最新情報

建築学科住環境計画研究室が『よりみち~まち全体を図書館に』の活動を通して地域に貢献しています

本との出会い、人との出会いがまちのにぎわいを創出
取り組みを通して、人との繋がりの大切さを学ぶ

建築学科住環境計画研究室(指導教員:市岡綾子専任講師)では、福島県矢吹町で『よりみち~まち全体を図書館に~』プロジェクトを展開しています。このプロジェクトはJR矢吹駅や駅近くの商店街など町内4か所に誰でも自由に図書を利用できる本棚を設置し、地域の方々に作品との出会いを求めて街を散策してもらうために計画されたものです。地域のにぎわい創出につなげることを目的に企画を発案した矢吹町地域おこし協力隊の飯塚智崇さんが、市岡綾子専任講師に相談されたことから始まりました。市岡専任講師は様々な市町村でまちづくりの提案や活動を行っている実績があります。設置にあたり、研究室に所属する橋本悠衣さん(建築学科4年)と横山渓太さん(同4年)が中心となってプロジェクトを進めるとともに、本棚作りには主に研究室の学生たちが携わりました。9月末に設置してから数か月が経ち、この取り組みが話題となり、11月29日の福島民報にも掲載されました。二人の話をもとに、実際にどのようにプロジェクトが進められたのか、詳しく紹介します。

自由に貸し借り、みんなでつくる、『まちの図書館』に

このプロジェクトは、「まち全体を図書館に」をコンセプトに、矢吹町内に自由に利用できる本棚を設置し、本に触れる機会を増やすとともに、本を介して人と人との繋がりを創出することを目的に立ち上がりました。「しおりば」というフリースペースカフェを運営している、矢吹町地域おこし協力隊の飯塚智崇さんが発案し、相談を受けた市岡綾子専任講師と住環境計画研究室の学生がプロジェクトを主動することになったのです。昨年の4月頃から打ち合わせが始まりました。プロジェクトの代表を任されたのは、4年生の橋本悠衣さん。もともと、まちづくりに携わりたいと思い、住環境計画研究室に入った橋本さんは精力的にプロジェクトに取り組みました。橋本さんをフォローし、主に本棚づくりを担当したのが横山渓太さんです。研究室の仲間とともにデザインや設計、製作から設置まで携わりました。本棚設置に向けて、橋本さんらは商店街の店舗や矢吹町役場に出向いて説明し協力をお願いしました。計画を知ってもらうためにチラシを作成し、矢吹町複合施設KOKOTTO(ここっと)に置かせてもらったり、商店街の店舗に掲示していただいたり、小中学校に配布していただくなど、取り組みを広く周知させることに努めました。



本棚の設置場所は、JR矢吹駅前と駅構内、「しおりば」と商店街の化粧品店「なかまん」の4か所。本棚は場所によって中身が異なり、小説や漫画などジャンルも多彩です。好きな本を探して本棚を巡りながら、まちなかを散策してもらおうというのが狙いです。本は「しおりば」から譲り受けたものや一般の方から寄贈されたもので構成されています。その場で自由に読むことができ、持ち出し・持ち帰りも可能で、返却期限もありません。プロジェクトの本棚であれば、どこに返却してもOK。また、お勧めの作品や家にある読まなくなった本の持ち込みも可能です。取り組みを知って、寄贈したいという方も増えています。最初は「何だろう?」と気には止めても素通りする人も多かったのですが、少しずつ本棚の存在が認知され、変化を生み出しています。本棚の設置にご協力いただいている「なかまん」の中西良枝さん(写真左)は、「学校帰りの子どもが興味を持ち立ち止まって見ているようです。本棚の中身も少しずつ変わってきているし、にぎわいに繋がっていることを実感します」と楽しそうに話していました。
安易に破棄されるのではなく、知的財産を有効活用していくこともプロジェクトの目的であり、ゆくゆくはみんなでつくるまちなかの図書館にしたいと考えています。
プロジェクトの一環として、10月から11月にかけて3日間ほど、矢吹町大池公園で『青空図書館』も開催しました。自然の風を感じながら、のんびりと読書に親しむことができる、よりみち図書館とは違った寛ぎの場所を提供しました。小さな子どもに読み聞かせしている親子の姿があったり、子どもたちのグループが訪れ、学生と一緒に遊んだり、人と人が交流する機会を創出できたようです。こうした取り組みが地域貢献につながるとともに、学生自身の成長につながる貴重な経験になっています。

伝えることの難しさ、支えられることの有難さを実感しました
橋本悠衣さん

東日本大震災を経験し、実際に自分の住んでいる須賀川市が復興していく様子を見ていく中で、まちづくりに興味を持ちました。大学生のうちにまちづくりに携わってみたいと思っていたので、プロジェクトに参加できて良かったです。特に、本棚を介して新たな交流が生まれたというエピソードを聞くと大変嬉しくなります。私自身の卒業研究テーマとしても取り組んでいるので、まちづくり活動での住民との関わりや初期の課題など、活動を継続していくための基礎研究になるような成果を挙げたいと思っています。協力していただいた方や本を置いてくださった方、本を寄贈したいと言ってくださる方などへの聞き取り調査も行いました。矢吹町の状況や本棚設置後の変化についての情報を得ることで、課題や改善点を見出し、今後のまちづくりにも役立てていきたいと考えています。
活動を通して学んだことは、人に伝えることの難しさ。コミュニケーションの取り方など、将来に役立つ経験ができたと思います。また、研究室の仲間や矢吹町のたくさんの方に支えられ、背中を押していただきました。感謝の気持ちとともに、私も将来、誰かを支えられるような人になりたいと思いました。そして、建築=建物ではない、建築のフィールドの広さや可能性を改めて感じました。

人との関わり方を学んだプロジェクトの経験は、将来大きな武器になる
横山渓太さん

プロジェクトに参加して、いろいろな人と同じ目標に向かって物事を進める苦労を経験しましたが、一方でやりがいも大いに感じました。本棚の製作では、完成イメージを研究室のメンバーの間で共有して進めていく中で、デザインへのこだわり、設計手法など、意見が食い違うこともあり、一つの形に作り上げていくのが難しかったです。それでも試行錯誤しながら出来上がった本棚は自信作です。設置にあたっては、学生だけではできなかったし、多くの方の協力や支援のおかげで、このプロジェクトを進めることができました。私たちが力を発揮できるような環境を整えていただいたから、学生が主体となって動くことができたのだと思います。後輩たちには、そうした環境の下、学生だからできることを考えて存分に力を発揮し地域のために貢献してほしいと思います。私自身、目標を達成するために、どのように人と関わり、どのようにして課題を解決していくかを学ぶことができました。仕事も一人では成し遂げられないもの。様々な人と協力しながら活動できたプロジェクトでの経験は、将来大きな武器になると考えています。
建築は、人やまちに与える影響力も大きく、責任も伴います。その分、やりがいもあり得られる達成感も大きくなるでしょう。私も将来、人に感謝されるような建築に携われるようになりたいと思っています。

やぶき観光案内所の幕田俊郎所長との打ち合わせの様子。
多くの人に支えられながら、活動を推進しています。