産総研福島再生可能エネルギー研究所・日本大学工学部連携推進プロジェクト発進

工学部とFREAの共催イベントで、さらに連携を深める

昨年、工学部では9つの工学研究所プロジェクトが立ち上がりました。その中で、工学部と(国研)産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所(FREA) が連携するプロジェクトも形成されました。これまで日本大学工学部は、産総研との教育研究協力に関する協定に基づいた連携を進めており、FREAの開所に伴い、更なる連携が進められてきました。すでに、各教員による数件の共同研究やインターンシップ、セミナーの開催等の連携が行われていますが、本プロジェクトでは、より一層FREAと工学部の多方面における連携を深めるためのプラットフォームの構築を目指していきます。

最先端の研究の現場を体感する『FREA施設見学ツアー』を実施

1月12日(金)には、FREAと工学部が学生のために企画した、『FREA施設見学ツアー』を実施。本年4月から卒業研究に取り組む生命応用化学科3年生を中心とする21名の学生と大学院生が参加しました。プロジェクトメンバーでもあるFREA坂西欣也所長代理にご案内いただき、最先端の研究が行われている現場を実際に見ながら、FREAで行われている研究について詳しく説明していただきました。2,500枚の太陽電池モジュールが設置された太陽光発電実証エリア、薄型結晶シリコン太陽電池製造エリアなど、研究機関ならではの大規模な設備に驚嘆する学生たち。目を輝かせながら、説明に耳を傾けていました。
プロジェクトメンバーでもあるFREAの中岩勝所長からは、「共にロハスの考え方で、日本全体の社会づくりに取り組んでいきたい。学生の皆さんは、社会に出てエンジニアとして活躍するための一助にしてください」と激励の言葉をいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

また、FREAの技術研修員制度 (インターンシップ)を利用として、FREAで研究に従事する学生もいます。様々な分析装置を使って実験できるだけでなく、国の研究員の方から直接指導を受けられるのが大きなメリット。実践的な研究にアプローチしたいと考える学生が挑戦しており、研究方法や仕事への取り組み方を学びながら、大学の中だけでは味わえない貴重な社会経験を積んでいます。

 

FREA・日大連携推進プロジェクト キックオフシンポジウム

3月7日(水)には、『FREA・日大連携推進プロジェクト キックオフシンポジウム』が工学部50周年記念館大講堂で開催されました。開催にあたり、工学部を代表して出村克宣工学部長がご挨拶し、「プロジェクトを通じて大学の知的財産を活用していただくとともに、新たな研究テーマに取り組めるよう、皆様のご支援ご協力をお願いしたい」と述べられました。FREAを代表して中岩勝所長にもご挨拶いただきました。「FERAは開所してまだ4年。70周年を迎えた工学部との連携により、勉強させていただきながら成果を出していきたい。学生の皆さんにもFREAで学び、日本に必要なエンジニアに育ってほしい」との思いを伝えられました。

 

『日大&FREA連携プロジェクト概要紹介』
日本大学工学部 加藤 隆二 教授

はじめに、プロジェクトリーダーである加藤隆二教授が、プロジェクトの概要について紹介しました。加藤教授は、①全体シンポジウム ②専門研究会 ③連携連絡 の3つの活動を通して連携を深め体制をつくることで、共同研究や教育活動の実施に発展させたいとの考えを示しました。閉鎖的と言われる大学において、異文化交流による刺激や研究の活性化につなげる狙いがあることも明かしました。また、研究セミナーの企画やFREA研究者による大学院講義の計画も進んでいると話し、「今後、もっと連携の芽を探るために、研究テーマについてリクエストしてほしい」と呼びかけました。

 

『福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の概要と産学官連携・人材育成の紹介』
FREA 坂西 欣也 所長代理

 次に、坂西所長代理がFREAの設立の経緯から施設設備、組織体制、研究チームなどの概要について紹介しました。さらに、受託研究や技術相談といったFREAと連携するための方法についても紹介。被災地企業シーズプログラムといった地元企業との連携を深めるスキームがあることを強調しました。また、学生が共同研究に携わることができる技術研修員制度や研究開発プロジェクトに参画できるリサーチアシスタントなどの産業人材育成事業にも触れ、「人材育成での連携も深めていきたい」との意向を示しました。

 

招待講演 『バイオマスを用いる再生可能エネルギーの可能性と実用化の課題』
静岡大学 佐古 猛 教授 

 招待講演では、亜臨界水を用いたバイオマス廃棄物のエネルギー資源化技術の開発に取り組んできた佐古教授に、再生可能エネルギーの可能性や実用化への課題についてご教授いただきました。実用化のポイントはコストを削減だと言う佐古教授。高効率で環境負荷の少ない『水処理によるバイオマス+プラスチック混合廃棄物の固体燃料化』の技術について説明されました。佐古教授は再生可能エネルギー分野で後れを取っている日本に技術変革の必要性を指摘するとともに、工学部とFREAの連携は非常に重要であるとして、今後のグローバル展開に大きな期待を寄せていました。
 講演を聞いた生命応用化学科の学生たちは、「エネルギーに関心がありましたが、初めていろいろな資源についての話を聞き、大変興味深かった」、「自分の研究分野以外の話を聞けて、とても刺激になった」と話していました。

 

日大・FREA連携研究紹介

続いて、実際に連携が進んでいる工学部とFREAの共同研究について、日本大学工学部の児玉大輔准教授と遠藤央助教が紹介しました。児玉准教授は、被災地企業のシーズ支援プログラムを利用して進めている『熱媒体(イオン)評価』と、技術研究員制度を使った学生の『有機溶媒中での脂質修飾ウレアーゼによる尿素合成効果』などの研究について紹介しました。いずれも水素キャリアチームとの共同研究です。次に遠藤助教が、『大規模太陽光発電施設におけるフィールドロボティクスを応用した複数協調型自律故障診断システム』の研究を紹介。エネルギーネットワークチームとの共同研究であり、RA(技術研修員制度)の研究テーマにもなっています。坂西所長代理は、「FREAにはない研究テーマを工学部から提案してもらうことで、FREAとしても新しい分野に取り組むことができる」という利点にも着目していました。


 最後に、FREAの古谷博秀センター長がFREAの主要研究テーマにスポットをあてて紹介しました。再生可能エネルギーネットワークの開発・実証、水素・水素キャリア製造・利用技術開発、次世代結晶シリコン太陽光発電モジュール開発、地中熱ポテンシャル評価とシステム最適化技術開発など、様々な研究に取り組んでいるFREA。中でも工学部が関わっている水素キャリア、太陽光、風力エネルギー等の研究について、技術研修員の学生の活躍も交えながらご紹介いただきました。次年度から被災地企業シーズ支援プログラムと人材育成事業が一本化され、学生も実用化プロジェクトに参画できるようになることから、一研究者としてぜひ参画してほしいと学生に呼びかけられました。
 閉会にあたり、柿崎隆夫工学部研究所次長が登壇し、ご支援いただいているFREAの皆様方に感謝の言葉を述べました。世界に窓を開いている研究者集団と研究施設が身近にあることは、工学部にとっては大きな意義があるとし、「ともに成長し、その成果を福島県、東北、日本全国に波及させていければ」と決意を述べました。
 シンポジウムを終え、FREAの中岩所長は、「フランクな話題もあり、最先端の研究もあり、大変実りあるシンポジウムになった。FREAと工学部の組織としての連携、研究者と教員との現場での連携が密になっていけば、いい形にできる。連携につながるヒントもあった」と手応えを掴んでいるようでした。プロジェクトリーダーの加藤教授は、「シンポジウムについて関係者以外からの問い合わせもあり、各方面から反響があった。このプロジェクトは人と人とを繋げることが目的なので、学外の方も参加できるようなプロジェクトにしていきたい」と抱負を語っていました。

プロジェクトのキックオフとして開催されたシンポジウムでしたが、連携が深まる有意義な場となりました。今後もプロジェクトの様々な活動を紹介しながら、地域社会に役立つ情報を発信してまいります。

 

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