市民公開第2回『ロハスの工学シンポジウム』を開催しました

ふくしまの子どもたちの未来のためにロハスの工学で貢献する

2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image002 東日本大震災における原発事故以来、郡山では低レベル放射線下にある子どもたちの心と体の健康増進と、その向上策の一つとして屋内運動施設が期待されています。日本大学工学研究所ではこれらの課題に対し、市民の皆さまとともに考えるシンポジウムを平成25年3月2日(土)開催しました。会場には各方面から約200人が足を運ばれ、講演者の話に興味深く耳を傾けながら、日本大学工学部の掲げる「ロハスの工学」が子どもたちの未来のために何を成すべきかを考えました。
2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0004 シンポジウムに先立ち、工学部長出村克宣教授がご挨拶いたしました。本学部がロハスの工学をキーワードに掲げてから10年が経ち、東日本大震災後以来ロハスの工学を概念とする諸活動の重要性が強く認識されてきている現状に触れるとともに、ふくしまの子どもたちの未来のためにシンポジウムが有意義なものになるよう期待感を表明しました。
 続いて郡山市長 原正夫氏が登壇され、本学部や各団体が連携し、次世代に良好な地球環境をつくり、魅力あるまちづくりができるよう、ハードとソフトの両面からさまざまな施策に取り組んでいく考えを述べられました。そして、ロハスの工学を通じたまちづくりによって、次代を担う子どもたちの未来につながる環境の創造につながることに大きな期待を寄せられました。

基調講演

2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image006 まず、小児科医でNPO法人郡山ペップ子育てネットワーク理事長を務められる菊池信太郎氏による「元気な子ども、明るい未来。郡山の元気、明日の福島。」と題した基調講演が行われました。東日本大震災後まもなく、児童精神専門科医、行政、教育委員会と連携して立ち上げた「郡山市震災子どものケアプロジェクト」。その中で、育ち盛りの子どもたちが体を使って遊べない状況を危惧し、地元企業や郡山市の協力を得て、郡山市内に開設した子どものための屋内運動施設「PEP Kids Koriyama」の取り組みについて詳しく紹介されました。この施設は心のケアだけでなく、子どもたちが遊びながら幼少期に経験すべき体の動きを自然に習得できるように設計されたもので、体の発育を助ける施設として大いに活用されています。菊池氏は、子どもは未来の力であり、子どもたちが夢と希望を持って育つことが重要であること強く訴えました。さらに、その環境を創るためには、大人たちが叡智を出し合っていかなければならないと言及されました。

 次の基調講演では、本学部機械工学科加藤康司教授が「ロハスの産業と文化~脱原発県の進む道~」をテーマに、福島県が復興するためにはどうすればよいかを示唆しました。子どもたちの2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image008未来に起こる資源枯渇や環境破壊などの問題を挙げ、再生可能エネルギーや再生可能材料でモノをつくることはもとより、健康で持続可能な生活スタイル実現のための産業「LOHAS Industry」の構築が重要だと示しました。本学部が進める「ロハスの家」の研究や第3次産業革命となり得るロハス産業の展望について紹介するとともに、子どもたちに健康で持続可能な生活スタイルや自然共生の大切さを理解させる教育が必要であると述べられました。

 

パネルディスカッション

 次にパネルディスカッションの趣旨として、土木工学科岩城一郎教授が「ロハスの工学のロードマップ」について説明。ロハスの工学の経緯と研究領域及び具体的な研究テーマに触れ、サステナブル“ふくしま”実現に向けて、どのような研究成果を発信していくかを示しました。

 そして話題提供として、本学の研究者から3つの事例について紹介しました。

  • 「ロハスの工学によるエネルギー問題の解決に向けて」 生命応用化学科 児玉大輔准教授

 今まで使用できなかった石炭を使ったガス化複合発電の開発が福島県いわき市勿来で進められている。懸念される温室効果ガスの問題を解決するために、私たちの研究グループで開発したイオン液体という特殊な吸収液を使った吸収・再生プロセスの研究を進めている。このIGCC(石炭ガス化複合発電)を復興のシンボルにすることを提案したい。

  • 「未来を担う子どもたちの学びについて考える」 電気電子工学科 村山嘉延准教授

2040年に再生可能エネルギー100%にするというゴールに向かって取り組む私たちの姿を子どもたちに見せること、そして子どもたちと対話しながら意見を取り入れていくことが大切である。本学部も、学生を育て、現実の課題に直面し、地域や子どもたちと一緒に人格を形成する教育に取り組み、ロハスの工学で描く未来の実現を目指したいと考えている。

  • 「ロハスの地域・まちづくりの契機づくり」 建築学科 浦部智義准教授

 石川町で実施した「子育てと教育のまちづくり」や、並木町に提案した健康をテーマにしたイベント「KENKO-Be」、借り上げの仮設住宅に住む中高生のための学習支援室の設置、北上市文化交流センターに造った遊び場などについて紹介。郡山を発展させるまちづくりや子どもたちのためのまちづくりの参考になればと考えている。

2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image010

 講演者に加え、郡山市総合政策部部長箭内賢一氏と郡山市スクールカウンセラー遠藤佐起子氏をパネリストに迎えてディスカッションを行いました。
 特に子どもたちの運動施設の在り方については、もっと自然を取り入れた施設やグループで遊べる遊具の設置、自発性を尊重した施設など、さまざまな角度から意見が出されました。
2013%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image012 ロハスの工学を最初に提唱した元日本大学工学部長小野沢元久先生は、「サステナブルの思想を肌で学んだ福島の子どもたちが、リーダーシップをとってこれからの日本や世界を担っていく。だから、子どもの遊び場も象徴的なものでなければならない」と強調しました。その他、会場の主婦の方からは食物に対する不安を解消するロハス的畑があったらいいのではという意見も出されるなど、活発な意見交換の場となりました。最後に岩城教授が次のように総括しました。

  • 我々には、郡山にある大学として地域に寄り添う覚悟がある。
  • 地域の力、未来の力でふくしまの復興を!
  • 30年先を見越した実効性のあるロードマップの作成と公開。これに基づく復興の推進と検証。●子どものための運動施設はコンセプトが明確で、ふくしま発のメッセージが込められたシンボリックな存在であるべき。
  • すべては子どもたちの夢と希望と未来のために。

2013i%e7%ac%ac2%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0mage014 参加した市民の方からは、「多種多様な分野の話を一度に聞けることは効率的で、本を読むより分かりやすい。注目されているロハスの工学は、目指すべき日本の在り方を示している」という感想をいただきました。機械工学科の学生は、「普段聞くことのできない話ばかりで、大変ためになった。機械工学を学ぶものとして、子どものために役立つ技術を開発したい」と語っていました。