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機械工学科バイオメカニクス研究室が第27回ESV国際会議学生安全技術デザインコンペティション国際⼤会に出場しました

自動車事故から人命を守るための総合的な傷害評価を
可能にした研究が高く評価される

左から永井康介さん(機械工学専攻2年)、児玉一晴さん(機械工学科4年)、山下廉さん(機械工学専攻1年)

 2月1日(水)に国土交通省主催による「2023年学⽣安全技術デザインコンペティション⽇本⼤会決勝(公益社団法⼈⾃動⾞技術会運営)」が4年ぶりに行われ、機械工学科バイオメカニクス研究室(指導教員:西本哲也教授)が最優秀賞を受賞しました。今年は応募した7チームの中から書類選考を通過した3チームが日本代表の座を競いました。本研究室が提案したのは、「自動車乗員の肋骨骨折の評価を可能とする壊れるダミーの開発」。2019年に同大会で発表した自動車の前面衝突時における腰椎・腹部ダミーに加えて、肋骨の骨折をダミーの破壊によって再現し評価する肋骨ダミーを開発しました。各チームとも優れたアイデアを提案し接戦となりましたが、入念なデモンストレーション、質疑応答に対する準備、高齢者の事故影響評価をターゲットにした課題設定力、人体とCAE(Computer Aided Engineering:コンピュータを利用した工学支援システム)を繋ぐ新しい取り組みに対する挑戦が高く評価され、本研究室が見事最優秀賞に選ばれました。

 このコンペティションは、2年に1度開催されるESV国際会議(自動車安全技術に関する世界会議)主催による国際大会の日本予選を兼ねており、4月3日(日)から6日(水)まで横浜で開催された第27回ESV国際会議の中で行われる国際大会への出場も果たしました。

 チームの皆さんの喜びの声とともに、発表した内容について詳しく紹介します。

-最優秀賞受賞および国際大会出場おめでとうございます!
感想をお聞かせください。

 日々試行錯誤しながら取り組んできたので、その点を評価していただけて大変嬉しく思います。2019年以降、大会が開催されず、先輩方に大会の様子や他大学の状況などを聞くことができない中で、自分たちのレベルが通用するのか自信がないまま日本大会決勝に臨みました。思っていたよりも、しっかりできたという手応えはありましたが、世界大会出場が決まった瞬間、真っ先に頭に浮かんだのは、「まずい、英語で発表するんだ」ということでした(笑)。
 最優秀賞を受賞することができ、いろいろアドバイスしていただいた西本先生には深く感謝しています。

―発表した内容について詳しく説明いただけますか。

 テーマは「自動車乗員の肋骨骨折の評価を可能とする壊れるダミーの開発」。統計的に死亡事故・重傷事故の部位別の損傷箇所で一番多いのは胸部です。中でも肋骨骨折が一番多く、さらに折れた骨が肺などの他の臓器に刺さってしまって、重傷化するリスクが高くなることから、肋骨骨折をテーマにしました。私たちは事故調査も行っており、やはりシートベルトで肋骨を骨折するケースが多いことがデータでも示されていたため、重要性を感じていました。

 実際の自動車の衝突安全テストで使われるような本物のダミーは、金属パーツで作成されています。壊れないで繰り返し使えることがダミーの条件だからです。しかし、私たちはヒトの骨と同じように折れるような脆い材料でダミーを作成しました。この点が、フィーチャーすべき今回の最大の特徴とも言えます。もともと2019年の前回大会後、本研究室では肋骨に着目して研究を行っており、肋骨自体はすでに出来上がっていたので、私たちは胸郭という胸の構造体をヒトと同じ寸法・特性でつくるところから始めました。実際に自動車を使った衝撃実験を行うことはなかなか難しいので、シートベルトが掛かる位置にシートベルトと同じ幅の重りを上から落として肋骨に衝撃を加え、骨折を再現させる形での実験を繰り返しました。目視できる骨折の発生位置が、実際の交通事故で集計したデータと同じような位置で発生しているかという点を評価の一つとして取り上げました。

―どんなところが評価されたと思われますか。

 質問に対する返答がしっかりできていた点が評価されたようです。発表する内容を決めた後、どういう質問がくるかを推察して、プレゼンテーションで使用するスライドとは別に予備スライドとして、どのようなデータを取ったかというスライドを用意しておいて、質問がきたらそれを使って答えるようにしていました。また、肋骨を作る際に3Dプリンターで樹脂を溶かしてどんどん積層して作っていくのですが、年齢別の骨の特性に合わせて作成したことも高評価につながっていると思います。

若い人の骨は丈夫ですが、歳を重ねるごとに脆くなり壊れやすくなる強度の違いも再現しました。2019年に同大会で発表した自動車の前面衝突時における腰椎・腹部ダミーに、今回の肋骨のダミーを組み合わせ複合ダミーとすることで、総合的な傷害評価を可能にしたことが優位に立つ要因になったと思います。

―世界大会に出場してみて、いかがでしたか。

 日本大会と同様のデモンストレーションとプレゼンテーションの他に、大会期間中は展示ブースが設けられ、様々な国の来場者に対して英語で説明を行わなければなりません。世界大会まで2か月しかない中で、自分たちが発表するテーマにおいて重要なキーワードを押さえることを意識しました。国際会議に来る人たちはその道の専門家なので、ダミー開発に対してこういう点に着目するだろうと予測して、そのキーワードさえ押さえておけば、受け答えできるのではと考えたのです。

 実験も改良を加えながら継続して行い、日本大会よりも実際の事故に近いデータを取ることができました。また、言葉だけでは伝えられないと思い、展示物を増やしたり、落下実験で用いた装置を使って実験を再現したり、視覚的な情報を充実させました。海外の人の反応は、まず壊れるダミー自体がほとんどないので、その発想が非常に面白いと言っていただきました。日本大会の時には20歳と65歳の肋骨しか作っていませんでしたが、世界大会では2歳・40歳・80歳の肋骨も増やしたことで、より関心を持っていただけたようです。私たちも聞かれていることにしっかりと答えられたので、海外のメーカーの方や政府関係者など、いろいろな立場の方にもきちんと納得していただける説明ができたと思います。

 プレゼンテーションが3日目にありましたが、4日目にはプレゼンを聞いた方がブースに来て、「プレゼン良かったよ」と言葉をかけてくださいました。優勝することはできませんでしたが、とても貴重な経験になりました。

―どんなところに研究の魅力を感じますか。

 やはりモノづくりの基本と言いますか、アイデア出しから設計、加工、実験まで、学生だけでできるのが面白いです。他学科と比べてもモノづくりの要素がすごく多いので、エンジニアとしての実感も湧いてきます。

 モノづくりを実践しながら、もっと良くするためにはどうしたらよいかを考え改善していく。より完成度が高まるにつれ、達成感を得られるところも魅力です。何より、世の中や人のために役立つ研究だから、未来に繋いでいくべきだと思います。自動車の開発も大事ですが、それよりも人の命が大事。一人前の技術者として語るわけではないですが、そういうものを守っていけるような研究ができれば、それが一番いいのかなと思います。

―今後の抱負をお聞かせください。

永井康介さん: 世界大会に出場して、外国の方と英語でコミュニケーションを取りながら、自分たちの研究を発表できたというのは、とてもいい経験だったと思います。私も自動車業界への就職を目指しており、安全技術に携わっていきたいと思っているので、将来は研究室で学んだ知識や身につけた能力を最大限に発揮して、安全なクルマづくりに貢献していきたいと考えています。

山下廉さん: ダミーを作っている段階では、本当にこれでいいのか、自分たちの考えたことが正しいのか不安でしたが、国際会議で実際に専門家の方などと話すことで、自分たちの作ったものを理解し共感してもらえて、それは自分の中では大きな自信になりました。頑張って良かったなと思います。外国の方と交流ができ意見をいただくなど、非常に貴重な経験ができました。これから自分の研究に関しても、しっかりと深く考えて、良い結果につなげられるように頑張っていきたいと思います。

児玉一晴さん: これまで英語で話したり説明することはなかったのですが、今回の経験を通して英語への興味も湧き、海外の方と触れ合うことで語学力も高まったと思います。2年生の時に衝突安全について学んでみたいと思い、配属前ではありましたが研究室の扉を叩いて、それからいろいろ学ばせていただきました。私としては面白いと思った分野ですので、今後自動車関連の企業に入って、こういう安全技術に関する研究ができたらいいなと思っています。

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

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