建築学科の浦部教授に大学院修了生と共に受賞する喜びを聞く

 建築学科の浦部智義教授が、『地図集制作活動 [福島アトラス-原発事故避難12市町村の復興を考えるための地図集制作活動-]』で2018年グッドデザイン賞・同ベスト100、さらには特別賞となるグッドフォーカス賞[復興デザイン]を受賞しました。また、新しい構法の住宅建築『縦ログ構法の展開-ロハスの平屋-』では、2018年栃木県マロニエ建築優良賞を受賞。共に、浦部研究室の大学院修了生と協働したもので、本学の教育成果という意味でも興味深いものです。
 浦部教授に受賞の喜びともに受賞内容について詳しく話を伺いました。

東日本大震災後から継続している二つの研究活動が高く評価される

 

―この度は、おめでとうございます。それぞれの受賞内容についてお聞かせください。

 前者の『地図集制作活動 [福島アトラス] 』は、原発事故避難12市町村の復興を考えるための地図集制作活動で現在も継続しているのですが、今回は2017年のアトラス01と2018年02・03の制作に関わる活動が評価されたものです。この制作に当たっては、当研究室などが2011年の東日本大震災の発災当初から調査・分析を重ねたデータ等がもとになっている部分も多く、それらの事前の地道な活動も含めての評価だと考えています。

グッドデザイン賞・同ベスト100及び特別賞となるグッドフォーカス賞[復興デザイン]を受賞した福島アトラス

 後者の『縦ログ構法の展開-ロハスの平屋-』は、前者とは一見無関係の日常的な出来事の様ですが、この縦ログ構法が、当研究室も参画した東日本大震災後のログハウス型仮設住宅の建設を通して育てたもの、という点ではつながりがあります。

 

―今回、特に評価された点は何だと思われますか。­­

 東日本大震災から7年半以上が経過しましたが、被災地では日常を取り戻すための不断の取り組みが現在も行われています。そんな中、『地図集制作活動 [福島アトラス] 』では、福島の復興に資する詳細な調査に基づく地図集の編纂とデザインの実践を行った訳ですが、その様な現実と、今に至る経緯を丁寧に記録しながら、現在を浮き彫りにしている点だと思います。復興の現場でも把握できそうでし難い、避難者の方々を対象とした情報を、ビジュアルも含めて判りやすく表現していることでしょうか。この活動によって、日常を取り戻すことに微力ながら貢献できれば、ボトムアップ的な復興に少しは寄与できるかと思っています。
 私たちのチームで生み出した新構法の都市型住宅への展開とその空間デザインの実践といえる『縦ログ構法の展開-ロハスの平屋-』については、現在まで中山間地域や東日本大震災の被災地の復興での実践を、都市型住宅における現代的な住宅デザインに展開した点でしょうか。より標準化されたオープンな建設システムとして、地域経済への貢献が期待される点もあると思います。

地域材を多用した縦ログ構法による「ロハスの平屋」

 

大学院修了生と共に受賞したことは教育機関としての大きな成果でもある

 

―共に先生の研究室の大学院修了生との受賞だそうですが。

 そうです。前者の活動は私も主たるメンバーであるNPO福島住まい・まちづくりネットワークが主体なのですが、そのコアスタッフとして様々に活躍してくれたのが、当研究室の修了生の高木義典さん(2013年3月修了)です。研究室の現役の大学院生・学部生の頼れる先輩として、作業の段取りをしてくれていました。また、後者では、当研究室の修了生の早川真介さん(2012年3月修了、2006年3月日本大学東北高校卒)が縦ログ構法を利用したロハスの平屋の計画・設計を協働してくれました。二人共に、学部生・大学院生として在籍時から、大学の課題や研究室のプロジェクトに一緒に取り組んでいたので気心も知れ、お互いの長所を理解し足りない部分を補完しあえたのは良かったと思います。年齢や世代、或いは立場を超えて協働でき、成 果が評価されたことは、教育機関としてのまた違った喜びがありますね。

受賞展示会の出展パネルを持つ高木義典
さん(右)と浦部教授(右)

受賞式にて知事から表彰される浦部教授(中央)と早川真介さん(右列中央)

 

―研究室の現在の活動で、今回の受賞と関連するものはありますか。

 工学部との包括協定における取り組みの一つとして、葛尾村復興交流館「あぜりあ」の計画や運営があります。そこでは、被災地の復興まちづくりや縦ログ構法等による木を多用した施設建築など、『地図集制作活動』と『縦ログ構法の展開』の両方に関係したプロジェクトを、それらと並行して行っています。そこでは、特にワークショップや現場作業などで、現役の大学院生・学部生も協働してくれています。
 その他、前者の『地図集制作活動』に関係するものでは、被災自治体も含めた幾つかの地域でのまちづくりや、供与期間を終えた木造仮設住宅の再利用などがあります。後者の『縦ログ構法の展開』については、県内のある中心市街地のまちなか再生の起爆剤となる施設建築を、木を多用してつくるプロジェクトが進んでいます。
 この様に、今後は、復興に関する活動と新しい建築の在り方を模索する様な日常の活動が、地域を活性化するという意味で、より一体化してくるのではないかと思っています。また、これらは、プロジェクトとしてのみならず研究活動としても展開しています。

 解体中のログハウス型の仮設住宅(左)と解体後に移設のために運搬されるログ材(右)

 

―今後の抱負についてお聞かせください。

 まず、これからも今回の様に、現役の大学院生・学部生はもとより、修了・卒業生と協働して、意義深い活動ができればと思っています。
 また、私たちが携わり完成した木造・木質建築もそうですが、実際に利用しはじめた後の利用者の評価については、未だ十分に明らかにされていない点も多いと思います。研究室でもその取り組みを始めましたが、外部の機関や他の研究者の力もお借りしながら、より調査分析をして行きたいと考えております。
 そういえば最近、『縦ログ構法の世界-森・まち・産業を支える新しい建築のつくり方』という書籍を共著させて頂きましたが、機会があれば、そういう形でも修了・卒業生と協働できれば、教育機関としての新たな成果の形になると思います。

 

―ありがとうございました。今後の益々のご活躍を祈念しております。

 

※グッドデザイン賞2018:http://www.g-mark.org/