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情報工学専攻2年の齋藤優さんが⽇本森林学会学⽣ポスター賞を受賞しました

森林管理システムに役立つ森林資源量を把握するための研究が高く評価される

 『第133回日本森林学会大会』(一般社団法人日本森林学会主催)が3月27日(日)から29日(火)にオンラインで開催され、博士前期課程情報工学専攻2年の齋藤優さん(生産システム工学研究室/指導教員:溝口知広准教授)が学⽣ポスター賞(経営部門)を受賞しました。この賞は、学生会員の研究の奨励を目的として、日本森林学会大会で優れたポスター発表を行った学生会員に授与されるもので、受賞できるのはポスター数の約10分の1程度です。チャットによる質疑応答までを審査・選考の対象としています。国公立大学の学生が受賞を占める中でポスター賞に輝いたことは価値があります。齋藤さんが発表した『UAV搭載レーザスキャナによる森林計測点群中の樹幹抽出⼿法』は、福島県林業研究センターと株式会社大和田測量設計との共同プロジェクトで進めている、令和3 年度農林水産分野の先端技術展開事業のうち研究開発委託事業(3D スキャナ等搭載ドローンと深層学習を活用した帰還困難区域等の森林資源利用システムの開発)の研究成果によるものです。
齋藤さんの喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きしました。

ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

学外で発表するのは初めてのことで、「賞が取れたらいいな」という思いはありましたが、実際に受賞の知らせをいただいた時は驚きました。大会最終日に受賞通達のメールがきたので、慌ててスーツに着替えてオンライン表彰式に出席しました。これまで取り組んできた研究が世の中に役立つものだと認められたとしたら、大変嬉しく思います。溝口先生からポスターのレイアウトや発表についてのアドバイスをいただいたおかげで、受賞できたと思います。また、共同研究者の福島林業研究センター様や大和田測量設計様にも深く感謝しております。

研究について詳しく説明いただけますか。

 2011 年の東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、森林施業が停滞している旧避難指示区域の森林において、作業員の被曝を低減し効率的に森林施業を実施するためには、森林資源情報を現地踏査以外の方法で入手する必要があります。そのため、高密度レーザスキャナ等を搭載可能な無人航空機(UAV)の利用が有効だと考えられます。特にレーザスキャナにより取得した高密度点群データからは、各樹木の位置に加え、樹木の高さや幹の太さなどの資源情報を高精度に算出することが可能です。本研究では、計測範囲内に存在する数千本にも及ぶスギとヒノキを対象に、UAV レーザによる森林計測点群から、高精度に樹幹抽出を行う手法を提案しました。
森林の資源量を把握するためには、まず樹木の本数を知ることが必要です。そのためにレーザスキャナで取得した森林計測点群データから、プログラムを使って幹を抽出することで本数を自動検出する手法を考えました。森林環境は複雑です。山の傾斜を考慮し、ブロック分割し地表面と樹冠領域点群を除去して高さの均一化を図りました。そうすることで、アルゴリズムを用いてスギやヒノキの特徴である真っすぐに伸びる幹の情報を1本1本抽出することができます。また、葉や枝のようなノイズになってしまう不要な点群を取り除く必要があります。そこで、RANSACというアルゴリズムを用いて疎らな外れ値を取り除き、幹の部分のみを抽出しました。このような手法を使うことで、高精度に樹木の検出を行うことができました。

どのような点が評価されたと思いますか。

実用性の高い研究だという点が評価されていると思います。研究する過程において、直線検出アルゴリズムのパラメータの値はどのように設定したのかといった研究内容を深堀りするような質問も多く、それに対する回答もしっかりできていたことが評価につながっていると思います。

今後の目標をお聞かせください。

本研究の目的は、山林の資源量を把握し、効率よく森林管理を行うシステムを確立することです。今後は、高さと太さを算出して、3Dマップの作成も行っていく予定です。また、松も木材に利用できますが、スギやヒノキと違って松の幹は曲がっているものが多いため、それをどう検出するかが今後の課題になってきます。実用化を視野に入れている研究なので、実現できるように成果を挙げていきたいと思います。

将来の夢はありますか。

将来、システムエンジニアになりたいと思い、情報工学科に入りしました。世の中は日々IT化していることからも、IT業界は益々発展していくと考えられます。実際に学んでみると、パズルを解くようなプログラミングのスキルだったり、とても頭を使う学問だと感じました。3年生の時に就活に向けて自己分析した際、人よりももっと専門分野の知識を身につけて自分の強みにしたいと考えて大学院に進学しました。こうして賞をいただけたことも、自分の強みになっています。将来は、社会に役立つシステムをつくれるようなエンジニアになりたいと思います。

ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

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