建築学科の髙橋岳志助教が設計に携わった施設が令和3年度木材利用優良施設コンクールにおいて、林野庁長官賞を受賞しました

福島県産の木材を多様な手法で用いた建築が高く評価される

建築学科の髙橋岳志助教が村上・AUM設計共同体(福島県建築設計協同組合)と協働し、プロポーザル、基本設計業務を担当、森山修治教授が設備設計監修をされた『南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎(設計期間 /2017-2018)』が10月8日(金)、令和3年度木材利用優良施設コンクール(主催:木材利用推進中央協議会)において、林野庁長官賞を受賞しました。この賞は、木材の利用推進等に寄与すると認められた優良な施設に対して表彰するものです。地域材を使用したCLT、縦ログなど多様な木質材料を使用し、地域のシンボル的な施設として高く評価されました。
髙橋助教に受賞の喜びと受賞施設について詳しくお話を伺いました。

 

 

―林野庁長官賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

受賞した他の施設には有名な設計者が手掛けたものもあり、それらと一緒に評価してもらったことは大変光栄に思います。今回、林野庁長官賞ということで、木材を管轄する林野庁に木を使った取り組みを評価していただいたことは、現在、自分が進めている研究への評価にもつながっていると感じており、大変嬉しく、今後の研究への励みにもなります。

―受賞した施設について詳しくご説明いただけますか。


『南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎』は、福島県建築設計協同組合の中の設計事務所である村上設計事務所、エーユーエム構造設計がJ V(ジョイントベンチャー)を組み、プロポーザル方式で受注した物件で、私はそのプロポーザルと基本設計業務を主に担当しました。現在、調査研究を進めているCLT (Cross Laminated Timber)や、縦ログ、WOOD.ALCといった多様な木質材料に、地域材を使ったことが提案の大きなポイントになっています。CLTは木材を縦と横に交互に重ねて厚いパネル状にしたもので、近年、普及し始めた新しい建築材料です。私が初めてCLTを用いたのは、2016年に郡山市内にある専門学校の校舎を設計した時でした。その時は、12m×3mという大きさのCLTを作れる工場が近くになかったため、福島県産の木材をわざわざ岡山の工場に運んで製作しました。『南会津地方広域市町村圏組合・新消防庁舎』のプロポーザルに臨むにあたっては、あらかじめ南会津の森林組合の方に相談して材料の調達が可能かどうかを確認し、実際に建設する時には、移動距離を短くするために、宮城県の工場で作れる範囲のCLTを製作できるように計画していました。CLT以外にも、WOOD.ALCという外壁に使用される集成材や縦ログ構法(角材で木のパネルをつくり、建築物を建てる構法)など、様々な木の使い方を導入して設計しました。専門学校を計画した際の知見から、CLTを鉄骨造と組合せることで、R C造鉄骨造でつくることが多い施設を木造でつくる可能性を探りました。消防署の設計を手掛けるのは2回目でしたが、消防署では長い時間をともにする隊員の方々のチームワークが大切だと感じており、視線が通りやすい、すばやく消防車が出動できるなど、指令センター・消防本部・消防署が連携しやすい設計を考えました。基本設計だけでなく、実施設計・監理業務にも関わっていましたが、訓練棟や外構工事の施工が数期に渡り行われ、昨年ようやく竣工に至りました。

―どのようなところが評価されたのですか。

すべて建設地である福島県南会津町産の木材を使用し、CLT、WOOD.ALC、縦ログなど多様な木質材料を現しで使用することで、木質感を創出したところが評価のポイントになったようです。安らぎと柔らかな質感を与える木質空間は、職員の心身面にも効果的で地域のシンボル的な施設になっているとの評価をいただきました。CLTと鉄骨造の組み合わせによる接合具の簡素化や軽量性も優れた点として挙げられています。

―今後の目標についてお聞かせください。

今、注力しているのは、昨年度、工学部長指定研究に採択された『地域材を用いた中大規模CLT建築物の地場産業的生産システムに関する研究』です。CLTは地場産業振興に貢献する可能性があると考えています。しかし、CLT工場は国内に9か所しかなく、地場産材を利用する場合、輸送距離が長くなり、環境負荷低減や地場産業振興に繋がらない可能性があります。そこでCLT工場の生産体制に注目して調査研究を行っています。実際に全国9か所にあるCLT工場を巡って、CLTがどのように作られているのか、それをどのように使用しているのかなどについて調査してきました。同じ工業製品であるCLTでも工場によって製造の方法が違っていました。これまでは設計者目線でCLTを見てきましたが、研究者目線で調査することで、いろいろ面白い面が見えてきましたが、調査結果をどうフィードバックしていくかも今後の課題になってくるでしょう。最終的には、福島という地域のために役立つような研究や設計に取り組んでいきたいと思っています。

 

 

―ありがとうございます。今後益々ご活躍されますことを祈念申し上げます。

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