2020-03
人間が地球上で持続可能な生活をする上で自然環境や住環境のモニタリングは重要であり、ドローンの利活用が有用な貢献を生むものと期待されています。また、近年多発している自然災害や鳥獣被害については、その対応の検討が喫緊の課題であり、人間が自然環境との共生を進めていくために様々な意思決定が求められています。本プロジェクトは、動植物の生態系や水環境そして住環境に関する詳細な情報を取得する技術や解析する技術を研究開発することを目的とし、様々な専門分野の研究者によって学術領域横断的に取り組んでいきます。これにより得られた情報を統合し、持続可能な生活をするために必要な情報基盤としての整備と構築を進め、人間生活と自然環境との共生を目指します。
①野生動物との共生共存を目的にドローンによるイノシシの出没頻度調査および植生調査を行い、里山の環境整備対策を提案する
②水害などの防災対策に役立つ安全な避難経路を提案するために、ドローンを用いた高分解能数値標高モデルの情報基盤を構築する
第1期:野生鳥獣の生態調査とその生息域の植生調査の研究、工学部周辺の水害被害推定と避難経路に資する情報基盤の構築
第2期:動植物のセンシング手法の研究と生態モニタリング、動物および人間の行動パターンの研究とモデリング、動植物のセンシングとモニタリングに基づく情報基盤の構築
1.人とイノシシとの共生の研究
双葉郡葛尾村において、イノシシを人の生活域に侵入させない施策として、無人航空機(ドローン)のフライトによって取得されたカメラ画像の解析からイノシシの生態の調査を行った。昨年度より真畜産周辺域をテストサイトに選定し、東北大学大学院農学研究科の小倉先生をはじめとするカラシナを用いたイノシシの忌避効果の実験と協働で、夜間のドローンフライトにより取得した熱赤外画像からイノシシの出没場所を可視化した。さらに、イノシシが身を隠す場所となる地物を検出するために、昼間のドローンフライトにより、マルチスペクトル画像を取得して経過観察を行った。今後、過年度と現在設定しておるテストサイト間におけるイノシシの出没を観察するため、定点カメラを設置した調査を実施する予定である。
2.ロハ酒研究プロジェクトとの協議
ロハ酒研究プロジェクトでは、アイガモを用いた有機農法やロハ酒の成分等のデータを取得・分析を通して、栽培や商品の付加価値の向上に取り組んでいる。この中で、ドローンフライトにより、圃場の水稲における籾のタンパク質含有率を非破壊で調べる実験を実施した。有機農法における収穫の目安は、タンパク質含有率は6~7%が理想的と言われている。水稲の生育状況をドローンフライト結果と時系列に可視化することにより、有機圃場についても、水稲の生長と正規化植生指数(NDVI)は良い相関関係が見られた。一方、圃場の場所によっては、その含有率が大きく異なることが判明した。今後、時系列の水稲の生長の可視化を継続すると共に、圃場内のピンポイントで追肥や適期に収穫するための意思決定を支援するためのシステム構築を検討する。