再利用も数多く実践した、ログハウス型木造仮設住宅

 浦部教授とその研究室では、2011年3月の東日本大震災以降、ログハウス型木造仮設住宅の建設からはじまり、建築やまちづくり等を通して、被災地はもとより福島県の復興に資する活動を地域の日常に役立つことも意識しながら、10年以上取り組んで来ました。今回の受賞は、そういった活動の成果の一部として、また、復興と日常の境目があいまいになりつつある現在、これらの建築が地域の日常にも大きく寄与する、といった側面が高く評価されての受賞でもあります。

前例のない建築を、みんなで考え・つくり・使う

当初の想定にはなかった、あぜりあの多目的
スペースの利用風景(舞台芸術鑑賞)

 「葛尾村復興交流館あぜりあ」は、特に、前例のない建築の種別である「復興交流館」をつくるということで、建築主である自治体はじめプロジェクト関係者全員が手探りでのスタートでした。予め決められた機能だけでなく、短期的に或いは中・長期的に見て復興(それは地域の日常も含む)の役に立つ機能や空間を設えるという、大変難しいテーマでした。ですので、計画段階から関係者が一堂に会したワークショップを何度も繰り返しました。みんなで知恵を絞りだしたプロセスやその結果を、多面的に評価して頂いたことで、関係者みんなで喜びを分かち合えました。

開館後に行われた、学生さんも参加した、
あぜりあの家具づくりワークショップ風景

 施設利用がはじまって暫くして、運営が本格化した現在も、引き続き関係者間で協力しながら、少しずつ機能の追加や変更など、改善しつづけている点も一定規模以上の施設建築としては特異ですが、それも評価につながったと言えるかも知れません。みんなに継続して使ってもらえ、復興にも日常にも役立つ建築になるには、そう言った工夫は必要なことだと言えるでしょう。

郡山のまちなかで、復興にも資する建築を

まちとつながる医院の待合(SWTPM)

 「スマート・ウェルネス・タウン・ペップ・モトマチ(SWTPM)」は、郡山市のまちなかにある小児科の医院の建て替えと薬局を柱としたプロジェクトですが、本学の教育・研究上のコンセプトである、健康で持続可能な暮らしに工学的にアプローチする「ロハス工学」にご共感を賜った、医院の菊池信太郎院長が日本大学工学部にお声がけ頂いたことから、スタートしたものでした。

移設再利用したログを磨く学生(SWTPM)

 福島県の交通の要衝で経済的中心といえる郡山市のまちなかに、将来を担う子ども達と中心市街地を同時に元気づける建築をということで、このプロジェクトも従来にない、例えば、「医療施設らしくない建築」、「ハード的にも復興に資する建築」などを関係者で議論しながら進めました。結果的に、将来的に地域でより重要となる県産材利用や新しい木構法を使いながら、まちなかでも外から木肌感が十分に味わえる建築、また、東日本大震災直後に建設されたログハウス型仮設住宅を移設再利用した薬局など、を具現化するに至りました。

左:菊池信太郎院長、左から2番目:滑田崇志氏(はりゅうウッドスタジオ)、右:陰山正弘社長(陰山建設)、
右から2番目:浦部智義教授

 施設がオープンした後は、医療施設らしくない診療所やSWTPMの敷地では、郡山の子ども達やまちなかを元気にするイベント等も行われ、まさに、健康で持続可能な暮らしをサポートする地域の日常に開かれた施設として機能しています。結果的に、その後の地域の子ども達の健やかな成長も大きな復興貢献といえ、ハード・ソフトともに地域の日常生活及びふくしまの復興にも資すると評価して頂いたのではないでしょうか。

 1月に行われた受賞式では、関係者が久しぶりに一同に会して、今までの取り組みを振り返ると共に、この受賞を励みに、今度の活動についても色々と話し合えました。

ふくしまにある工学部だからこそ

かつてキャンパス内に建ち、工学部の研究発信の
象徴の一つであった解体前の「ロハスの家3号」

 「復興交流館あぜりあ」は、大学等の復興知を活用した福島イノベーション・コースト構想促進事業(復興知イノベ)の葛尾村での活動拠点でもあります(代表:浦部教授)。その事業では、「産学官民の連携による『ロハスコミュニティ』の構築と実装」と題して、日本大学工学部と自治体との協定に従い、本学が掲げる「ロハス工学」に基づき、産学官民の連携による健全で持続可能な地域づくりを目指すものです。

 

2つのプロジェクトを経て、キャンパス内で建築
がはじまった完成間近の「ロハス工学センター棟」

 また、先にあった様に、「スマート・ウェルネス・タウン・ペップ・モトマチ」は、工学部の教育・研究のコンセプトである「ロハス工学」に、ご興味を持って頂いたことが契機となって、郡山市内のまちなかで実施されたプロジェクトです。

 これらは共に、福島県郡山市に拠点を持ち、「ロハス工学」のコンセプトを掲げた工学部だからこそ、その過程で学生さんも数多く参加して実現した、地域の復興や日常に資するプロジェクトだと思います。今後も地域に期待され、地域に開かれた工学部を目指すとして、現在、研究室も参画している「ロハスの家群跡地再生プロジェクト」の様に、求められていることを意識して時に姿を変えながら、地域と連携できるチャンネルを多様に持つことが、より重要になると考えています。

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