日本大学工学部建築学科

就職・資格
卒業生の活躍

都会の空に志高く、地方大学での学びを活かせる建築士に

更新日時:2024.12.05

株式会社三菱地所設計  建築設計二部

柳沼 明日香さん
(福島県田村市船引町出身/日本大学東北高等学校卒/2018年学部卒) 

一級建築士

学生時代の主な受賞:せんだいデザインリーグ2018 卒業設計日本一決定戦 特別賞

 田村市船引町の魅力を一体どれくらいの人が知っているだろうか。自然豊かな中通りに位置するここ船引町は、工学部キャンパスのある郡山から電車で30分ほど、県内屈指の名勝地である。自然とともに、のびのびとした環境で育った柳沼さんは、東京丸の内に本社を構える株式会社三菱地所設計で活躍中だ。そんな柳沼さんが大事にする名刺ケースは、浦部教授が卒業生一同へプレゼントした手作りもの。生まれ育った街と大学への愛着を感じながら、都会へジャンプした柳沼さんに「工学部の魅力」を取材しました。


幼心に宿った憧れを忘れず地元で進学

 
 小さい頃はキレイなものや格好いいものが好きで、将来は漠然と何かをデザインする仕事に就きたいと思っていました。そして小学5、6年生くらいの頃に放送されていたドラマで好きな俳優さんが建築士役を演じていて、「建築設計」という職業を意識しはじめたことを覚えています。また、父が写真を趣味としていたので、家には、建築やインテリアやアートの本が多く、その手のうんちくをよく聞かされていました。もしかするとそういった影響も少しあったのかもしれません。

 高校は普通科。東京への憧れというよりは地元志向が強く、日本大学工学部でも建築やデザインの勉強ができるということもあり建築学科に進みました。

 大学の1年次は座学の他に自分で図面をひいて模型を作る授業もあり、自由度の高さゆえ、創造性を問われるのでとてもやりがいを感じました。2年次には3、4人で取り組むグループ設計の課題があり、与えられたテーマに沿って設計をするというものでした。メンバーそれぞれ考え方も違っていましたが、自分以外のアイディアを聞くことで視野が広がることを学びました。

工学部で成長できたという実感

 
 1、2年次は「建築」に慣れることも含めて、設計課題などに取り組んでいました。3年次以降、特にゼミや研究室に配属されてから、とてもアットホームで会話がしやすい雰囲気だったこともあり、浦部先生や現在も色々な職場で活躍されている意識の高い先輩・同輩・後輩たちと建築の本質を追求していく中で、かなり世界が広がりました。もちろん、デザインの発想や着眼点、社会の中での建築を見る視点もです。

 その頃から、学外のコンペやコンクールに挑戦して、自分の発想や技術を試すという意識も高まりました。この頃に成長できた実感もあります。都市計画や建築計画、環境、設備、構造など、私の仕事に欠かせない一級建築士の資格を取得するために必要な知識を授業で学べたのは、とてもプラスになっていますし、いま携わっている仕事に活かすことができていると思います。

 いま思えば、昼夜を問わず先生や仲間と一緒に過ごせたことは、現在の私の基盤にもなっていますね。

育ってきた環境と近い職場環境が決め手

 大学入学前は、超高層ビルのような都会の建築よりは、のびのびとした環境で枠にとらわれない自由な建物の設計に関心がありました。でも進級していくうちに、それぞれに個性を持った他大学の学生さんと触れ合う機会も多くなり、工学部ももちろん良いけれど、今までとは異なる環境で建築を学べる機会があっても良いかな、と思い大学院は東京のキャンパスを選びました。工学部がホップなら理工学部でステップして、修了後は福島に戻って就職することも考えましたが、先ずは都会での仕事も悪くないかなと(笑)。組織で設計を手掛ける企業をメインに面接を受け、他に内定をいただいた企業もありましたが、当社の穏やかな職場環境が自分に合っていて、先ほどの延長線上でジャンプできそうな、今の会社で働きたいなと思ったのが入社の決め手になりました。仕事に対しても、自分の考えを言いやすく、新しいことにチャレンジすることに理解を示してくれるところが、働きやすさのポイントだと思います。

都会に出て気づいた地方の建築との違い

 当社では、不特定多数が使用するような高層のオフィスビルや商業施設など、比較的規模が大きい建物の設計を行っています。その中で私が所属している部署は、主に3~10階ぐらいの学校やホテル、集合住宅といった小~中規模の建物を設計することが多く、いまは小さな宿泊施設や大学の寮を手掛けています。どのプロジェクトにしても、営業や意匠、構造、設備などの担当者が集まります。一つの建物にいろいろな意見を出し合いながら進めていくやり方は、2年次での「グループ設計」の経験が役立っていますね。

 地方で学び、東京で働いて感じたことは、都会と地方では建物の役割や必然性が異なるということ。建物を建てるということは、社会にどのような影響を与えるかを根本から考えられるようになりました。考えすぎると「建築とは?」という、そもそも論になってしまうのですが、建築設計という仕事はそれだけ意義のあるものだなと思います。

建築を通じて生まれ育った街を深く知る

 建築を通して、⾃分の育ってきた地域について深く知れたことが本当に良かったと思います。
 福島に限らず、全国的に限界集落が増え続けていますが、工学部の設計課題ではその⼟地の観光資源や産業、表層に現れてこない歴史や⽂化的なものを⾃分で⾒つけて、その良さを引き⽴てるための建物の機能を考えたり、デザインに落とし込む⼿法をよく使っていたので、街を深く知るきっかけになりました。

 いつになるかわかりませんが、地方で培った建築の学びを都会の建物に役立てることができるように、そして都会で身につけた知識で地元に貢献できるように、いまの仕事に取り組んでいきたいです。