日本大学工学部土木工学科には、女子学生のための「土木女子の会」があります。女子の少ない土木工学科において、先輩・後輩・卒業生の枠を越えて交流できる貴重なサークルで、ほぼ全員が所属しています。その中でも、今、輝いている 3 人の土木系女子が集まって、本音で語り合う座談会を開催しました。
女性ならではの視点で考える土木工学科の魅力やこれからの土木業界について、有意義な話が盛りだくさん!土木の道を志す方、土木に興味のある女子高校生の皆さん、ぜひご覧ください。
(※座談会は平成 26 年 6 月に実施したものです)
土木女子の会メンバー紹介
写真右から
★佐野峯麻聖さん(平成25年度土木工学科卒業) 福島県庁に就職
すでに公園や道路整備、再生復興など 5 本の現場を担当し最前線で活躍する。
★浅野和香奈さん(平成29年度土木工学専攻修了) コンクリート工学研究室に客員研究員として所属
土木学会東北支部研究奨励賞、インフラメンテナンス大賞国土交通大臣賞など数々の賞を受賞している。
★川瀬晶子さん(平成26年度土木工学科卒業) 東日本旅客鉄道株式会社(技術職)に就職
幼い頃からの憧れだった鉄道会社(技術職)に就職し、インフラ(※1)保全に貢献する夢を叶える。
◆私たちが日本大学工学部を選んだ理由
佐野峯さん:お久しぶりです。二人とも元気で頑張ってる?
川瀬さん:はい、先輩もお元気そうで。
浅野さん:今日は、「土木女子の会」の座談会企画ということで、大学に来てくださりありがとうございます。
佐野峯さん:ドボジョの本音トーク、楽しみにして来たのよ!ではでは、早速始めましょうか。ところで二人は、どうして土木工学科に入ったの?
川瀬さん:土木工学なら、私の得意な数学を活かせると思ったんです。それに土木は社会に貢献できることも魅力でしたし。日本大学のネームバリューにも強く惹かれましたね。福井県出身で東北に行ったこともなかったので、郡山で 4 年間過ごすのもいいかなと思って。
浅野さん:私は高校の時に総合学科だったんですが、プロジェクトスタディで学習した高速道路の渋滞に興味を持ったことが、土木工学を学ぼうと思ったきっかけです。日本大学工学部には交通工学の研究室があって、ここなら私のやりたい研究ができると思って入学しました。
佐野峯さん:それぞれ考えて選んできたのね。私は橋とか道路とか構造物に興味があって、将来は公務員になろうと思ったの。日本大学工学部は就職に強いって言われてたから、自分の夢も実現できるかなと…。
浅野さん:先輩、その通り夢を叶えたんですね。スゴイな!
川瀬さん:私も小さい頃から憧れていた鉄道会社に技術職として合格できました。やはり女性でも土木を志してきたので、現業に就きたいと思って。
佐野峯さん:今の時代、仕事をするうえで男性とか女性とか関係なくなってきてるよね。
浅野さん:むしろ女性の方が仕事の幅を広げているような気がする…。
佐野峯さん:私が就活している時にも、今は女性の方が輝いて見えるから、どんどん採用したいって言われたの。土木系の職場も女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいるから、困らなくなってきてるしね。私は福島県庁の県北建設事務所事業部道路課で技師として、いろいろな現場を担当
していて忙しいけど、仕事を任されてやりがいがあるし、とても充実してる。
川瀬さん:企業の会社案内パンフレットに女性が多く載っているのは、積極的に女性を採用しようとする意図が感じられますね。一昔前は女性で土木というとパイオニア的存在だったけど、今ではもう当たり前なくらい第一線で活躍しているから、私たちも心強いです。
◆私たちが感じる土木工学科の魅力
浅野さん:先輩は工学部で学んでよかったと思うことや大変だったことってありますか?
佐野峯さん:浅野さんもそうだけど、私も普通科出身だったから、最初は土木の専門分野の勉強には不安があったな。測量なんて初めての経験だったしね。でも、数学や物理の基礎はしっかり身についていたから、その点では苦労しなかったし、専門の授業も真面目に受けていれば理解できるはず。だから、普通高校の人にも工学に興味を持ってもらえるといいなと思う。
川瀬さん:勉強は苦労しなかったけど、やはり女子が少なくて男子校みたいな雰囲気に、最初は戸惑いました。東北の食や言葉や気候の違いにも馴染めなくて。でも「土木女子の会」があったおかげで、先輩にいろいろ相談できて助かりました。女子が少ない分、他の学科に比べて先輩後輩の結束が固いですよね。
浅野さん:私も最初、女子の一人暮らしに少し不安もあったけど、アパートの1階に大家さんが住んでいるので、今はもう心細さを感じることはないですね。それに近所には友人もたくさん住んでいるから、しょっちゅう行き来していますし、一緒にテスト勉強したり、週末は夜中までおしゃべりしたり。こういう自由さは一人暮らしの特権ですよね。
川瀬さん:それから、私にとってはアルバイトの経験もよかったかな。職場の方たちと触れ合ううちに、地域にも馴染んでいけたような…。年上の人と関わるのも初めてだったけど、振り返るとその経験が就活の時に活かされたと思います。
浅野さん:学業とアルバイトの両立も大変ですよね。私もアルバイトの他に、2 月に行われた「日本大学学生FD CHAmmiT」の企画運営に携わり、今は日本大学FD研究の執筆活動に努めているんです。学生だけでなく、教職員の方と関わる機会も多く、いろいろな考え方を学べるから貴重な体験になっています。
佐野峯さん:勉強だけ頑張っているのもいいけど、学生のうちにいろいろ経験することは大事だし、限られた時間の中でどれだけ効率よく実行していくか、時間の使い方を学ぶのにも役立つと思う。先輩の仕事を見ているとスピードが違うものね。いかに仕事を早く覚えるかがポイント。その時、大学で学んだことが即戦力になる。例えば図面を書く時、CADの基礎が役立ったり、もちろんパソコンのスキルもね。大学での学びは無駄にならない。いつかは役立つのだから、しっかり身につけておいてほしいと思う。
川瀬さん:土木工学科にJABEE(※2)があるのは有利ですよね。技術士補は普通に受験したら、なかなか受からない資格。その一次試験が免除されるわけですから。知り合いから、試験免除でうらやましいと言われましたよ。
佐野峯さん:土木の現場では技術士は絶対必要。その技術士とともに仕事をするには、技術士補はなくてはならない資格ね。
浅野さん:社会で求められる資格なんですね。
川瀬さん:技術士の資格を持っているとお給料も違うんですよね。
佐野峯さん:そう、それに資格の有る無しで信頼性も違ってくる。工学系で資格を持つことは大事だと思うの。測量も丁張り検査で使うから、しっかり身につけておいてほしいし。
浅野さん:資格のほかに、土木工学科の魅力って何だと思いますか?
川瀬さん:やっぱり社会貢献度の高さ、影響力じゃないかな。直接、人のために役立つことに携われて、それを感じられるのは、大きな魅力だと思う。
佐野峯さん:社会に出てからわかったことだけど、福島県庁には日大工学部出身者がたくさんいるのよね。土木工学科の卒業生が活躍されているのは、後輩の私たちにとっても誇りです。
浅野さん:私は、研究熱心な先生が多くて、社会への発信力があるなって思います。日本大学というネットワークの中で、工学部としても広く発信できるのは強みですよね。
佐野峯さん:特に震災後は、工学部も土木工学科も注目されているしね。一方震災を通して、土木技術の在り方も見直されてきているのも事実。
浅野さん:高度成長期に一気に建てられた構造物が老朽化してきて、自治体だけで管理することが難しくなってきている状況もあります。それをどうしていくかが、土木の大きな課題だと思う。アメリカの高速道路や笹子トンネルなどの崩落事故も起きているけど、大きな事故が多発しないようにするために、対策を講じていくことが重要なミッション…。それはこれから私たちの世代がやるべき使命なんじゃないかなって。
川瀬さん:今、インフラは造るより直す時代。私の研究室も橋のヘルスモニタリングを行っていて、橋の状態を調べてどう直していくかの対策について研究しているの。社会的にも公共施設のアセットマネジメント(※3)が浸透しつつあり、就活の面接でも問われたので大事な問題なんだなと思いました。
浅野さん:ちょうど私たちが取り組んだ「橋の名付け親プロジェクト」もその一環になると思います。平田村で管理できなくなった橋を住民で管理してもらうための取り組みです。名前のない橋に子どもたちに名前を付けてもらうことで、その親御さんや祖父母の方まで橋に愛着を持ってもらうことが狙いです。その後は住民みんなで橋を掃除しながら、維持管理していく。そういう活動がどんどん広まっていくといいと思いますね。技術だけで補おうとするのではなく、住民の方の力を借りるという逆転の発想も必要です。そういう発想ができるのは女性なんじゃないかな。
◆それぞれの夢や目標に向かって
浅野さん:お二人の将来の目標って何ですか。
川瀬さん:会社に入ったら、鉄道のメンテナンスの仕事に就くんだけど、やはり体力では男性に敵わないところもあると思う。その分、現場の雰囲気を和ませて、仕事がスムーズに進められるような役割を果たしたい。そして、現場の最前線でインフラ保全に貢献したいですね。
佐野峯さん:誰もが使いたいと思うような道路、橋を造りたい。いらないのに勝手に造られたと思われるのではなく、住民の方に納得してもらって造ることが大事だと思うの。私はまだ入ったばかりで、住民の方と同じ視点で考えられるから、先輩にはそれを活かして仕事をしてほしいと言われてるの。特に担当する 5本の現場のうち 3 本は交通安全・再生復興系の道路整備なので、住民の方と意思疎通を図りながらスムーズに仕事を進めていきたい。
浅野さん:私は一般の方たちが持っている土木のイメージを変えたいですね。メディアを通じて発信できるように企画運営や広報に携われたらと思っています。
佐野峯さん:それぞれ夢や目標は違うけれど、これからの「ドボジョ」の見本になれるよう、お互い頑張っていきましょうね。
川瀬さん、浅野さん:はい!頑張ります。