最新情報

建築学専攻博士前期課程1年の奥山翔太さんがコンペティションで入選しました

防災と日常が共存し、港町の賑わいを創出する提案が高く評価される

この度、建築学専攻博士前期課程1年の奥山翔太さん(建築計画研究室/指導教員:浦部智義教授)が令和2年度卒業設計で取り組んだ作品『弱波堤 -日常に寄り添う小さな堤-』が、第1回フェーズフリーアワード2021(一般社団法人フェーズフリー協会主催)と、歴史的空間再編コンペティション2021(歴史的空間再編学生コンペ実行委員会、金沢市主催)で入選しました。「フェーズフリーアワード」は防災に関わる新しい考え方に基づくさまざまな事業やアイデアを広く社会から募り、優れた事業やアイデアを顕彰するイベントで、奥山さんの作品は「アイデア部門」での受賞となりました。また、歴史的空間再編コンペティションは大学等の学生の新しい価値が生まれる学びの場をつくることを目的に、全国に存在する歴史的空間を再編しようとする設計作品を対象に実施されています。奥山さんの作品は第一次審査で入選を果たしました。
奥山さんに受賞の喜びと作品について詳しくお聞きしました。

―2つのコンペティションでの入選おめでとうございます。感想をお聞かせください。

学部4年次の卒業設計作品展での発表の様子

ありがとうございます。この作品は学部4年の卒業設計で制作したものですが、再構築してテーマの違う3つのコンペに応募した結果、2つのコンペで入選することができました。本格的な就職活動に向けて自分の作品を再度見つめ直し、きちんと理解しようと思ったのがきっかけで、テーマの異なるコンペに参加しましたが、いろいろな角度から作品を俯瞰することができたことで、断片でしかなかった点と点が線でつながり再構築することができました。自分の作品の客観的な評価も具体的に見えてきたので、今後作品をつくる上でも大いに役立つと思います。制作内容や表現方法など丁寧にご指導いただいた浦部先生や刺激し合えた研究室の仲間にも感謝しています。

―作品について詳しく説明いただけますか。


選定した場所は岩手県北部の普代村「太田名部漁港」です。私は岩手県出身で、幼い頃から東北の沿岸部には足を運ぶ機会が多々ありました。東日本大震災以降、各地域では津波対策として、嵩上げした防潮堤や防波堤の設置が検討されています。防災上必要なことではありますが、反面、景観を阻害し人々と海との関係性が希薄になるのではないかと感じていました。そこで、土木スケールである嵩上げを建築スケールの壁に置き換えることで、同じように波を弱める機能を持ちながら、地域の住民に寄り添った“堤(つつみ)”を構築して、賑わいのある空間になるような提案を考えしました。既存の木造建築の1階部分に、津波を減衰させる防波堤を分解した小さな堤(弱波堤)をL字やT字に配置します。それにより、大空間でありながら、ゆるやかに空間を分節できるようにして、時期や用途に応じた大小の賑わいの場を創出します。津波発生時には、弱波堤が瓦礫をせき止め、波の威力を打ち消し合いながら、既存の防波堤と防潮堤と合わせて段階的に津波を減衰させます。また、1階部分の弱波堤が建築物の基盤部分として残る想定のため、災害後の再建を円滑に進めることができるメリットもあります。

弱波堤が市場の空間の分節し、フレキシブルな空間を創出

L字T字の弱波堤配置で形成された番屋は観光客と住民の交流を生む空間

―どんな点が評価されたと思われますか。

土木スケールと建築スケールを融和させた弱波堤配置模型

土木スケールと建築スケールのギャップを埋めるのは難しいことではありますが、自分なりの解釈で融和させたところがポイントかなと思います。分節した建築スケールの建物を土木スケールの防潮堤の前に置くことで、ゆるやかに波を弱め、最終的には波を止める操作を考えました。日常と防災が共存するとともに、生業である漁業と港町の賑わいなど、この土地のスケールで成り立つように計画したことも評価されたと思います。それぞれ違ったテーマのコンペでしたが、「フェーズフリーアワード」の方は平常時と非常時の垣根を越えた提案が求められていたので、作品の主旨と合っていたと思います。「歴史的空間再編コンペティション」の方は、堤防建設前の住まいのエリアと賑わいのエリアが歴史的空間であり、堤防が建設された後も再編できるのではないかと考え提案しました。コンペを通して自分の作品と向き合い、理解するまで粘ったことで、違った解釈から新たな提案に結び付き、評価されるところに至ったのかなと思います。自分だけでは解決できないところもあって、浦部先生にアドバイスをいただいたり、研究室の仲間からヒントをもらったりしながら、最後は自分で考えて落とし込むことができるようになったのは、成長したところだと思っています。

―今後の目標をお聞かせください。

将来は設計職に就き、人が賑わう空間づくりをすることが目標です。どんな場所でも、その土地ならではのものを活かしながら建築に取り組んでいきたいと考えています。今は設計職を目指して、準備を進めているところです。まずは、公共建築の設計に数多く手掛けられる様な会社に就職し、様々な建築設計について学びたいと思っています。

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

 

第 1 回フェーズフリーアワード2021はこちら
歴史的空間再編コンペティション2021はこちら