SDGsの実現に貢献する「ロハスのトイレ」がモバイルトイレへと発展

この度、日本大学工学部発ベンチャーが開発した「インフラに依存しない自立型トイレ洗浄水循環システム(e6sシステム)」を装備するトイレカーが完成しました。このe6s(エシックス)システムは、土木工学科中野和典教授による「ロハス工学を使ったトイレの研究開発(ロハスのトイレ)」をベースに、株式会社e6s(えしっくす:横浜市)が開発した、断水や停電時でも使える水洗トイレのシステムです。福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構(福島イノベ)『令和6年度FukushimaTech Create (FTC) 事業』の支援を受けた開発成果であり、昨年12月には公共施設としては導入初となる第1号機が郡山市のビッグパレットふくしま(指定避難所)に設置されました。さらに、当システムが移動できるように、神奈川トヨタ自動車株式会社と共同で車載式を開発。電源は屋根に太陽光パネルを載せた自立型であり、温水洗浄便座付の大便器と小便器の2基のトイレを設置する、モバイルトイレが新たに完成しました。

9月11日(木)、「完全自立型移動式水洗トイレ」の完成プレス披露会が工学部キャンパスで行われ、会場となったロハスの森「ホール」には関係者や報道機関各社が集まりました。福島イノベ事業創出支援課長 櫛田賢治氏が司会を務め、初めに同機構専務理事の戸田光昭氏がご挨拶しました。戸田専務理事は、移動式トイレが全国各地で導入されているものの、断水時の対応や汚物の処理などの課題があり十分に活用できていない状況に触れ、「福島イノベが令和4年度から支援してきた成果として、既存のインフラから独立した移動式の洋式水洗トイレが待望の完成披露の日を迎えたことを光栄に思う」と述べるとともに、このトイレは日本に留まらず世界中に需要があると強調されました。
次に日本大学を代表して研究推進部知財課の村田佳子課長補佐がご挨拶の壇に立ち、7月9日(水)に日本大学発ベンチャー第1号として株式会社e6s が認定されたことを報告。日本各地で多発している災害時に大いに役立つ技術であり、関係各位との連携を深めて「完全自立型移動式水洗トイレ」の普及拡大に努めていきたいと述べました。
続いて、株式会社e6s代表取締役社長 高波正充氏が開発の経緯について説明しました。東日本大震災をきっかけに、災害時のトイレ問題を解決するために中野教授と共に開発を進めてきたe6sシステムは、ロハスのトイレの技術をベースに、電気と上下水道が使えない状況でも水洗トイレとして機能し、大腸菌などを完全に滅菌する循環システムにより、普段と同じ状態で快適に使うことができるトイレです。さらに車に搭載することで、どこにでも迅速に駆けつけ、設置後約5分で使用可能な移動式トイレへと発展しました。「将来、日本全国に40万台を配置し、災害時でも快適にトイレを使いたいというニーズに応えたい」と今後のビジョンも語られました。
その後、駐車場に移動し、実際に「完全自立型移動式水洗トイレ」をご覧いただきながら、開発者の中野教授、神奈川トヨタ自動車株式会社執行役員 松本隼人氏からシステム等の技術面について説明を行いました。普通免許で運転できるダイナカーゴに搭載されたトイレの車載構造について、トイレを車両の両端に配置し中央にろ過装置を設置することで、プライバシーに配慮した設計になっていると松本氏が説明。浄化システムについては、実際に稼働させながら中野教授が解説しました。水洗トイレで流した後、まず汚水を固形物と水に分けて処理します。水は3層の活性炭フィルターで色素と臭気を除去し、塩素錠剤を入れた再生水タンクに貯留、その後、循環して使い続けることができます。固形物は不織布のロールで巻き取り、一般の人でも簡単に取り替えることができるため、汲み取り式と比較して汚物量は12分の1以下に減容、これまでのトイレのように汚物のタンクが満タンになって使えなくなる心配もありません。




「完全自立型移動式水洗トイレ」への関心度は高く、披露会の模様は多くのマスメディアに取り上げられました。中野教授は、「健康を維持するためにも、快適にトイレを使い続けられることは重要です。e6sシステムは、まさにロハスの観点からも、健康で持続可能なトイレだと言えます。日本の災害時だけでなく、世界中に安全安心なロハスのトイレを届けるために、引き続きe6sの性能向上と社会実装の促進に努めていきたい」とその思いを強くしていました。
中野教授が研究開発を続けてきた「ロハスのトイレ」が、分野の異なる企業との共同プロジェクトにより、社会に貢献する大きな成果につながっています。日本大学発ベンチャー第1号として、株式会社e6sが世界に羽ばたく企業へと発展していくことを期待しています。
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