行事

第19回産・学・官連携フォーラムを開催しました

『先に進む企業のためのロボット』をテーマに
産学官の最新の取り組みを紹介

 11月21日(水)に、日本大学工学部50周年記念館大講堂において、『第19回産・学・官連携フォーラム(日本大学工学部工学研究所、公益財団法人郡山地域テクノポリス推進機構主催)』を開催しました。少子高齢化、人手不足が進む中、企業の中でその対応が急務となり、特に中小企業での人材確保が難しくなってきています。今まで産業用ロボットを利用していなかった中小企業でも、人手不足解消の一つの方策として、ロボット導入を検討する企業が増えてきました。一方で、産業用ロボットのメーカーも、新たな市場を開拓すべく、協働ロボットの製品開発に乗り出しています。さらにベンチャー企業も参画し、ここ数年のロボット展示会を賑わせています。
 このような背景の中、郡山地域テクノポリス推進機構では、今年8月に『Koriyama Robot Lab』 として、県内企業に向け、最新の協働ロボットの実機に触れて、ロボットメーカーと技術相談できる場を開設しました。また、日本大学では、ロボット技術の進展が社会問題の解決策として注目される中、ロボット研究開発の総合力向上を目指し、理工系3学部のロボティクス関連研究者の情報共有と交流のプラットフォームを『日本大学ロボティクスソサエティNUROS(仮称)』として構築する計画を進めています。さらに、福島県では、ロボット関連産業を成長産業の柱の一つとして位置づけ、実証フィールドの構築、産業集積や開発支援、人材育成など様々な取り組みを行っています。
 そこで本フォーラムでは、『先に進む企業のためのロボット』と題して、ロボット技術を活用するための、産学官の最新の取り組みを紹介しました。
 開催にあたり、主催者を代表して出村克宣工学部長と郡山地域テクノポリス推進機構の地域戦略的アライアンス形成会議会長の林明博氏がご挨拶いたしました。出村工学部長は、ロボットの語源や科学技術の歴史を紹介し、今後の社会においてロボットが不可欠であると言及。日本大学理工系3学部によるロボティクス関連プラットフォーム構築に向けての意気込みを見せていました。

 また、林氏は工学部の協力により開設した『Koriyama Robot Lab』が盛況だったことに触れるとともに、今後ロボットをどう活用すべきかが課題であると指摘。産学官それぞれの立場からロボットに関する情報を提供することで、参加した皆様にとって有意義なフォーラムになることを祈念しました。

人とロボットが協働し共存する社会を実現するために
技術開発と人材育成を推進していく

■「産」を代表して講演
『今、求められるロボットとは~人のように使うロボット~』 

THK株式会社 常務執行役員 星野 京延 氏

 星野氏は、小売・サービス産業などの生産現場を例に、深刻化する労働力確保の問題を取り上げ、人をそのまま置き換える機能や技術導入の必要性を示唆しました。ロボットを導入するためには、人と同じような両腕・両足の機能や移動できる距離感覚を持ち、安全に人と共同作業ができること、現場になじみやすい人型であることが求められると説明しました。実際に調理補助ロボットの動画を見せながら解説。協働ロボットと人の棲み分けをしながら、使う側がどんな現場をつくりたいのかをしっかり考えてロボットを導入することが重要だと言及しました。

 

■「学」を代表して講演
『日本大学理工学部におけるバイオミメティックス・AI・創発ロボット』

日本大学理工学部 内木場 文男 教授

 理工学部精密機械工学科に所属する内木場教授は、動画を使って 14学科を有する理工学部やロボットの研究拠点『マイクロ機能デバイス研究センター』について紹介しました。我が国の超スマート社会実現に向け、サイバー空間とリアル空間をIoTで結び付けるために、ロボットは重要な役割を担っていると言及。理工学部が取り組んでいる様々な『バイオミメティックスロボット』の研究について説明しました。また、ペットロボットなどの AI ロボットや、自律性の高い創発型レスキューロボットなどについても紹介し、多様で高度なロボット研究での優位性を示しました。

 

■「学」を代表して講演
『日本大学生産工学部における人とロボットとの共生研究』

日本大学生産工学部 見坐地 一人 教授

 生産工学部数理情報工学科に所属する見坐地教授は、理工学部、工学部との違いについて、より実務的な工学を学ぶのが生産工学部であると強調しました。また、ロボットエンジニア育成実践プログラム『Robo-BE』について紹介し、生産工学部がロボット教育にも力を入れていることを示しました。さらに、マン・マシン系、ロボットモジュール化、協働ロボット、ロボット法整備といったロボット研究の具体例をあげるとともに、自身の研究であり、工学部機械工学科の長尾光雄教授と進めようとしている『歩行アシストパワースーツ』の研究について詳しく説明しました。

 

■「学」を代表して講演
『日本大学工学部における人センサ技術・IoT・作業ロボット』

日本大学工学部 武藤 伸洋 教授

 工学部機械工学科の武藤教授はまず、自身の略歴について紹介。就職した企業の研究所等で取り組んだ、センサを利用したロボットシステム、ネットワークロボットシステム、センサ利用ヘルスケア支援システムの研究について説明しました。工学部赴任後、サステナブルシステムズデザイン研究室で進めている遠隔作業支援を目的とする移動ロボットやマニピュレータの制御に関する研究のほか、医療機器操作の遠隔支援システムなどの研究について動画を使いながら解説しました。さらに、福島県や郡山地域テクノポリス推進機構などとのロボットに関する産学官連携活動に触れ、工学部の特長でもある地域密着の取り組みを紹介しました。

 

■「官」を代表して講演
『福島県におけるロボット関連人材育成の取り組み』

福島県商工労働部産業人材育成課長 景山 博 氏

 景山氏は、福島県のロボット産業推進の概要と『ふくしま地域創生人材育成事業』について説明しました。ロボット産業推進の柱の一つ、『福島イノベーション・コースト構想』では、福島ロボットテストフィールド等を整備し、ロボット開発・実証・認証の一大拠点を目指すと明言。また、成長産業等人材育成事業では、ロボット産業推進人材育成にも力を入れており、テクノアカデミー郡山の取り組みも紹介しました。ふくしま地域創生人材育成事業で策定したロボット関連人材育成のためのカリキュラムについても説明し、さらに改善を続けながら推進していきたいと抱負を述べました。
 最後に、工学部研究委員会副委員長の石川康博教授が登壇し閉会のご挨拶をしました。その中で石川教授は、「ロボットはタイムリーな話題であり、少子高齢化、人材不足、その対策としてのロボット導入は共通認識。ロボット開発に携わる人材だけでなく、操作する人材も必要」と示唆。ご参加いただいた企業の皆さまに御礼の言葉を述べるとともに、この機会を利用して情報の共有ができればと今後に期待しました。
 遠隔通信操作の研究を進めている電気電子工学専攻の院生は、「素晴らしい内容の講演ばかりで、大変勉強になった。少子高齢化による人材不足は深刻な問題。人ができないことをロボットが支援するような共存社会になればいい」、「理工学部の先進的な研究や生産工学部の実務経験重視の教育なども知ることができた。学部によって取り組んでいる研究も違っていて、とても新鮮だった」と話しており、学生にとっても大変有意義な講演になったようです。

 人材派遣業を営む企業の方も参加しており、「福島県が取り組んでいる地域密着型のロボット関連人材育成事業について詳しく知ることができた。企業として人材育成に関わることができれば今後の展開につながる。また、人材を提供するという意味で、被験者として大学の実験にも協力できるのではないかと考えている」と話しており、産学官の新たな連携の道筋も見えてきたようでした。
 武藤教授は、「来年3月のNUROS設立に先駆けて開催したフォーラムでしたが、産学官だけでなく、3学部の連携もいっそう強まった。シナジー効果も期待できる」と手ごたえを感じていました。
 来年3月1日には、日本大学本部にてNUROS設立シンポジウムも行われる予定です。それぞれの学部の特色を活かしながら、新たなロボット技術開発を推進し社会のニーズに応えてまいります。