有機系太陽電池技術に関するFREA-日大連携シンポジウムを開催しました

研究と人材交流をさらに発展させていく、
連携推進プロジェクトの活動

10月18日(木)、工学部50周年記念館AV講義室において、『有機系太陽電池技術に関するFREA-日大連携シンポジウム』を開催しました。これは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)との連携・協力に関する協定に基づく、研究・人材交流を今後さらに発展させていくためもので、工学研究所が推進する『産総研福島再生可能エネルギー研究所・日本大学工学部連携推進プロジェクト』の活動の一環でもあります。今回の『有機太陽電池の基礎と応用に関するセミナー』では、双方の技術の紹介と連携を視野に入れた今後の展開に関する意見交換を行いました。研究者はもとより、学生からも数多くの質問が繰り出され、闊達な意見交換の場となりました。

有機系太陽電池の研究最前線がここにある

『有機系太陽電池の開発の現状』

近松 真之 氏(産総研 太陽光発電研究センター 有機系薄膜チーム・再生可能エネルギー研究センター)

 まず吉田氏は、産総研の太陽光発電研究体制を紹介するとともに、有機系太陽電池の種類や用途について説明。その中で、有機無機ハイブリッド太陽電池であるペロブスカイト太陽電池の構造や作製方法を解説し、高性能化を目指す取り組みについても紹介しました。今後は、既存の太陽電池の製造コストを下回る、低コスト化を目指すと明言。さらに、有機薄膜・色素増感電池については、その用途開拓が必要だと示唆しました。

 

 

『スマートスタック太陽電池(ペロブスカイト太陽電池との多接合に向けて)』

水野 英範氏(産総研 再生可能エネルギー研究センター太陽光チーム)

 水野氏は単接合太陽電池の限界を説き、ハイブリッド型の多接合太陽電池の必要性を強調しました。その上で、産総研が開発した異種材料を効率的に接合するスマートスタック技術について紹介。その作製方法や特徴について解説しました。さらに多接合電池の種類とそれぞれのメリット・デメリットにも触れ、今後はスマートスタックのセルを向上させ、ペロプスカイト太陽電池との多接合への応用を目指すと言及しました。

 

 

『有機系太陽電池における電荷分離・再結合過程』

加藤 隆二教授(日本大学工学部生命応用化学科)

 2011年4月より産総研から日本大学に赴任された加藤教授。工学部の紹介と自身がプロジェクトリーダーを務める産総研との連携プロジェクトについて紹介するとともに、現在取り組んでいる色素増感太陽電池の研究と開発した過渡吸収分光装置について説明しました。電荷生成や再結合、過渡吸収の研究は有機太陽電池に役立つことにも言及。今後は産総研との共同研究により、色素増感太陽電池やペロブスカイト太陽電池に関するユニークな研究をしていきたいと抱負を述べました。

 

 

『ペロブスカイト太陽電池の現状と将来』

村上 拓郎氏(産総研 太陽光発電研究センター有機系薄膜チーム・再生可能エネルギー研究センター)

 ノーベル賞候補にも名前が挙がった桐蔭横浜大学の宮坂力教授とペロブスカイト太陽電池の開発を進めてきた村上氏は、同電池の材料や構造、そのメカニズムについて詳しく説明されました。高性能の要因についても解説。その反面、分かっていないことも多く、安定してセルをつくる技術が確立されていないことや実用化のための耐久性、市場の未開拓を問題点としてあげました。また、学生には自身の経験を踏まえ海外で仕事をすることを奨励するとともに、友人を大事にしてほしいとアドバイスされました。最後に2020年1月につくば国際会議場で行われる『IPEROP 2020(ペロブスカイト、有機太陽電池、オプトエレクトロニクスに関するアジア太平洋国際会議)』の参加を呼びかけました。

 

『今後の展開について』

講演終了後、進行役の吉田郵司氏(FREA再生可能エネルギー研究センター・太陽光発電研究センター・日本大学工学部客員教授・写真左)は、「様々な太陽電池の研究を進めていく中で日本大学工学部との連携をより強めていきたい」と述べられました。そして、本セミナーの主宰である再生可能エネルギー研究センター長の古谷博秀氏(写真右)がご挨拶され、「日本大学工学部とは人材育成やシーズの部分で連携させてもらっている。この連携セミナーも大変有意義で今後の展開も大いに期待されるものになった。さらに大学との連携を大事にしていきたい」と強調し、セミナーを締めくくりました。

 

未来の研究者が育っていくことにも期待が高まる

 本セミナーには、多数の学生も参加していました。普段の授業とは一味違う講義を聞きながら、最前線の研究の凄さに引き込まれていく学生たち。講演ごとに設けられた質疑応答の時間には、積極的に質問していました。「実際にスマートスタックはどのように接合しているのか」といった技術に関する質問があったり、「ヒステリシスがペロブスカイト太陽電池に及ぼすメリット、デメリットは何か」といった、研究者もたじろぐするどい着眼点で疑問をぶつけるなど、研究者の片鱗を覗かせていました。
加藤教授に興味があり、講演を聴いてみたいと参加した3年生の学生たち(下の写真)もいました。内容的には難しいところもあったようですが、授業で聞いたことのある用語も出てきたことから、普段からしっかり勉強しておくことが重要だと感じたそうです。ここから、『IPEROP2020』に参加する学生や産総研との共同研究に携わる学生が現れるかもしれません。人材育成という面でも大きな収穫のあるセミナーとなりました。

今後も様々な研究会やセミナーなどを通して、産総研と工学部との連携を深めてまいります。そして、共同研究による成果を社会に還元にし、地域に貢献していくことを目指します。

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