次世代バイオ燃料に役立つ酵素複合体の開発をめざす

2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image002 国が定めた方針に基づいて、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が運営する戦略的創造研究推進事業「さきがけ」24年度新規研究課題に、本学部生命応用化学科 平野展孝准教授の提案が採択されました。この事業は、社会・経済の変革につながるイノベーションを誘起するシステムの一環として、我が国が直面する重要な課題の達成に向けた基礎研究を推進し、科学技術イノベーションを生み出す創造的な新技術を創出することを目的としたものです。全体では90/1563、研究領域では10/116の採択率で、狭き門を突破した研究提案であり、その将来性や独創性が高く評価されたものと思われます。
 平野准教授に研究内容や研究への抱負について詳しくお話を伺いました。

 

―この度はおめでとうございます。採択された研究について詳しくお話いただけますか。

 この度採択された研究課題「セルロース/ヘミセルロース/リグニン分解酵素群の集積・近接化による協働作用の創出」は、「さきがけ」の中でも「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出」という研究領域への提案でした。植物の葉や茎といった食糧と競合しない部分からつくられる次世代バイオ燃料・バイオ化成品の製造分野に役立つ、植物バイオマスの効率的な酵素糖化法の開発をめざしています。
2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image004 微生物発酵の原料となる糖は、植物成分であるセルロースとヘミセルロースを分解することで得られる産物ですが、それらを覆う成分リグニンも分解する必要があり、手間とコストが掛かることがネックになっています。そこで注目したのが、微生物が生産するセルロースとヘミセルロースの多様な分解酵素からなる複合体です。この複合体を出発物質として、更に多くの種類の酵素を組み合わせることで、より分解能力を向上させることが出来るのではないかと考えました。セルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成される植物バイオマスの分解に適した酵素複合体を創出すること、それが研究の目的です。

 

―この研究が評価されたのはどのような点にあると思われますか。

2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image006 バイオマス関連の酵素の研究を始めたのは、工学部に着任した4年前からです。酵素にはさまざまな優れた機能があり、食品製造だけでなく、医薬品や化成品の製造など幅広い分野で活用されています。私は、多様な酵素から、強力な分解能力をもつ複合体をつくる微生物の存在を知り、その複合体を人工的に構築することをめざしました。タンパク質である酵素は、遺伝子を組み換えた大腸菌などの細胞で生産するのが一般的ですが、細胞を擦りつぶした抽出液中でタンパク質を生産する方法を用いて試行錯誤を重ねた結果、昨年ようやく酵素の組み合わせを自在に調節して巨大な複合体をつくることに成功しました。この点が高く評価されたのだと思います。植物バイオマスを分解して、微生物発酵の原料となる糖を効率よく取り出せれば、バイオ燃料だけでなくバイオプラスティックなどもつくれるようになります。化石燃料依存からの脱却につながる将来性も期待されていると思います。

 

―化学の道に進まれたきっかけは何ですか。

 もともと生物は好きでした。私がまだ小学生くらいの頃、バイオテクノロジーが話題になり、子どもながらにバイオテクノロジーを使って社会に貢献したいと思いました。それがきっかけでバイオの道に進みましたが、競争もまた激しい世界です。現在取り組んでいるバイオマスも競争の激しい分野ですが、自分にしかできないことを見つけて社会に発信していきたいと思っています。
2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image008 生物は多様な機能を備えています。長い年月の中で進化しながら、その素晴らしいメカニズムを獲得してきました。生物よりもっと優れた仕組みを人工的につくりだすことは難しいかもしれません。ですが、少しでもその能力に近づけるよう、そして生物の機能を実際に私たちの生活に役立てることをめざして研究に取り組んでいます。

 

―研究への抱負をお聞かせください。

2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image010 工学部に来てから始めた研究で、ようやく成果を出せて嬉しいと同時に、今回採択されたことを大変光栄に思っています。この10月から始まったばかりですが、挑戦的な研究課題に取り組めることにやりがいを感じています。3年という研究期間の中で、革新的なバイオマス分解酵素の開発糸口がみつけられるよう頑張りたいと思います。

 

―最後に学生たちにメッセージをお願いします。

2012%e3%81%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%91image012 大学での学びを通して、自分にとって有意義な学問や技術を身につけてほしいと思います。そして、身につけた力を活かして、社会で活躍してほしいと思います。生命応用化学科の魅力の一つは“Only One”の研究ができること。しかし、今までにない世界初の物質を創りだすこと、今まで誰もできなかったことを可能にすることは、容易ではありません。学生の皆さんとは、一緒に研究に挑み、困難を乗り越え、達成できたときに、共に喜びを分かち合いたいと思います。皆さんに期待しています。

 

―ありがとうございました。研究活動を通して、今後ますますご活躍されることを祈念申し上げます。