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電気電子工学専攻博士後期課程2年の鈴木静華さんの論文が「The Journal of Physical Chemistry C」に採用されました

蛍光体材料の発光特性の向上に寄与する
異分野融合による共同研究の成果が高く評価される

左から)加藤隆二教授、鈴木静華さん、髙橋竜太准教授

 この度、電気電子工学専攻博士後期課程2年の鈴木静華さん(薄膜機能材料研究室/髙橋竜太准教授)の論文『Structural Defect Effect on the Concentration Quenching of TbxY2‒xO3 Phosphor Thin Films』が、「TheJournal of Physical Chemistry C」に採用され、一部の図がSupplemental Coverに掲載されました。本論文は、生命応用化学科の加藤隆二教授(光エネルギー変換研究室)との共同研究によるもので、蛍光体材料の発光特性の向上に寄与する研究として高く評価されています。

 鈴木さんの喜びの声と研究について詳しくお話を聞きました。

―論文の採用とSupplemental Coverの掲載、おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 論文が採用されたのは2回目ですが、表紙に採用されたのは初めてでしたので、大変嬉しかったです。論文が採用されたのも、髙橋先生や共同研究者である加藤先生のご指導のおかげです。大変感謝しております。今後の研究活動への励みにしていきたいと思います。

―論文の内容を詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では、LED照明や液晶ディスプレイなどに使われる蛍光体をより効率よく発光させるようなプロセスの開発に取り組んでいます。本研究では、真空度が高い条件下で酸化物の高品質な薄膜結晶を合成できる、コンビナトリアルパルスレーザー蒸着装置(PLD)を使用して実験を行い、TbxY2‒xO3蛍光体薄膜の発光特性について解析しました。薄膜を蒸着させる際、通常は酸素を用いますが、酸素とヘリウムガスを使用することで、結晶の欠陥が少なくなり、結果、緑色の発光強度が強くなり蛍光特性の改善が見られました。

TbxY2‒xO3蛍光体薄膜の消光原因をより詳しく調べるために、蛍光寿命測定を行いました。この実験には、加藤先生の研究室で独自に開発した時間分解蛍光分光計を使っています。私たちの研究室は高精度な薄膜生成のプロセスを主に研究していますが、加藤先生の研究室では発光特性の測定を主に行っているので、連携して研究を進めることで多角的な視点から論究できるメリットがあります。簡単に言えば、私たちが上手に料理をしたものを加藤先生が味見して、もう少し辛くしたほうが美味しくなるとか、甘味を足すとコクが出るとかアドバイスしてくださる、そんなイメージでしょうか。加藤先生の研究室の装置を使って測定することで、これまでになかった多くの有用なデータを取得することができました。発光消光の 2 つの考えられる理由として、構造欠陥によって引き起こされる動的消光と隣接する Tbイオンの平均距離が短いことによって引き起こされる静的消光であることもわかりました。それらをまとめたものが、本論文の内容になります。

―共同研究のきっかけは大学院の授業だったそうですが。

 大学院博士前期課程1年次の電気電子工学特別講義の授業です。この授業では、研究テーマに直接的・間接的に関連した研究や研究実績を持つ大学院の先生方から講義を受け、専攻分野の専門知識に留まらず関連分野を含めた幅広い知識の修得を目指します。講義では、生命応用化学専攻の加藤先生をはじめ、情報工学専攻やその他の分野の先生方にいろいろご教授いただきました。例えばリンゴを赤いと視るか、丸いと視るかというように専門分野や各研究室によって重視する点やものの見方が違うということを学びました。加藤先生は有機薄膜太陽電池などナノテク材料の研究をされており、私たちと近い研究分野でしたので、その後共同研究に発展していきました。実際に研究室に伺い、加藤先生より装置の操作方法をレクチャーいただき、取得したデータについて議論もさせていただきました。データを多角的に分析するようになったので、自分自身にとっても大変貴重な経験になっています。

―論文の内容について、どんな点が評価されたと思われますか。

  1回の実験で、TbxY2‒xO3の濃度がゼロから25%に変化する膜を作成し、その膜を濃度ごとに蛍光寿命測定をして消光の原因を細かく調べたことが評価されていると思います。発光特性に対する構造欠陥の影響を調査することにより、蛍光体材料の主要な材料パラメータについての洞察が得られました。本研究が発光特性を向上させるための手法につながると期待されていると感じます。共同研究により、それぞれの得意分野を活かして、異分野融合することで相乗効果をもたらした結果だと思います。

―今後の目標についてお聞かせください。

 発光強度が弱くなり、消光する原因については未だ明確になっていません。本研究では、1回の実験で多くのデータが取れるような薄膜を作成しているので、今後はデータ量が多い利点を活かしてAIを取り入れ、実験と組み合わせて研究を進めていきたいと考えています。将来は研究の道に進みたいと思っているので、しっかり成果を出していけるよう研究に取り組んでいきます。

―ありがとうございました。今後益々活躍されますことを期待しています。

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