Researchers introduction No.1

研究紹介土木

道路の長寿命化を目指す

高速道路から一般道まで、日本国土に広がる道路を繋げると、その長さは128万㎞にも及びます。道路と言えばコンクリートでできていると思われがちですが、実はコンクリート舗装された道路は5%程度で、全体の95%を占めるのはアスファルト舗装です。しかし、大学の中でコンクリートを専門とする研究者は多数存在しますが、アスファルトを専門とする研究者は極わずか。前島助教はその一人であり、アスファルトのエキスパートとして様々な研究に取り組んでいます。

日本でも数少ないアスファルトの研究者を目指して

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大学・大学院時代は本学部のコンクリート工学研究室に所属。学生時代は主に橋梁の長寿命化を目指して道路橋RC床版の研究に従事していました。卒業後に就職した株式会社NIPPOは道路舗装を手掛ける会社で、その研究所ではアスファルト舗装やコンクリート舗装を専門に研究を進めていました。アスファルトは石油を構成する成分中、軽質の部分を人為的に或いは自然の力により蒸発させ、残留した半固体の物質です。簡単に言えば石油の残りカス。加熱により徐々に液化し冷めると固まるので、ホットメルト接着剤として骨材と混合して道路舗装などに使用されます。道路橋では床版の上にアスファルト舗装されることから、舗装が壊れたり、そこから水が浸入すれば床版の劣化にもつながります。道路橋のプロになるためには、アスファルトのプロにもなる必要があると考え、私は日本でも数少ないアスファルトの研究者を目指しています。

道路に関する診断技術や高耐久性材料を開発する

主に4つのテーマを掲げて研究に取り組んでいます。

①アスファルト舗装

●非破壊検査技術の開発
●アスファルト混合物の力学的特性に関する研究

強制振動試験装置や超音波センサを使って対象構造物の周波数特性を計測することで、劣化状況を検査します。実際に試験フィールドを作製し、非破壊検査を実施。舗装内部の損傷を精度よく検知できることを示しました。

②コンクリート舗装

●東北地方に適した高耐久コンクリート舗装の開発

東北地方をはじめとする積雪寒冷地の凍結防止剤散布下において促進される材料劣化と疲労に対して、高い抵抗性を有するコンクリート舗装材料の開発を目指しています。材料劣化促進試験と疲労試験を併用した耐久性試験により、積雪寒冷地に適した配合の選定と、材料劣化を受けるコンクリート舗装の耐疲労性について実験的に検討を進めています。

③新しい舗装構造物の開発

●環境負荷低減舗装の開発および評価
●遮熱&融雪効果を有する舗装(LOHASの舗装)

風や水といった自然エネルギーを活用して、冬季は路面凍結を抑制し夏季は路面温度上昇を抑制することで、省電力で環境にやさしいロハスの舗装の実現を目指しています。

④舗装、防水、床版を三位一体として考える道路橋の維持管理

道路橋床版は舗装と防水、そして床版が三位一体となって機能を果たしています。しかし、道路橋床版を構成する3 つの部材に精通した研究者はほとんどいません。学生時代からの経験を活かして、舗装、防水、床版といった異なる部材を三位一体として考え、道路橋の最適な維持管理手法の構築を目指しています。

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スマホを使って簡単に路面性状を評価できる方法を考案

地方自治体におけるアスファルト舗装の維持管理は目視による点検が基本となっていますが、コストや人手、技術力の不足の他、点検結果のばらつきなどの問題があります。そこで、もっと効率よく、簡易に路面性状を評価する方法はないかと考えました。注目したのは“スマホ”。スマートフォンに内蔵された無料アプリの加速度センサを利用すれば、車を走行させるだけで路面性状を計測することができます。さらに路面性状データを簡易にGoogleマップに落とし込み、マイマップ機能により路線上に損傷箇所を表示できる路面性状評価システムを開発しました。将来的には、道路の設計から維持管理まで一貫して行える、道路アセットマネジメントを構築したいと考えています。

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学生へのメッセージ

アスファルトや舗装について講義や実習、研究ができる大学は全国でも少ないので、皆さんは社会に出る前に貴重な経験ができると思います。“人々の生活を支える仕事”と言えるのが土木の魅力であるとともに、抱えている問題や将来の方向性を見極めながら、そのために役立つ研究を進めていかなければなりません。社会人になると日々の仕事に忙殺されて勉強する時間が取れなくなります。皆さんにとって、今が一番勉強できる時です。遊びも勉強もとことん楽しみながら後悔しない学生生活を過ごしてください。

研究者土木紹介写真前島 拓 土木工学科 構造・道路工学研究室 助教

 

研究キーワード/アスファルト舗装、コンクリート舗装、道路橋床版
研究者プロフィール