日本大学工学部が葛尾村復興交流館の建築と運営に貢献

復興の拠点施設の開館とともに学生の活躍にも期待が高まる

6月16日(土)、福島県双葉郡葛尾村の『復興交流館(あぜりあ)』が開館し、同日行われた『復興祈念式』に工学部から出村克宣工学部長、土木工学科の岩城一郎教授、建築学科の浦部智義教授が参列しました。工学部は2015年に葛尾村と包括連携協定を結んでおり、以来復興に向けて様々な支援を行ってきました。復興の拠点施設として整備が進められてきたこの施設は、浦部研究室が建築計画と運営にも携わっています。延床面積約890平方メートル。情報発信や会議・講習会・各種教室などに利用できる交流棟と農作物などの放射線量を測定できる放射能検査棟を備え、村民の交流活動の場として提供されます。浦部教授もメンバーである縦ログ構法研究会で開発した、木材を縦に並べてパネル化する縦ログ構法の他、『百石の家』の愛称で村民に親しまれていた古民家の廃材も利用されており、新しさの中にも木の温もりと歴史も含め親しみを感じられる施設になっています。
この日は朝から小雨模様で肌寒い天候でしたが、開館を心待ちにしていた大勢の村民の方々が訪れ、熱気に包まれていました。『復興祈念式』でご挨拶された葛尾村の篠木弘村長は、「村全体の復興に向けたスタートにしたい」と決意を新たにされていました。出村工学部長(左の写真)は、「工学部が様々な方面から葛尾村の復興に貢献できたことは大変意義深い。交流館というモノができ、これからは本当の意味での“復興”というコトにも貢献していきたい」と思いを強くしていました。
復興交流館の敷地内にあった蔵を、交流館の一部として新たに『ロハス蔵』として甦らせた蔵の改修には、学生や村民の方々が修繕・整備に深く関わっています。建物を改修し、新たに甦った『ロハス蔵』は、村民の方々の手で修繕・整備を行ったものです。村民同士のつながりや付き合いの場として利用できるよう計画されるとともに、浦部研究室の学生たちが中心となって村民の方々とワークショップを開いて活用方法などを検討してきました。また、長年使用されてきた蔵を再生させること自体も工学部のコンセプトである『ロハス』なことですが、蔵の周りに環境を意識した池の設置や、前出の百石の家の古材を使用した家具の製作など、より『ロハス』な取り組みを実践しています。

学生活動の プロジェクトリーダーである建築学専攻2年の作山和輝さん(写真下)は、「今後、池には水の浄化作用のあるポーラスコンクリートを設置し、もっとロハスに近づけていく予定です。葛尾村の良さを見出し、他の地域にはないコンセプトで企画や活用方法を提案していきたい」と意気込みを語っていました。

 浦部研究室では研究の一環として、当日も蔵を含めた交流館に関する村内外の方への聞き取り調査を行っていました。来館者は蔵に対して、「親しみやすい」「手づくり感がいい」といった印象を持たれているようです。調査にあたった建築学専攻1年の伊藤和輝さん(写真右)は「皆さんがこの建物をどのように思っているのかを知り、今後のイベントの内容も含めた空間利用の参考にしたり、自身が将来携わりたい建築設計の仕事にも役立てたい」と話していました。

浦部教授(下の写真右)も「建物が完成して終わりではなく、使い続けていく中で、いいモノができて良かったと思っていただけるか、また、どれだけ交流の場を作っていけるかが大事」と言います。利用者の声と学生のアイディアを活かしたイベントの企画も含めた空間利用の提案がその鍵を握っていると言えるでしょう。葛尾村の復興そして活性化につなげていくために、学生の活躍にも期待が高まっています。

去る8月14日(火)には、第三回葛尾村盆祭りが交流館で開催(下写真)され、浦部研究室や学生サークル『地域連携活動研究会』に所属する学生も数多く参加しました。このような村内外の交流が深まる、村の主要なイベントが交流館で行われることで、日常の気軽な利用と相俟って、より意味のある価値ある建築になっていくことが期待されます。