建築学科の浦部智義教授らの『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』がキッズデザイン賞優秀賞を受賞

大臣賞(少子化対策担当)でグランドオープンに花を添える
ロハスの新しい建築デザインと産学連携の活動への評価と期待­­が高まる

『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』全体の俯瞰CG。中心市街地活性化の実践的な取り組みでもある。

この度、ロハス工学センタープロジェクトの一つで、建築学科の浦部智義教授をリーダーとする、郡山市の医療法人仁寿会菊池医院を核にした、健康で持続可能なまちづくりに貢献する活動の拠点施設『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』が、建築・空間のカテゴリーで『第15回キッズデザイン賞』(主催:NPO法人キッズデザイン協議会)に応募し、地域・社会部門で見事、優秀賞・少子化対策担当大臣賞を受賞しました。この賞は、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品や空間、建築、サービス、活動などを顕彰するもので、今回は409点の応募があり、234点がキッズデザイン賞を受賞。このうち特に優れた36点の中から最優秀賞に次ぐ部門ごとのトップ賞である優秀賞に選ばれました。

賞状を手に記念撮影。左から(敬称略)、早川真介(本学修了生)、滑田崇志、菊池信太郎、浦部智義、高木義典(本学研究員)

本プロジェクトは、産学連携での活動をベースに、ロハス工学の視点に基づき開発した新しい木構法による建築である診療所空間、仮設住宅の再利用といった、健康で持続可能な地域づくりに寄与する、子どもの医療から健康維持、産み育て支援、交流促進を一体的に捉えたコンパクトな建築デザインが、今後、各地で必要とされる視点だとして高く評価されました。地域医療と工学を融合させた健康で持続可能なまちづくりに貢献する建築デザインや取り組みは、福島発のモデルとして全国展開されることが期待されています。
同じタイミングで、『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』がグランドオープンしました。9月26日(日) 、郡山のまちなかにある本施設内の広場で行われたオープニングセレモニーには、工学部からは、来賓としてロハス工学センター長の岩城一郎教授、また建築面を中心にプロジェクトを主導した建築学科の浦部智義教授が参列しました。

今回のグランドオープンは、2016年から日本大学工学部の『ロハス工学』の考えを取り入れた新しい診療所の計画(昨年 6 月に新しい菊池医院がオープン)からはじまり、旧医院の跡地には、東日本大震災の仮設住宅を再利用した2階建てのログハウスが建設され、ドライブスルー機能を備えた『山口薬局本町店』と子育て支援に関連したイベントスペースも設けた『まちのイノベーションラボ(運営:株式会社プレイノベーション)』が入居。敷地内には遊具や『ロハスの花壇』を設置した、子どもや保護者の憩いの場となる広場も完成し、街の保健室として小児科診療所・薬局・ラボが連携する『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』のハード整備が一旦完了したことで行われました。

菊池信太郎院長

品川萬里郡山市長

岩城一郎教授

浦部智義教授

開式の辞にあたり、ご挨拶された菊池医院の菊池信太郎院長は、「ロハスの考えを取り入れた持続可能な地域や環境を子どもたちにも見せたいという思いも含めた施設になっている。これを第一歩として、本町の再活性化につなげていきたい」と新たな決意を述べられました。続いて、ご来賓の品川萬里郡山市長がご挨拶され、「様々な課題に直面している子どもたちの個々の健康だけでなく、郡山市全体の健康をリードしてほしい。そして、プロジェクトが大きな花を咲かせることを願っている」と祝意を表されました。次に、来賓として挨拶した岩城教授は、「震災後からこれまで、菊池先生と思いを共有し、ロハス工学の視点から下支えしてきた。今後も福島の子どもたちを日本一元気にするために協力していきたい」と抱負を語りました。プロジェクトの代表の一人として挨拶した浦部教授は、SDGsを推進する郡山市のまちなかに、SDGsにも深く関係する“木”を使った『ロハスの新しいデザイン』を実践した意義を強調しながら、「これからもプロジェクトメンバーと関わりを深め、多面的に協働できれば」と述べました。その後、株式会社はりゅうウッドスタジオの滑田崇志社長と陰山建設株式会社の陰山正弘社長もご挨拶され、プロジェクトに関われたことへの感謝と喜びの言葉を述べられました。
テープカットには子どもたちも参加し、『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』の新しい門出を祝いました。最後に、菊池医院のスタッフとプロジェクトメンバーから、菊池院長にサプライズプレゼントの贈呈がありました。メンバー全員の写真が入った広場の模型を贈られた菊池院長は、満面の笑みを浮かべ、素晴らしい仲間たちとの出会い、これまで歩んできた道のりを感慨深げに振り返っていました。さらに、菊池院長は「日本大学工学部の先生方と一緒にやれたことが一番大きな原動力になった。ロハス工学の考え方と同じように、子どもたちの心と体の健康も持続可能にしていくことが重要だと思い、拠点づくりを進めてきた。学生さんには、自分たちの活動がどのような成果につながるのか実際に見て理解してもらえたらいいし、今後も、まちづくりのワークショップなどに携わってほしい」と切望されました。

建築学科の学生が製作に関わった木塀

土木工学科の学生が実装に関わった遮熱舗装


広場(駐車場)にある世界初の遮熱舗装の歩道は、構造・道路工学研究室で研究開発した『ロハスの舗装』を学生たちの手で設置したものです。これまでも、建築計画研究室の学生が再利用された仮設住宅の木材を研磨したり、木塀の製作に関わったり、情報工学科の学生が『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』のホームページづくりに携わるなど、ハードの面で色々と関わってきましたが、これからは、”ことづくり”でも活躍してくれることでしょう。

子どもの遊び場越しに見る仮設住宅の移設再利用棟

建築学科の学生によるその内装の磨き


品川市長は、「本プロジェクトは医療産業と大学が連携した素晴らしい形」だと表され、まちづくりに化学反応を起こし、連鎖して広がっていくことに期待を寄せていました。まちづくりを地域住民の力で推進していることは大きな意義があります。

まちの雰囲気を変える開かれた機能と空間(診療所と木質空間)

岩城教授は、「ここを活用した子どもたちがどのように育っていくか、工学的に検証して、施設の意義を高めていきたい」と話し、キャンパスに留まらず、ロハス工学がまちの中に展開されていくことへの重要性を改めて示唆しました。浦部教授も同様に、ものづくりもさることながら”ことづくり”も大事だとし、「これからも学生と共に、もの・ことづくりを継続していくことが、建築の価値の向上につながるだろう」と話し、また、「特に地方では、大規模な再開発は難しい面もあるので、この様な地域に開かれた小規模な開発が街全体を動かしていく推進力になるだろう」とも話しています。

まちの表情を変えるログ仮設を再利用した木の建築(手前はキャンパスから移設したロハスの花壇)

今後も、『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』として、工学部の教育・研究の柱であるロハス工学や研究者の知見、そしてIT技術を活かした産学連携の取り組みをベースとしながら、『スマート ウェルネス タウン ペップ モトマチ』は、小児科診療所と新施設を拠点に、持続可能な子どもたちの健康とともに、地域の人々の健康を守り、地域の子育て子育ちを支援し、まちの活性化を目指した活動が継続されることを期待したいと思います。

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