市民公開第4回『ロハスの工学シンポジウム』を開催しました

郡山市と日本大学工学部が連携し
ロハスの地域づくりを目指す


 平成27年3月15日(日)本学部70号館にて、『第4回「ロハスの工学」市民公開シンポジウム』を開催いたしました。今年のテーマは『郡山市と日本大学工学部が目指すロハスの地域づくり』。平成26年11月、郡山市と日本大学工学部との間で『再生可能エネルギー技術の研究開発』に関する連携協定が締結されました。これを踏まえ、廃校の校庭を利用した再生可能エネルギー研究開発、廃校の再利用、市民との協働によるインフラ整備、水環境の創生といったプログラムを提案し、市民の皆さまとともに『ロハスの工学』による郡山市のまちづくり、地域づくりのあり方について考えていくことが目的です。

官学代表による基調講演

 基調講演では、品川萬里郡山市長をお招きし『学官連携で推進する郡山市のまちづくり』と題してご講演いただきました。日本・世界のモデルとなる『新しい郡山』を創造するために、行政も企業経営の感覚を持って臨むことが必要であるとの見解を示し「“株式会社郡山市役所”を目指し市民の皆さまに還元していきたい」と決意を述べられました。本学部に対しては、人材・アイディア・知の拠点としての期待を寄せられるとともに、素晴らしい学びの環境である“ロハスシティ郡山”で多くの学生に学んでほしいと切望されました。

 続いて、出村克宣工学部長『ロハスの工学のこれまでと未来』と題して講演を行いました。本学部では健康で持続可能なライフスタイルを実現するための工学的アプローチを『ロハスの工学』と称して教育・研究に取り組んでいることや、これまで進めてきたさまざまな研究プロジェクトについて説明しました。この度、郡山市と提携した『再生可能エネルギー技術の研究開発』にも触れ、「大学の知的財産・研究施設・学生という人材を提供しながら、地域に貢献できる成果をつくり、『ロハスの工学』を郡山から世界に発信いきたい」と述べられました。

郡山市と日本大学工学部からの話題提供

 次に郡山市幹部の方と工学部研究者による話題提供を行いました。

【日本大学工学部】

  • ロハスの工学による再生可能エネルギーR&D拠点の形成について…機械工学科 柿崎隆夫教授
  • グリーンインフラの研究開発~花壇を活用した水の浄化装置~…土木工学科 中野和典准教授
  • 廃校の利用を契機としたロハスの地域づくり…建築学科 浦部智義准教授
  • 郡山市民との協働によるインフラの長寿命化を目指して…土木工学科 岩城一郎教授

【郡山市】

  • 環境・エネルギー・環境回復(除染・輸送)に関する施策…郡山市生活環境部長 吉田正美氏
  • 郡山市都市計画マスタープランの改訂状況と低炭素まちづくり計画について…郡山市技監 芳賀英次氏

産官学民連携による“まちづくり”を考えるパネルディスカッション

 話題提供いただいた6名によるパネルディスカッションでは、郡山のまちづくりに何が必要か、そのためにどうすべきかを自身の決意も含め意見を述べていただきました。


(以下一部抜粋)

芳賀氏】大学院生が深く関与したことが大きな成果につながったとする喜多方のまちづくりを例に挙げ、郡山市のまちづくりにおいても工学部の学生・院生が地域と深く関わることが重要であり、それが学生たちの勉強にもつながると示唆しました。そして、「住んで楽しい街であり、次世代に継承できる郡山にしていけるよう取り組みたい」との決意を語られました。


吉田氏】
低炭素・エネルギーに関する事業において、本学部の企業ネットワークを活用しながら産学官の連携を強固にし、市民の皆さまにも参加いただき活性化を図っていくことで、よりよい形のまちづくりができるのではと大いに期待されていました。また、自身の使命は「除染の完了、再生可能エネルギー・低炭素社会を一日も早く実現させること」と言明されました。

 

浦部准教授】まちづくりは時間がかかるものであり、産官学民の連携自体もサステナブルでなければならないという考えを示しました。そのうえで、「市民の方との意見交換の場を設けたり、大学としてもチームを組み、学生を育て参画させていく体制づくりが大切」と意見し、自身も学生の指導にあたるとともに関与していきたいと決意を述べられました。


中野准教授】
低炭素まちづくりのポイントの一つである緑化に着目した中野准教授。学生が主体となって研究を進めているロハスの花壇は、一般の方でもメンテナンスが可能な技術であることから、「キャンパス以外でも地元住民と一緒に実証実験が行えるようにしていきたい」との考えを示しました。

 

岩城教授】“株式会社郡山市役所”を支えていくために、大学はシンクタンクやコンサルティングの役割を担う必要があると述べられました。今までは地域にありながら遠い存在だった大学。「積極的に市民の相談に対応し具体的な解決策を示しながら、行政とともに遂行していければ“ロハスシティ郡山”の確立につながる」という見解を示しました。

 

品川郡山市長】工学部がロハスをコンセプトに教育・研究を進めてきた成果が開花し始めていると実感される品川市長は、『ロハスの工学』が目指す方向性として、子どもたちに焦点を当ててほしいと求められました。また、「学生の皆さんには郡山市全体がキャンパスだと思って、大いに活用し学んでください」とありがたい言葉もいただきました。

 

出村工学部長】 約15年かけて現実的になりつつある『ロハスの工学』を進める中で強まってきた郡山市との連携。さらに推進していくために、学生の若い力が必要だと述べられました。また、学生たちが地域の皆さまにご指導いただいていることについて感謝の意を伝えるとともに、今後も市民の方々にシンポジウムにぜひ参加してほしいと呼びかけました。

 

柿崎教授コーディネーターを務めた柿崎教授は、地方創生のためにはオリジナリティが必要であり、そのアイディアを出すのは大学の役目でもあると言及されました。「官学による新しい試みを進めていくという歴史的な記念すべき日である今日を機に、郡山市とのさまざまな連携を築きながら、次につなげていきたい」と決意を新たにしました。最後にご参加いただいた皆さまに御礼を述べ、シンポジウムを閉幕しました。

それぞれの立場から見えてくるシンポジウムの意義

 今回のシンポジウムには、産官学民という幅広い層の方々にご参加いただきました。それぞれの立場から今後の郡山市のまちづくりについて考える有意義な時間となったようです。企業の方は「地中熱の研究に関心がありました。郡山市の産業構造も時代とともに変化していく中で、今後郡山市の産業を活性化させるにはどうすればよいか。そして日本大学工学部はどのように関わっていくのか参考にしたいと思います」と話していました。郡山市役所の職員の方は「工学部とはこれまで近いようでなかなか深いつながりがなかったが、シンポジウムに参加してみて、互いに連携していければ郡山市のためになるという確信が持てました」と今日の成果に大きな期待を寄せていました。

 本学部の学生も多数参加しており、シンポジウムを通してさまざまなことを学んだようです。建築学科の学生は、「出村学部長のお話を聞き、なぜ工学部が郡山にあるのか、その存在意義がわかり感動しました。勉強へのモチベーションもあがります」、「卒業論文のテーマを模索していましたが、ロハスについて考えるきっかけになりました」、「官公庁の方の話を聞ける貴重な機会になりました」と話していました。

 

 土木工学科の学生は「郡山市と工学部が連携してロハスシティをつくっていければよいと思いました」、「郡山市の発展に貢献できる人材になりたいです」「郡山市と大学が互いの利点を活かすことで相乗効果になればいいと思います」と話していました。

 また、託児サービスを利用した本学部の卒業生は、「ロハスの工学について詳しい話が聞けてよかったです。子どもがいるとこうしたイベントに参加するのはなかなか難しい状況ですが、今回は託児サービスがあり助かりました」と話していました。
 東日本大震災の翌年から始まった『ロハスの工学シンポジウム』。本学部が推進する『ロハスの工学』の発信の場としてだけではなく、地域の方々が参加し連携の輪を広げていく有効的な意見交換の場となっています。
 日本大学工学部では、今後さらに地域との絆を深め、『ロハスの工学』の研究成果を活かして郡山市の活性化に貢献できるよう尽力してまいります。