市民公開第1回『ロハスの工学シンポジウム』を開催しました

「ロハスの工学」による

ふくしまの復興を考える~日本大学工学部の果たすべき役割~

 

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■復興の鍵を握る「ロハスの工学」とは

 %e7%ac%ac1%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image004シンポジウム開催にあたり、工学部長出村克宣教授より、ご来場いただいた皆様にご挨拶するとともに、東日本大震災以前から工学部が推進する「ロハスの工学」について、「人と地球にやさしいロハス(健康で持続可能な生き方)」を支える技術であることを説明いたしました。さらに出村学部長は「シンポジウムを通じて福島の価値観の創造につながる素晴らしい日になることを期待する」と述べました。

 午前の部は、シンポジウムの指針となる2つの基調講演を行いました。まず登壇したのは、日本大学理事(元日本大学工学部長)小野沢元久氏。題目「ロハスの工学への期待とその果たすべき%e7%ac%ac1%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image006役割」の講演の中で小野沢氏は、福島の復興を“福”を興す福興でなければならないとしたうえで、「『医・食・住』を基盤にした福島県独自の産業を創出することが大事である」と論じました。工学部で取り組んでいるエネルギーと水の自立、そして自然との共生をめざす「ロハスの家」を活用したコミュニティータウンの構想にも触れ、ロハスの家及びロハスの工学の研究が復興に役立つことを示唆しました。

 続いて行われた、郡山医師会会長・菊池医院院長菊池辰夫氏による「東日本大震災後の郡山医師会の取り組みと小児科医としての役割」と題した講演では、郡山市の地域医療体制と原発事故による子どもたちへの様々な影響について語られました。菊池氏は、子どもたちの心と体の健康のために、全天候型の遊び場や運動場の必要性を強く訴えたうえで、世界中は郡山市の復興を見つめており、郡山市から世界に『光』を発信し続けることの重要性と日本大学工学部に対する期待を述べられました。

 午後の部では、5名の教員から以下の話題提供を行い、福島の復興へのヒントとなる取り組みを紹介しました。

郡山市住民の放射線被爆モデルについて

…山形大学名誉教授(日本大学工学部非常勤講師) 横田俊幸氏

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…㈱非電化工房代表(日本大学工学部客員教授) 藤村靖之氏

日本大学工学部のダイナミズム構想~次世代ロハス工学研究会の取り組み~

…日本大学工学部土木工学科 教授 岩城一郎

除染活動と再生可能エネルギー獲得の接点

…日本大学工学部生命応用化学科 教授 平山和雄

ロハスの家の浅部地中熱利用技術による“ふくしま”の復興

…日本大学工学部 機械工学科 准教授 伊藤耕祐 

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32日に福島県で開催された「国際エネルギー・セミナー」に参加した機械工学科加藤康司%e7%ac%ac1%e5%9b%9e%e3%83%ad%e3%83%8f%e3%82%b9%e3%81%ae%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%a6%e3%83%a0image012教授は「福島県がこれから何を始めるのか、世界も注目する中で、ロハスの工学の素晴らしさは世界も共感している。学生と一緒に世界に発信していきたい」と述べられました。最後に、小野沢氏から「若い人が時代を変える。だから、教育が時代を変える礎となる」と工学部への期待の言葉をいただき、シンポジウムは閉会いたしました。

シンポジウムの総括として、以下を提言いたしました。

一過性ではない息の長い「ロハスの工学」―研究と教育で地域へ具体的に貢献

復興のために必要な新しいテーマを―ロハスの工学へ貪欲果敢に獲得

専門家の窓から世界の知恵を集め、「ロハスの福島モデル」として再発信

市民が参加してくれる“開かれたロハスの活動(仮称)”を提唱し実践

子どもが健やかに育ち、若者が夢と職を持つ。これが健康で持続可能な社会、必要とさせる「幸せ」

参加した市民の方から、「エネルギー問題について興味があり参加しました。専門家の方々の幅広い研究や大学の取り組みについて詳しく知ることができ、よい機会となりました。もっと市民と大学との垣根を越えた連携や交流があればよいと思います」との感想をいただきました。

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このシンポジウムを通して、真に福島の復興を願う人々が力を合わせることこそ、復興への堅実な歩みになるであろうと確信しました。そして、福島のために、地域社会とともにロハスの工学を推進していくことが日本大学工学部の担うべき役割であると私たちは考えています。

この場をお借りしまして、シンポジウムにご参加いただきました皆様、ご講演いただきました諸先生方に感謝申し上げます。

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